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21.言い争い
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朝食を終え、学園に向かう準備をしようとしたら、
ミリアが制服を出してくれた。
「ありがとう……あら?」
受け取ってみたら新品に見える。
「クラデル侯爵からの贈り物の中に入っていました」
「そう……制服まで用意してくれたなんてありがたいわ」
袖を通してみたら違和感があった。
布の質が違うのもあると思うけど、それだけじゃない。
「ミリア、何かこの制服違うような気がするのだけど」
「おそらくサイズが違うんだと思います。
今までの制服だとナディア様に合わなくなっていましたから」
「え?そうだった?」
「はい。かなりお痩せになりましたよね」
「言われてみれば……」
寮に入って健康的な生活をしているからか、身体が軽くなった気がする。
醜い自分を見たくなくて鏡を避けていたから気づかなかった。
思いきって鏡の前に立ってみると、本当に痩せている。
まだふっくらしているけれど、デブというほどではない。
あんなに肉がついていた顔周りもすっきりしている。
「私ってこんな顔をしていたのね」
「ふふふ。ナディア様はお美しいです」
「お世辞だとしてもうれしいわ。
今までお世辞でも言ってもらえなかったもの」
「本当ですよ」
「ありがとう」
少しは本気で言っているのかなと思えるくらい、姿が変わってきている。
このまま痩せたら昔の自分とは別人に見えるかもしれない。
準備を終え、ミリアと一緒に校舎へと向かう。
今まで一人でいたからミリアがずっとそばにいるのは窮屈になるかと心配したけれど、
ミリアはけっして邪魔にはならず、必要だと思う時はすぐに来てくれる。
こんなに優秀なら私の専属侍女じゃなくてもやっていけそうな気がする。
ミリアの教室は同じではないので、私の教室の入り口で別れる。
「授業が終わったらまた来ます」
「ええ」
昼も一緒にカフェテリアで取る約束をしている。
それが楽しみで思わず頬が緩む。
こんなに学園生活が楽しいのは初めてかもしれない。
うきうきするような気持ちで授業が始まるのを待っていたら、
ロドルフ様とレベッカ様が登校してきて教室の雰囲気が一変する。
「おい!」
「……え?」
教室に入って来たロドルフ様は私のところにまっすぐ向かって来る。
どう見ても怒っているような顔だ。
「お前、俺たちのことを馬鹿にしたそうだな!」
「ええ?」
「昨日、王宮まで来てレベッカを馬鹿にしたそうじゃないか!
学年二位なんてたいしたことないと!」
「それはっ」
言ったのは私じゃない。シリウス様だ。
どうしてレベッカ様はそんな嘘をロドルフ様に?
視線が合ったレベッカ様はにやりと笑う。
……もしかして、わざと嘘をついてロドルフ様を怒らせた?
「どうしてお前のような役立たずに馬鹿にされなくてはならない。
学園の成績にまで文句を言いたいというのか?」
「違います!」
「じゃあ、どうしてレベッカにそんなことを言った!
俺と婚約解消になったのがそんなに悔しいのか!」
「それは絶対にありえません!」
「は?」
しまった。誤解されたくなさ過ぎて、つい本音で言ってしまった。
でも、こうなったら仕方ない。
「婚約解消を願ったのは私の方です!
シリウス様にお願いして解消してもらいました。
だから不満なんてありません!」
「では、どうしてそんなことを言ったんだ!」
「言っていません!成績の話をしたのは私ではなくシリウス様です。
レベッカ様がシリウス様に弟子入りを断られたというだけのことです!」
「なっ!?」
私なら黙っていると思っていたのか、弟子入りを断られたことを暴露されて、
レベッカ様が真っ赤になっている。
周りの令嬢や令息たちも思うところがあるのか、小声でささやきあっている。
「なんだと?レベッカ、シリウス様に弟子入りを願ったのか?」
「……そうよ。だって、おかしいじゃない。
魔術師の塔の元管理人様よ!?
どうして魔力なしで役立たずのナディアを弟子にするのよ。
いくら血筋だからって、わがまま言い過ぎだわ!」
「私から弟子入りをお願いしたわけではありません。
シリウス様に弟子にならないかと声をかけられたから」
「嘘をつくな!」
何を言っても信じないんだろうなと思いつつ、もう黙っているのは嫌だった。
「最初にお会いしたのは夜会の日でした。
ジネットがシリウス様の控室に私を連れて行ったからです」
「「……」」
私を令息たちに襲わせようとしていたことが気まずいのか、
ロドルフ様とレベッカ様は黙る。
それを気にせずにあの日のことを説明した。
「シリウス様は間違えて入って来た私を心配していました。
それでこっそり馬車まで送ってくれたのです。
転移するために手を取った時に、私に魔力があることにシリウス様が気がついて。
めずらしい事例だからか興味を持ってもらえて、弟子にならないかと」
「ナディアに魔力……嘘だろう」
「本当ですよ。私には魔術師としての才能があるそうです。
レベッカ様はシリウス様がそう言ったの聞きましたよね?」
「……嘘よ。だって、信じられるわけないでしょう!」
「私が言ったのならともかく、シリウス様が言ったのに?」
「それが本当なら証明してみせなさいよ!」
「証明……」
ここで魔力だけ放出させたとしてもわからないだろうし、
魔術を使う許可はまだおりていない。
どうやって証明できるのか悩んでいたら、レベッカ様が勝ち誇ったように笑う。
「ほら、証明できないじゃない!嘘つき!」
「嘘はついていません」
「証明できないじゃない」
「わかりました。シリウス様に聞いてきます」
「「はぁ?」」
「どうやったら私に魔力があると証明できるか聞いてきます。
その後で証明すれば問題ないでしょう」
「……わかった。では、証明できなければ退学してもらおう」
「退学?私がですか?」
「ああ、そうだ。王族に嘘をついたことになるのだからな」
「……なるほど。わかりました」
私が素直にうなずいたからか、二人は満足そうに席に戻った。
魔術演習の時にでもシリウス様に相談すればいいか。
魔力があるのは間違いないし、証明する方法もあるだろう。
ミリアが制服を出してくれた。
「ありがとう……あら?」
受け取ってみたら新品に見える。
「クラデル侯爵からの贈り物の中に入っていました」
「そう……制服まで用意してくれたなんてありがたいわ」
袖を通してみたら違和感があった。
布の質が違うのもあると思うけど、それだけじゃない。
「ミリア、何かこの制服違うような気がするのだけど」
「おそらくサイズが違うんだと思います。
今までの制服だとナディア様に合わなくなっていましたから」
「え?そうだった?」
「はい。かなりお痩せになりましたよね」
「言われてみれば……」
寮に入って健康的な生活をしているからか、身体が軽くなった気がする。
醜い自分を見たくなくて鏡を避けていたから気づかなかった。
思いきって鏡の前に立ってみると、本当に痩せている。
まだふっくらしているけれど、デブというほどではない。
あんなに肉がついていた顔周りもすっきりしている。
「私ってこんな顔をしていたのね」
「ふふふ。ナディア様はお美しいです」
「お世辞だとしてもうれしいわ。
今までお世辞でも言ってもらえなかったもの」
「本当ですよ」
「ありがとう」
少しは本気で言っているのかなと思えるくらい、姿が変わってきている。
このまま痩せたら昔の自分とは別人に見えるかもしれない。
準備を終え、ミリアと一緒に校舎へと向かう。
今まで一人でいたからミリアがずっとそばにいるのは窮屈になるかと心配したけれど、
ミリアはけっして邪魔にはならず、必要だと思う時はすぐに来てくれる。
こんなに優秀なら私の専属侍女じゃなくてもやっていけそうな気がする。
ミリアの教室は同じではないので、私の教室の入り口で別れる。
「授業が終わったらまた来ます」
「ええ」
昼も一緒にカフェテリアで取る約束をしている。
それが楽しみで思わず頬が緩む。
こんなに学園生活が楽しいのは初めてかもしれない。
うきうきするような気持ちで授業が始まるのを待っていたら、
ロドルフ様とレベッカ様が登校してきて教室の雰囲気が一変する。
「おい!」
「……え?」
教室に入って来たロドルフ様は私のところにまっすぐ向かって来る。
どう見ても怒っているような顔だ。
「お前、俺たちのことを馬鹿にしたそうだな!」
「ええ?」
「昨日、王宮まで来てレベッカを馬鹿にしたそうじゃないか!
学年二位なんてたいしたことないと!」
「それはっ」
言ったのは私じゃない。シリウス様だ。
どうしてレベッカ様はそんな嘘をロドルフ様に?
視線が合ったレベッカ様はにやりと笑う。
……もしかして、わざと嘘をついてロドルフ様を怒らせた?
「どうしてお前のような役立たずに馬鹿にされなくてはならない。
学園の成績にまで文句を言いたいというのか?」
「違います!」
「じゃあ、どうしてレベッカにそんなことを言った!
俺と婚約解消になったのがそんなに悔しいのか!」
「それは絶対にありえません!」
「は?」
しまった。誤解されたくなさ過ぎて、つい本音で言ってしまった。
でも、こうなったら仕方ない。
「婚約解消を願ったのは私の方です!
シリウス様にお願いして解消してもらいました。
だから不満なんてありません!」
「では、どうしてそんなことを言ったんだ!」
「言っていません!成績の話をしたのは私ではなくシリウス様です。
レベッカ様がシリウス様に弟子入りを断られたというだけのことです!」
「なっ!?」
私なら黙っていると思っていたのか、弟子入りを断られたことを暴露されて、
レベッカ様が真っ赤になっている。
周りの令嬢や令息たちも思うところがあるのか、小声でささやきあっている。
「なんだと?レベッカ、シリウス様に弟子入りを願ったのか?」
「……そうよ。だって、おかしいじゃない。
魔術師の塔の元管理人様よ!?
どうして魔力なしで役立たずのナディアを弟子にするのよ。
いくら血筋だからって、わがまま言い過ぎだわ!」
「私から弟子入りをお願いしたわけではありません。
シリウス様に弟子にならないかと声をかけられたから」
「嘘をつくな!」
何を言っても信じないんだろうなと思いつつ、もう黙っているのは嫌だった。
「最初にお会いしたのは夜会の日でした。
ジネットがシリウス様の控室に私を連れて行ったからです」
「「……」」
私を令息たちに襲わせようとしていたことが気まずいのか、
ロドルフ様とレベッカ様は黙る。
それを気にせずにあの日のことを説明した。
「シリウス様は間違えて入って来た私を心配していました。
それでこっそり馬車まで送ってくれたのです。
転移するために手を取った時に、私に魔力があることにシリウス様が気がついて。
めずらしい事例だからか興味を持ってもらえて、弟子にならないかと」
「ナディアに魔力……嘘だろう」
「本当ですよ。私には魔術師としての才能があるそうです。
レベッカ様はシリウス様がそう言ったの聞きましたよね?」
「……嘘よ。だって、信じられるわけないでしょう!」
「私が言ったのならともかく、シリウス様が言ったのに?」
「それが本当なら証明してみせなさいよ!」
「証明……」
ここで魔力だけ放出させたとしてもわからないだろうし、
魔術を使う許可はまだおりていない。
どうやって証明できるのか悩んでいたら、レベッカ様が勝ち誇ったように笑う。
「ほら、証明できないじゃない!嘘つき!」
「嘘はついていません」
「証明できないじゃない」
「わかりました。シリウス様に聞いてきます」
「「はぁ?」」
「どうやったら私に魔力があると証明できるか聞いてきます。
その後で証明すれば問題ないでしょう」
「……わかった。では、証明できなければ退学してもらおう」
「退学?私がですか?」
「ああ、そうだ。王族に嘘をついたことになるのだからな」
「……なるほど。わかりました」
私が素直にうなずいたからか、二人は満足そうに席に戻った。
魔術演習の時にでもシリウス様に相談すればいいか。
魔力があるのは間違いないし、証明する方法もあるだろう。
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