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22.宣戦布告
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昼休憩が終わり、ミリアと別れて個別訓練室に向かう。
ドアを開けると、ちょうどシリウス様が転移してきたところだった。
「シリウス様!」
「待たせたか?」
「いえ、ちょうど来たところです。授業の前に相談があるのですが」
「相談?」
シリウス様に今朝ロドルフ様たちに言われたことを話すと、
面白いものを見つけたようににやりと笑った。
「そうか。じゃあ、とりあえず半分の時間まで魔力調整をする。
その後、ロドルフたちのところへ行こう。
あいつらがどこで訓練しているか知っているか?」
「おそらく外の訓練場だと思います。
いつもそこでレベッカ様と訓練しているって聞きました」
実際に訓練しているところを見たことはない。
私はいつも図書室に行っていたから。
場所を知っているのはわざわざ私に聞かせていた令嬢たちがいたからだ。
「今日もお二人は仲よく訓練されていたわ」と。
「ふうん。外の訓練場か。
そういう場所で訓練するのは目立ちたがり屋が多いんだよな」
「目立ちたがり屋……そうかもしれません。
お二人とも魔術演習はいつも上位の成績でしたし、
周りにはそれを見るために集まっている学生もいるそうです」
「なるほどね。よし、魔力調整を早く終わらせよう」
「はい!」
いつもよりも早めの時間に魔力調整の訓練を終えると、
シリウス様は私を抱きかかえて転移する。
ミリアを転移させるときは腕にさわるだけでよかったのに、
なぜか私は抱きかかえられないといけないらしい。
体重が重いからだろうか。
転移した先は広い訓練場の端だった。
真ん中あたりでロドルフ様が魔術を放ったのが見える。
少し離れた場所で見ていた学生たちから歓声が上がった。
……ん?あれは何の魔術なんだろう。
火と風の魔術式を使っているように見えるけれど、どちらも中途半端だ。
一瞬だけ炎が出て、その後爆発するように消えたが、
どちらも攻撃力はほとんどなく使い物にならない。
「気がついたか?」
「あれは魔術式を間違えていますか?」
「そうだ。おそらく爆炎を出そうとしたんだろう。
うろ覚えで魔術を使おうとするからああなるんだ」
「でも、間違えていることに気がついていませんね」
「その程度の理解力だからだ」
続いて違う魔術を使ったレベッカ様も似たようなものだった。
きちんと魔術式を覚えていない、理論をわかっていない。
だから、見せかけだけの威力のないものになっている。
「ある程度魔力が多いから間違っていても発動してしまうのでしょうか」
「……そうだな。ごり押しのような魔術だ。
あんなものを使うのは魔術師ではない」
美しくない魔術は見たくないとつぶやくシリウス様。
レベッカ様の弟子入りを断ったのはそういう理由らしい。
では、ロドルフ様も嫌われていそうだ。
ふと、レベッカ様が私たちに気がついた。
ロドルフ様もこちらを見て、二人で向かって来る。
「シリウス様!俺たちの魔術を見てくれましたか!」
「私のはどうでしたか!
あれなら弟子にしてもいいと思ってくれたんじゃないですか?」
「どちらも失格だ。あれでは話にならん」
「「え?」」
思っていた反応と違ったからか、ロドルフ様の表情が固まる。
レベッカ様はまた断られた悔しさなのか唇をかみしめた。
「お前たち、ナディアに証明しろと言ったそうだな?」
「あ、はい……そうです。
ナディアに魔力があったなんて嘘ですよね。
だから、王族として罰しようと」
「ナディアに魔力はある。
今まで身体に貯め込んで放出できなかっただけだ。
これからは問題なく魔術を使える」
「そんな……信じられません。
じゃあ、使って見せてほしいです!」
魔術を今ここで?
まだ赤二から下がらないのに、魔術を使ったら大変なことになる。
どうするのかと思っていたら、シリウス様はにやりと笑う。
「あせらなくていい。どうせ一か月半後に後期試験がある。
ナディアは一位をとるだろう」
「まさか!」
「無理に決まってます!」
「俺の弟子だぞ。一位になるに決まっている」
えええ?そんな期待されても困る。
今まで魔術演習の試験なんて受けたこともないのに。
「……本気ですか?」
「ああ」
「では、俺がナディアに勝ったら弟子にしてください!」
「私も!ナディアに勝つので弟子に!」
「そうだな、ナディアに勝てたら弟子にしてもいい」
「よし!」
「負けるわけないわっ!」
シリウス様が約束してしまったことで二人は喜んでいる。
どうしよう。私が負けたらシリウス様が困る。
血の気が引いていく感じがしてふらついたら、
シリウス様が私の手をとって支えてくれた。
「大丈夫だ。負けることはない」
「……でも、私は」
「俺が教えるんだ。問題ない」
「……はい」
そう言われたら、うなずくしかない。
ロドルフ様とレベッカ様は少しでも訓練したいのか、
シリウス様に礼をして去ろうとしている。
「ああ、言い忘れていた。
次の試験から魔術演習だけではなく、全科目の試験結果が公表されることになった」
「はぁ?」
「全科目ですって!?」
「あまりにも学科をおろそかにする学生が多いからな。
先日の会議で決まって、王家にも報告が行っているはずだ。
ナディアと勝負するのは魔術演習の成績だけでかまわないが、
あまりにもお粗末な結果だと笑われることになるぞ」
「っ!……失礼します!」
全科目の成績が公表されるのが困るのか、
二人とも青ざめた顔で去って行った。
「全科目の成績が公表されるって学生たちが知ったら大騒ぎになるでしょうね」
「お前は問題ないはずだ」
「それは、まぁ。そうですね」
魔術演習は受けられなかったけれど、他の科目はずっと一位だった。
今回はいつも以上に集中して勉強できているし心配はないと思う。
それよりも問題は魔術演習だ……どうしよう。
ドアを開けると、ちょうどシリウス様が転移してきたところだった。
「シリウス様!」
「待たせたか?」
「いえ、ちょうど来たところです。授業の前に相談があるのですが」
「相談?」
シリウス様に今朝ロドルフ様たちに言われたことを話すと、
面白いものを見つけたようににやりと笑った。
「そうか。じゃあ、とりあえず半分の時間まで魔力調整をする。
その後、ロドルフたちのところへ行こう。
あいつらがどこで訓練しているか知っているか?」
「おそらく外の訓練場だと思います。
いつもそこでレベッカ様と訓練しているって聞きました」
実際に訓練しているところを見たことはない。
私はいつも図書室に行っていたから。
場所を知っているのはわざわざ私に聞かせていた令嬢たちがいたからだ。
「今日もお二人は仲よく訓練されていたわ」と。
「ふうん。外の訓練場か。
そういう場所で訓練するのは目立ちたがり屋が多いんだよな」
「目立ちたがり屋……そうかもしれません。
お二人とも魔術演習はいつも上位の成績でしたし、
周りにはそれを見るために集まっている学生もいるそうです」
「なるほどね。よし、魔力調整を早く終わらせよう」
「はい!」
いつもよりも早めの時間に魔力調整の訓練を終えると、
シリウス様は私を抱きかかえて転移する。
ミリアを転移させるときは腕にさわるだけでよかったのに、
なぜか私は抱きかかえられないといけないらしい。
体重が重いからだろうか。
転移した先は広い訓練場の端だった。
真ん中あたりでロドルフ様が魔術を放ったのが見える。
少し離れた場所で見ていた学生たちから歓声が上がった。
……ん?あれは何の魔術なんだろう。
火と風の魔術式を使っているように見えるけれど、どちらも中途半端だ。
一瞬だけ炎が出て、その後爆発するように消えたが、
どちらも攻撃力はほとんどなく使い物にならない。
「気がついたか?」
「あれは魔術式を間違えていますか?」
「そうだ。おそらく爆炎を出そうとしたんだろう。
うろ覚えで魔術を使おうとするからああなるんだ」
「でも、間違えていることに気がついていませんね」
「その程度の理解力だからだ」
続いて違う魔術を使ったレベッカ様も似たようなものだった。
きちんと魔術式を覚えていない、理論をわかっていない。
だから、見せかけだけの威力のないものになっている。
「ある程度魔力が多いから間違っていても発動してしまうのでしょうか」
「……そうだな。ごり押しのような魔術だ。
あんなものを使うのは魔術師ではない」
美しくない魔術は見たくないとつぶやくシリウス様。
レベッカ様の弟子入りを断ったのはそういう理由らしい。
では、ロドルフ様も嫌われていそうだ。
ふと、レベッカ様が私たちに気がついた。
ロドルフ様もこちらを見て、二人で向かって来る。
「シリウス様!俺たちの魔術を見てくれましたか!」
「私のはどうでしたか!
あれなら弟子にしてもいいと思ってくれたんじゃないですか?」
「どちらも失格だ。あれでは話にならん」
「「え?」」
思っていた反応と違ったからか、ロドルフ様の表情が固まる。
レベッカ様はまた断られた悔しさなのか唇をかみしめた。
「お前たち、ナディアに証明しろと言ったそうだな?」
「あ、はい……そうです。
ナディアに魔力があったなんて嘘ですよね。
だから、王族として罰しようと」
「ナディアに魔力はある。
今まで身体に貯め込んで放出できなかっただけだ。
これからは問題なく魔術を使える」
「そんな……信じられません。
じゃあ、使って見せてほしいです!」
魔術を今ここで?
まだ赤二から下がらないのに、魔術を使ったら大変なことになる。
どうするのかと思っていたら、シリウス様はにやりと笑う。
「あせらなくていい。どうせ一か月半後に後期試験がある。
ナディアは一位をとるだろう」
「まさか!」
「無理に決まってます!」
「俺の弟子だぞ。一位になるに決まっている」
えええ?そんな期待されても困る。
今まで魔術演習の試験なんて受けたこともないのに。
「……本気ですか?」
「ああ」
「では、俺がナディアに勝ったら弟子にしてください!」
「私も!ナディアに勝つので弟子に!」
「そうだな、ナディアに勝てたら弟子にしてもいい」
「よし!」
「負けるわけないわっ!」
シリウス様が約束してしまったことで二人は喜んでいる。
どうしよう。私が負けたらシリウス様が困る。
血の気が引いていく感じがしてふらついたら、
シリウス様が私の手をとって支えてくれた。
「大丈夫だ。負けることはない」
「……でも、私は」
「俺が教えるんだ。問題ない」
「……はい」
そう言われたら、うなずくしかない。
ロドルフ様とレベッカ様は少しでも訓練したいのか、
シリウス様に礼をして去ろうとしている。
「ああ、言い忘れていた。
次の試験から魔術演習だけではなく、全科目の試験結果が公表されることになった」
「はぁ?」
「全科目ですって!?」
「あまりにも学科をおろそかにする学生が多いからな。
先日の会議で決まって、王家にも報告が行っているはずだ。
ナディアと勝負するのは魔術演習の成績だけでかまわないが、
あまりにもお粗末な結果だと笑われることになるぞ」
「っ!……失礼します!」
全科目の成績が公表されるのが困るのか、
二人とも青ざめた顔で去って行った。
「全科目の成績が公表されるって学生たちが知ったら大騒ぎになるでしょうね」
「お前は問題ないはずだ」
「それは、まぁ。そうですね」
魔術演習は受けられなかったけれど、他の科目はずっと一位だった。
今回はいつも以上に集中して勉強できているし心配はないと思う。
それよりも問題は魔術演習だ……どうしよう。
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