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17.対面
応接室に入ると、側妃と王女が目を見開いて驚いたのがわかった。
イザークはそのままソファへと座り、私をひざの上に座らせる。
レオナはソファの後ろへと控えた。
「イザークの番のラディアだ。これで文句はないな?」
「……あの、その者が本当にイザーク様の番ですの?
別人だとか、姉妹だというのではなく?」
「なぜそう思うのだ?」
「いえ……」
私たちは騎士に汚されて王城の外に放り出されたはずと思っていた側妃は、
計画が失敗したことを認められなかったようだ。
一方の王女は一度私たちと会っている。
計画が失敗したことがわかったのか、ものすごい目でにらんでくる。
帝王やイザークがいるのに、そんな顔していいのかと呆れてしまう。
とりあえず王女は無視して、側妃へにっこり笑って挨拶をする。
「イザークの番のラディアよ。カサンドル妃、これからよろしくね?」
「え、ええ」
「イザーク兄様、この者は番ではないわ!」
自分の母親と対等のような口のきき方で腹を立てたのか、
王女が我慢できなくなって立ち上がって叫んだ。
側妃は王女を止めようとしたが、少し遅かった。
「その女は竜族じゃない!兄様を騙しているのよ!」
「カロリーヌ!!黙りなさい!」
「なによ、お母様は邪魔しないで」
「いいから!黙って!」
「嫌よ!兄様がこんな平民の女に取られるなんて嫌だもの!」
「どうしてラディアが竜族じゃないと?髪色は竜族でも銀髪はいるぞ?
身体が小さいのは成長途中だからだし、何の問題もない。
どこに竜族じゃない証拠があるんだ」
のんびりとした口調でイザークが王女に問いかける。
いつもよりもゆっくりと話しているのは、
これが証拠になる発言だとわかっているからだ。
口調は穏やかでもイザークの目は冷たく、
怒りを隠すために王女とは視線を合わそうとしない。
ようやくイザークが自分を見てくれたと思ったのだろう。
何も気がついていない王女は満面の笑みで答える。
「だって、竜酔香が効かなかったのよ!
竜気が強くない竜族でも少しは効くのでしょう?
この女はまったくなんともなかったんだから、人族に違いないわ!」
「……あぁ、なんてことを」
「お母様、どうしたの?」
側妃は王女の発言のまずさを十分にわかっていたようで、
王女の発言を取り消そうと帝王へと視線を向けた。
だが、側妃が何かを言う前に帝王は王女へと優しく問いかける。
「カロリーヌ。ラディアに竜酔香を使ったのはどうしてだ?」
「え?だって、イザーク兄様の妻は私だけでいいもの。
こんな平民の旅人なんて認めるわけにはいかないわ。
邪魔だったから殺しちゃってもいいと思って使ったんだけど、
この女には全然効かなかったの」
「だから、騎士たちを使って汚そうとしたのか?」
「ええ、そうよ。イザーク兄様の妻なら貞淑でないとダメなのでしょう?
汚れてしまえばイザーク兄様も考え直すと思ったの。
でも、どうしてこの女は平気そうなの?汚されていないの?
騎士達はちゃんと仕事しなかったのかしら」
不思議そうにつぶやいている王女はまったく罪の意識がないらしい。
帝王に聞かれるままに自分が何をしたのか応えている。
知らず知らずのうちに罪を自白していく王女に、
側妃はふるふると首を横に振り続けている。
「まず、竜酔香はどこから手に入れた?」
「あれはお母様からもらったものよ。
気に入らない貴族令嬢がいたら使いなさいって。
これで気を失わせてから騎士たちにあげてしまえばいいって」
「竜酔香は禁止された毒だと知らなかったのか?」
「知っているけど私が使うんだもの。いいじゃない。
お母様だって使っているんだもの。王族が使う分には問題ないでしょ」
何も知らないのかと思っていたら、そうではなかった。
この国では禁止されている毒だったとしても、
王女である自分なら使っても問題ないと思っていたらしい。
だからこそ、こうして素直に話しているのかもしれない。
自分なら、王女なら、何をしても罪にはならないからと。
竜帝国の王族としての権力はあるだろうし、
たとえば平民の私を傷つけただけだったとしたら、
大した罪にはならなかっただろう。
でも、禁止されている竜酔香を使ったのなら話は別だ。
どんな理由があろうと、竜酔香は竜帝国に持ち込んではいけない毒だからだ。
王族だとしても処罰は免れない。
「カロリーヌ、お前が使ったとしても重罪にはかわりない。
もちろんカサンドルが使ったとしてもな。
まぁ、カサンドルはよくわかっているようだが」
名前を出されて、カサンドル妃の肩がびくっと震えた。
重罪を犯し、それを帝王に知られてしまった。
処罰が決まるのはこれからだが、少なくとも今まで通りにはいかない。
それなのに王女はまだ大丈夫だと思っているようだ。
くちびるを尖らせて帝王に言い訳している。
「ダメだったとしても今回はいいでしょ?
イザーク兄様の番だって嘘ついていたのを見破ったんだから。
竜酔香がなかったらわからないままだったかもしれないわ。
ね、イザーク兄様もそう思うでしょう?」
厳しい表情のままの帝王には何を言っても無駄だと思ったのか、
王女はイザークへと同意を求めた。
「いいわけないだろう。それに、ラディアは間違いなく俺の番だ」
「まだ騙されているの!?」
「何も騙されていない。お前が知らないだけだ。
すべての竜人、竜族に竜酔香が効くわけじゃない」
「え?」
「ラディアは中和剤である馬殺草を身体にまとわせている。
だから、竜酔香が効かなかっただけだ」
王女がそのことを知らなかったとしても当然だ。
普通の竜族は毒耐性があったとしても馬殺草をまとわせるようなことはしない。
何年も毒草をお茶にして飲むような馬鹿な真似はしないからだ。
おそらくレオナと私くらいなものだろう。
イザークはそのままソファへと座り、私をひざの上に座らせる。
レオナはソファの後ろへと控えた。
「イザークの番のラディアだ。これで文句はないな?」
「……あの、その者が本当にイザーク様の番ですの?
別人だとか、姉妹だというのではなく?」
「なぜそう思うのだ?」
「いえ……」
私たちは騎士に汚されて王城の外に放り出されたはずと思っていた側妃は、
計画が失敗したことを認められなかったようだ。
一方の王女は一度私たちと会っている。
計画が失敗したことがわかったのか、ものすごい目でにらんでくる。
帝王やイザークがいるのに、そんな顔していいのかと呆れてしまう。
とりあえず王女は無視して、側妃へにっこり笑って挨拶をする。
「イザークの番のラディアよ。カサンドル妃、これからよろしくね?」
「え、ええ」
「イザーク兄様、この者は番ではないわ!」
自分の母親と対等のような口のきき方で腹を立てたのか、
王女が我慢できなくなって立ち上がって叫んだ。
側妃は王女を止めようとしたが、少し遅かった。
「その女は竜族じゃない!兄様を騙しているのよ!」
「カロリーヌ!!黙りなさい!」
「なによ、お母様は邪魔しないで」
「いいから!黙って!」
「嫌よ!兄様がこんな平民の女に取られるなんて嫌だもの!」
「どうしてラディアが竜族じゃないと?髪色は竜族でも銀髪はいるぞ?
身体が小さいのは成長途中だからだし、何の問題もない。
どこに竜族じゃない証拠があるんだ」
のんびりとした口調でイザークが王女に問いかける。
いつもよりもゆっくりと話しているのは、
これが証拠になる発言だとわかっているからだ。
口調は穏やかでもイザークの目は冷たく、
怒りを隠すために王女とは視線を合わそうとしない。
ようやくイザークが自分を見てくれたと思ったのだろう。
何も気がついていない王女は満面の笑みで答える。
「だって、竜酔香が効かなかったのよ!
竜気が強くない竜族でも少しは効くのでしょう?
この女はまったくなんともなかったんだから、人族に違いないわ!」
「……あぁ、なんてことを」
「お母様、どうしたの?」
側妃は王女の発言のまずさを十分にわかっていたようで、
王女の発言を取り消そうと帝王へと視線を向けた。
だが、側妃が何かを言う前に帝王は王女へと優しく問いかける。
「カロリーヌ。ラディアに竜酔香を使ったのはどうしてだ?」
「え?だって、イザーク兄様の妻は私だけでいいもの。
こんな平民の旅人なんて認めるわけにはいかないわ。
邪魔だったから殺しちゃってもいいと思って使ったんだけど、
この女には全然効かなかったの」
「だから、騎士たちを使って汚そうとしたのか?」
「ええ、そうよ。イザーク兄様の妻なら貞淑でないとダメなのでしょう?
汚れてしまえばイザーク兄様も考え直すと思ったの。
でも、どうしてこの女は平気そうなの?汚されていないの?
騎士達はちゃんと仕事しなかったのかしら」
不思議そうにつぶやいている王女はまったく罪の意識がないらしい。
帝王に聞かれるままに自分が何をしたのか応えている。
知らず知らずのうちに罪を自白していく王女に、
側妃はふるふると首を横に振り続けている。
「まず、竜酔香はどこから手に入れた?」
「あれはお母様からもらったものよ。
気に入らない貴族令嬢がいたら使いなさいって。
これで気を失わせてから騎士たちにあげてしまえばいいって」
「竜酔香は禁止された毒だと知らなかったのか?」
「知っているけど私が使うんだもの。いいじゃない。
お母様だって使っているんだもの。王族が使う分には問題ないでしょ」
何も知らないのかと思っていたら、そうではなかった。
この国では禁止されている毒だったとしても、
王女である自分なら使っても問題ないと思っていたらしい。
だからこそ、こうして素直に話しているのかもしれない。
自分なら、王女なら、何をしても罪にはならないからと。
竜帝国の王族としての権力はあるだろうし、
たとえば平民の私を傷つけただけだったとしたら、
大した罪にはならなかっただろう。
でも、禁止されている竜酔香を使ったのなら話は別だ。
どんな理由があろうと、竜酔香は竜帝国に持ち込んではいけない毒だからだ。
王族だとしても処罰は免れない。
「カロリーヌ、お前が使ったとしても重罪にはかわりない。
もちろんカサンドルが使ったとしてもな。
まぁ、カサンドルはよくわかっているようだが」
名前を出されて、カサンドル妃の肩がびくっと震えた。
重罪を犯し、それを帝王に知られてしまった。
処罰が決まるのはこれからだが、少なくとも今まで通りにはいかない。
それなのに王女はまだ大丈夫だと思っているようだ。
くちびるを尖らせて帝王に言い訳している。
「ダメだったとしても今回はいいでしょ?
イザーク兄様の番だって嘘ついていたのを見破ったんだから。
竜酔香がなかったらわからないままだったかもしれないわ。
ね、イザーク兄様もそう思うでしょう?」
厳しい表情のままの帝王には何を言っても無駄だと思ったのか、
王女はイザークへと同意を求めた。
「いいわけないだろう。それに、ラディアは間違いなく俺の番だ」
「まだ騙されているの!?」
「何も騙されていない。お前が知らないだけだ。
すべての竜人、竜族に竜酔香が効くわけじゃない」
「え?」
「ラディアは中和剤である馬殺草を身体にまとわせている。
だから、竜酔香が効かなかっただけだ」
王女がそのことを知らなかったとしても当然だ。
普通の竜族は毒耐性があったとしても馬殺草をまとわせるようなことはしない。
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おそらくレオナと私くらいなものだろう。
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