あぁ、もう!婚約破棄された騎士がそばにいるからって、聖女にしないでください!

gacchi(がっち)

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2.その人って

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「ふん!これだから可愛げがないというんだ。
 髪の色も汚く混じったような女に用はない。
 俺は新しい婚約者にキャロル・モンマイドを指名する!」

「…は?」


会場にいた誰もが目を見開いて驚いた。
キャロル・モンマイド侯爵令嬢。黒髪黒目でめずらしい闇属性の令嬢だ。
すこしたれ目で色っぽい厚いくちびる、そして甘たるい声が響き渡る。


「はぁい。」


呼ばれたキャロル様はフレッド様の隣に寄り添い、腕に抱き着いた。
淑女として、侯爵家の令嬢としてあり得ない行動だ。
今日のパーティにフレッド様と一緒に入場してきたときには、
何か理由があるんだろうと思っていたのに。

モンマイド侯爵家は闇属性の魔術を受け継ぐ家系として、
キャロル様は後継ぎとしても有名だった。キャロル様が一人娘だったからだ。
そして、それ以上に有名だった理由は…。



「フレッド様?何を考えているのです!
 キャロル様はあなたの側近のユリアス様の婚約者ではないですか!」


そう。
今もフレッド様のそばで護衛している、ユリアス・ハンドウイル様の婚約者なのだ。

ユリアス様は学園に通いながらフレッド王子の護衛もしている。
ハンドウイル伯爵家は騎士の家系として有名で、
三男のユリアス様は卒業後にフレッド様の側近になる予定だ。
そのユリアス様も初耳なのか、めずらしく目を見開いている。
どちらかといえば細めの切れ長の目が見開かれているのは、
それだけ驚いているからなのだろう。


「…ん?あぁ、ユリアスの婚約者か…そういえばそうだったな。
 だが、俺とキャロルは愛し合っている。仕方ないだろう。」


「…それに関しては私がいうことではないので、これで失礼します。
 婚約破棄については、この後王宮に署名しに行きます。
 では。」

呆れたようにマリージュ様が退席され、
広間の中央にはフレッド様とキャロル様、少し離れてユリアス様が残された。
この後どうなるのか、周りの者たちは展開が気になって帰れずにいる。


「あーユリアス?今聞いた通りだ。
 俺たちの仲を認めてくれるよな?」

「ごめんなさい、ユリアス。
 だって、ユリアスは騎士団の訓練とかで全く会ってくれなかったでしょう?
 その間にフレッド様に優しくされちゃって…。」


まったく悪いとは思っていない謝罪に、周りの者たちのほうがいらつく。
筆頭公爵家の婚約者と名門騎士伯爵家の側近、そのどちらも傷つけている。
おそらくその結果はこれからすぐに悪影響となって周りに広がっていく。
周囲の迷惑を考えてもいない二人には、天罰が下れとしか思えない。


「そうか。じゃあ、二人でお幸せに。」

「ありがとう!ユリアス。やっぱりユリアスならわかってくれるよな!」

「ふふっ。幸せになるわ、ユリアス。」


何にも考えていない無邪気な笑顔だが、周りの者は気が付いていた。
ユリアス様は笑っていない。静かに怒ってる…。



「では、俺は今日限りで側近から降ります。」

「は?なんでだ?」
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