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18.処罰
ここまで言われても王女はまだ信じられないのか認めなかった。
「嘘よ…そんなの聞いたことないもの!
それに本当に竜族だったとしても番かどうかなんてわからないじゃない!」
その言葉に、帝王やイザーク、護衛騎士達からもため息がもれる。
番を知らなかったのはエンフィア王国出身の私だけで、レオナも知っていた。
それなのに竜帝国の王女が知らないのはおかしい。
帝王が怒鳴りつけそうになったのをイザークが止め、
王女へ淡々と説明をする。
「番かどうかは俺が一番わかっている。
竜人なら、竜族なら番かどうかは本能でわかることだ。
それにラディアにはもうすでに俺の逆鱗を飲ませてある」
「え?」
「このくらいはわかるだろう?番でなければ逆鱗は飲ませられない。
俺はラディアに会ったその日に逆鱗を飲ませた。
今は竜人の身体に変化しようとしているところだ」
「イザーク、その話は聞いてないぞ。
もうすでに逆鱗を飲ませたのか?
何でそんなめでたいことを報告しないんだ」
帝王に報告していなかったせいか、横から驚きの声があがった。
それだけ竜人にとって逆鱗を飲ませるというのは大事なことなのだろう。
「もう少し落ち着いてから報告するつもりだった。
ラディアが完全に竜人になった時に結婚する予定だ。
カロリーナ、わかるか?お前が疑っていたとしても無駄だってことだ。
竜人なら、竜族なら番を引き離そうとなんて誰もしない」
「嘘……本当に……?」
「俺が嘘を言ったことがあるか?」
やっと私が本当の番だと理解する気になったのか、王女は床にへたり込んだ。
側妃はもうあきらめたのか、泣き出してしまっている。
「では、カサンドルは妃から除籍する。当然のことだ。異論はないな?」
「……」
「もちろんカロリーヌもだ。王族から除籍だ」
「え?どうして?お父様」
「竜酔香を持ち込み、使用したこと。
他国の公爵家の婚約者を襲わせようとしたこと、
どちらも重罪だ。除籍だけでは済まないだろう」
「嫌よ!そんなの!私は何もしていないわ!
周りが勝手にやってくれたことだわ!
そうよ。処罰なら女官と騎士たちに与えればいいじゃない!」
さっきまで自分がやったと認めていたのに、重罪だとわかると否定する。
あれだけ指示していたのに女官や騎士に罪を負わせて、それでいいという。
あまりにも身勝手すぎて、どこから言い返せばいいのかわからない。
帝王も腹が立ちすぎたのか、真っ赤な顔をしている。
怒鳴りたくても言いたいことがありすぎて、怒鳴れないようだ。
その時、私たちの後ろから声がかかる。
「帝王様、少しよろしいでしょうか」
「……あ、ああ。レオナか。かまわない。なんだ?」
「あの時、部屋には竜酔香が充満していました。
それこそ、三十秒もせずにダニーとデニーが倒れたほどです。
でもカロリーヌ王女は平気そうでした。私たちと会話をしていたのにです。
どうして効かなかったのでしょうね?」
そういえばそうだ。王女はあの部屋に数分はいたはず。
竜酔香は竜族なら竜気が弱くても毒になると言っていた。
王女は最初から最後まで毒の影響は無かったように思う。
……竜族なら、なぜ?
「カロリーヌ、お前は竜酔香を嗅いでもなんともないのか?」
「ないけど、どうして?」
何も気がついていないのか、王女はあっけらかんと答える。
「帝王様、わたしく鑑定のスキルを持っているのですが、
カロリーヌ王女を鑑定してもよろしいでしょうか?」
「鑑定まで持っているのか。頼む」
「お願い!やめて!」
止めようとレオナに飛び掛かろうとした側妃は護衛騎士に取り押さえられた。
事前の打ち合わせでは王女の鑑定は捕らえた後でする予定だったが、
王女があまりにも身勝手すぎるからレオナが我慢できなくなったのだろう。
「カロリーヌ王女の母親はカサンドル妃で間違いないですが、
父親は帝王様ではないですね」
「嘘よ!」
「父親が誰なのかわかるか?」
「……アレッサンド国の王太子。フェルナンディ王子です」
「あいつか……そうか。そういえば琥珀色の目をしていたな。
カサンドル、ここでおとなしく罪を認めるのであれば、
国外追放でアレッサンド国に戻すだけにしてやろう。
さすがに他国の王太子の子を処刑するわけにはいかないからな。
認めるか?竜酔香もアレッサンド国から手に入れたのだろう?」
「……はい。申し訳ございません……」
相手まではっきり言われてしまったら認めるしかないのか、
うつむいたままの側妃がか細い声で認めた。
王女はそのことを知らなかったのか、目を見開いて側妃を見ている。
「……うそ。お父様が父親じゃないの!?私が竜族じゃない?」
「王女は間違いなく、人族ですわ」
追い打ちをかけるようにレオナがきっぱりと言うと、王女はボロボロと泣き出した。
「うそよ……だって、ずっとイザーク兄様の番は私だって」
「それはただの恋心でしょう。
人族にだって恋心も執着心もありますもの。
でも、それは番とは全く違うもの。
竜人が人族と番うことはありえないのだから」
「ありえないの……?そんな」
それっきり王女は話さなくなってしまった。
二人が大人しくなったのを見て、帝王が護衛騎士に命令を下す。
「カサンドルとカロリーヌ、またアレッサンド国から連れてきた使用人は、
ただちに国外追放とする。捕縛し、アレッサンド国の王宮まで連れていけ」
「「「はっ」」」
力なく座り込んでいた側妃と王女が無理やり立たされて連れて行かれる。
残されたのは帝王とイザーク、私とレオナだけになった。
「ねぇ、レオナ。鑑定って父親の名前もわかるの?」
「いいえ、わからないわ」
「え?でも、どうして王女の父親がわかったの?」
「……フェルナンディの魔力は知っていたからね。
知っている者の魔力や竜気であれば血縁関係もわかるの」
「そっか。じゃあ、私の父親はわからないんだ」
ちょっとだけ気になっていた。
鑑定で父親の名前がわかるのなら、私の父親もわかるんじゃないかって。
でも、実際にはそんな簡単にはわからないみたい。
「知りたかった?」
「ううん。ちょっと聞いてみたかっただけ」
後宮にいたころの私なら、きっと父親がわかったら殺しに行っただろう。
それは紛れもなく、お母様を汚した証なのだから。
そう思っていることに気がついたのか、イザークが頬を撫でてくる。
「ラディアの父親が誰なのか調べればわかるだろう。
その時は俺が手を下してやる。
だから、もうラディアはそんなことをしなくていい」
「イザーク。でも」
「もう無理に頑張らなくていい。ほら、怖かったのだろう」
「ん」
抱きしめられて頭や髪を撫でられているうちに、ようやく気持ちが落ち着いていく。
何かされるかもと怯えていたわけじゃない。
ただ、理解できない人と対面するのというのは恐ろしい。
言葉は理解できるのに何も理解できない。それこそ、化け物のようだと思う。
「嘘よ…そんなの聞いたことないもの!
それに本当に竜族だったとしても番かどうかなんてわからないじゃない!」
その言葉に、帝王やイザーク、護衛騎士達からもため息がもれる。
番を知らなかったのはエンフィア王国出身の私だけで、レオナも知っていた。
それなのに竜帝国の王女が知らないのはおかしい。
帝王が怒鳴りつけそうになったのをイザークが止め、
王女へ淡々と説明をする。
「番かどうかは俺が一番わかっている。
竜人なら、竜族なら番かどうかは本能でわかることだ。
それにラディアにはもうすでに俺の逆鱗を飲ませてある」
「え?」
「このくらいはわかるだろう?番でなければ逆鱗は飲ませられない。
俺はラディアに会ったその日に逆鱗を飲ませた。
今は竜人の身体に変化しようとしているところだ」
「イザーク、その話は聞いてないぞ。
もうすでに逆鱗を飲ませたのか?
何でそんなめでたいことを報告しないんだ」
帝王に報告していなかったせいか、横から驚きの声があがった。
それだけ竜人にとって逆鱗を飲ませるというのは大事なことなのだろう。
「もう少し落ち着いてから報告するつもりだった。
ラディアが完全に竜人になった時に結婚する予定だ。
カロリーナ、わかるか?お前が疑っていたとしても無駄だってことだ。
竜人なら、竜族なら番を引き離そうとなんて誰もしない」
「嘘……本当に……?」
「俺が嘘を言ったことがあるか?」
やっと私が本当の番だと理解する気になったのか、王女は床にへたり込んだ。
側妃はもうあきらめたのか、泣き出してしまっている。
「では、カサンドルは妃から除籍する。当然のことだ。異論はないな?」
「……」
「もちろんカロリーヌもだ。王族から除籍だ」
「え?どうして?お父様」
「竜酔香を持ち込み、使用したこと。
他国の公爵家の婚約者を襲わせようとしたこと、
どちらも重罪だ。除籍だけでは済まないだろう」
「嫌よ!そんなの!私は何もしていないわ!
周りが勝手にやってくれたことだわ!
そうよ。処罰なら女官と騎士たちに与えればいいじゃない!」
さっきまで自分がやったと認めていたのに、重罪だとわかると否定する。
あれだけ指示していたのに女官や騎士に罪を負わせて、それでいいという。
あまりにも身勝手すぎて、どこから言い返せばいいのかわからない。
帝王も腹が立ちすぎたのか、真っ赤な顔をしている。
怒鳴りたくても言いたいことがありすぎて、怒鳴れないようだ。
その時、私たちの後ろから声がかかる。
「帝王様、少しよろしいでしょうか」
「……あ、ああ。レオナか。かまわない。なんだ?」
「あの時、部屋には竜酔香が充満していました。
それこそ、三十秒もせずにダニーとデニーが倒れたほどです。
でもカロリーヌ王女は平気そうでした。私たちと会話をしていたのにです。
どうして効かなかったのでしょうね?」
そういえばそうだ。王女はあの部屋に数分はいたはず。
竜酔香は竜族なら竜気が弱くても毒になると言っていた。
王女は最初から最後まで毒の影響は無かったように思う。
……竜族なら、なぜ?
「カロリーヌ、お前は竜酔香を嗅いでもなんともないのか?」
「ないけど、どうして?」
何も気がついていないのか、王女はあっけらかんと答える。
「帝王様、わたしく鑑定のスキルを持っているのですが、
カロリーヌ王女を鑑定してもよろしいでしょうか?」
「鑑定まで持っているのか。頼む」
「お願い!やめて!」
止めようとレオナに飛び掛かろうとした側妃は護衛騎士に取り押さえられた。
事前の打ち合わせでは王女の鑑定は捕らえた後でする予定だったが、
王女があまりにも身勝手すぎるからレオナが我慢できなくなったのだろう。
「カロリーヌ王女の母親はカサンドル妃で間違いないですが、
父親は帝王様ではないですね」
「嘘よ!」
「父親が誰なのかわかるか?」
「……アレッサンド国の王太子。フェルナンディ王子です」
「あいつか……そうか。そういえば琥珀色の目をしていたな。
カサンドル、ここでおとなしく罪を認めるのであれば、
国外追放でアレッサンド国に戻すだけにしてやろう。
さすがに他国の王太子の子を処刑するわけにはいかないからな。
認めるか?竜酔香もアレッサンド国から手に入れたのだろう?」
「……はい。申し訳ございません……」
相手まではっきり言われてしまったら認めるしかないのか、
うつむいたままの側妃がか細い声で認めた。
王女はそのことを知らなかったのか、目を見開いて側妃を見ている。
「……うそ。お父様が父親じゃないの!?私が竜族じゃない?」
「王女は間違いなく、人族ですわ」
追い打ちをかけるようにレオナがきっぱりと言うと、王女はボロボロと泣き出した。
「うそよ……だって、ずっとイザーク兄様の番は私だって」
「それはただの恋心でしょう。
人族にだって恋心も執着心もありますもの。
でも、それは番とは全く違うもの。
竜人が人族と番うことはありえないのだから」
「ありえないの……?そんな」
それっきり王女は話さなくなってしまった。
二人が大人しくなったのを見て、帝王が護衛騎士に命令を下す。
「カサンドルとカロリーヌ、またアレッサンド国から連れてきた使用人は、
ただちに国外追放とする。捕縛し、アレッサンド国の王宮まで連れていけ」
「「「はっ」」」
力なく座り込んでいた側妃と王女が無理やり立たされて連れて行かれる。
残されたのは帝王とイザーク、私とレオナだけになった。
「ねぇ、レオナ。鑑定って父親の名前もわかるの?」
「いいえ、わからないわ」
「え?でも、どうして王女の父親がわかったの?」
「……フェルナンディの魔力は知っていたからね。
知っている者の魔力や竜気であれば血縁関係もわかるの」
「そっか。じゃあ、私の父親はわからないんだ」
ちょっとだけ気になっていた。
鑑定で父親の名前がわかるのなら、私の父親もわかるんじゃないかって。
でも、実際にはそんな簡単にはわからないみたい。
「知りたかった?」
「ううん。ちょっと聞いてみたかっただけ」
後宮にいたころの私なら、きっと父親がわかったら殺しに行っただろう。
それは紛れもなく、お母様を汚した証なのだから。
そう思っていることに気がついたのか、イザークが頬を撫でてくる。
「ラディアの父親が誰なのか調べればわかるだろう。
その時は俺が手を下してやる。
だから、もうラディアはそんなことをしなくていい」
「イザーク。でも」
「もう無理に頑張らなくていい。ほら、怖かったのだろう」
「ん」
抱きしめられて頭や髪を撫でられているうちに、ようやく気持ちが落ち着いていく。
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