あなたにはもう何も奪わせない

gacchi(がっち)

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15.再儀式が終わって

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授業中は廊下で待つジニーとは別れB教室に戻ると、
私たちの席の前にアマンダ様が立っているのが見えた。

こりもせず、ライオネル様に話しかけに来ているらしい。
アマンダ様は背中を向けていて、
私が教室に戻ってきたことに気がついていない。

気がつかれないようにこっそり近づいたら、
アマンダ様は私の話をしているようだ。

「今頃はジュリア様とブリュノ様が喜んで手を取り合っている頃でしょう。
 ずっと私は気にしていたのです。
 二人のほうがお似合いなのにどうして仮婚約の相手が私だったのかと。
 ですから、ブリュノ様に正直に話して解消することにしたんです。
 ずっと前からジュリア様はブリュノ様を思っていたことを。
 ジュリア様から私はそのことを相談されていましたから」

多分、ライオネル様は話を聞かないで追い返そうとしていた。
だけど、私が来たのに気がついてアマンダ様の話を聞くことにしたらしい。
ちらっと私を見た時に口元が笑ったのが見えた。

私もそれに乗っかろうと思い、アマンダ様の真後ろへ立つ。
周りの子たちも気がついて、私へ話しかけないでくれていた。

「ずっとジュリア様の片想いでしたが、今日からは仮婚約の相手。
 もうライオネル様の案内役をつとめるのは無理でしょう。
 あぁ、ライオネル様もさすがに恋人同士の邪魔はしませんよね?
 一緒にあの二人が幸せになるのを願ってくれるでしょう」

「……それで?」

「ええ、ですので、仮婚約を解消して一人になった私が、
 ジュリア様の代わりにライオネル様の隣に座りますわ。
 案内役も任せてください。ジュリア様の代わりに役に立ってみせますから」

「そうか。だが、必要ないな」

「どうしてですか?案内役は必要でしょう?
 まさか仮婚約したジュリア様とブリュノ様、お二人にお願いすると?
 さすがにそれはやめておいた方がいいと思いますよ。
 ジュリア様だって嫌でしょうから」

もう、いいかな。
周りの子たちが笑いをこらえている気がする。そろそろ限界?

「私が嫌だって、何のこと?」

「え?……ジュリア様?」

「私の話をしていたようだけど、何の話かしら?」

「え、ええ。ジュリア様とブリュノ様の話よ。
 仮婚約の儀式は終わったの?ブリュノ様は?」

私が再儀式に参加すると信じていたのか、
アマンダ様は私の後ろにブリュノ様がいないのかと探す。

「ねぇ、アマンダ様、私があなたに相談なんてしたことあったかしら?」

「え、ええ?何を言っているの?
 あ、ああ、ごめんね。あれは内緒の話だったわね」

あくまで友人だと言い張るのであれば、いいかな。

「私、アマンダ様とはそれほど仲が良くなかったでしょう?」

「まぁ、そんな悲しいことを言うなんて。
 ずっと親友だったでしょう?
 ブリュノ様のことがあったからってそんなこと言わないで」

「ブリュノ様?私は別にブリュノ様のことで怒っているわけじゃないわ。
 いつ、私たちが仲良くなったっていうの?」

みんなが見ている前で詰め寄ったからか、
アマンダ様は動揺して目をそらした。
また何か言い訳を考えているんだろうけど、そんな時間は与えない。

「一度もお互いの家に遊びに行ったこともなければ、
 カフェテリアの個室でお茶したこともなく、
 お手紙を出し合ったことすらないのに、どうやってアマンダ様に相談するの?」

「え……それは」

「私と友人だなんて嘘をつくのはやめてほしいわ」

「そんな嘘だなんて……私は仲良しだと思っていたのに」

まずいと思ったのか、アマンダ様の目に涙がたまる。
泣いて同情させようというのだろうけど、この教室では無理だ。
あのお茶会にいた嫡子の令嬢たちなのだ。
当然、仮婚約した相手の令息にも事情は説明しているだろう。

可愛らしいアマンダ様の頬を涙が伝う。
これだけ見たらかわいそうに見えるだろうけど、誰も声をあげない。

「もうこれ以上は嘘をつくのはやめてね。
 私は仮婚約の再儀式には参加しなかったわ」

「え?」

「だから、ライオネル様の案内役を代わる必要もないの。
 わかったら自分の席に戻ってちょうだい」

「……どういうことよ」

「そのままの意味よ。私はブリュノ様と仮婚約する気はないの。
 そこをどいてちょうだい。自習するのに邪魔だわ」

「……っ」

アマンダ様はライオネル様に助けを求めるように見たけれど、
ライオネル様は興味なさそうに教科書を見ていた。
それを見て、さすがに助けを求められなかったのか、
アマンダ様は目に涙をためたまま教室から出て行った。

「おかえり、意外と遅かったな」

「うん、ちょっといろいろとあって。ずっとアマンダ様にからまれていたの?」

「いや、ジュリアが戻ってくる少し前だ。
 来ると思っていたが、強烈だったな」

「来ると思ってたの?」

「ああ、俺が一人でいれば話しかけに来るだろう?」

「どうしてジニーを私につけたのよ」

「この教室内なら話しかけられても問題ないだろうと思った。
 それよりも俺が冷たくあしらった後、ジュリアに何かしに行くのが怖かったんだ」

「あ……」

そっか。私が戻ってくるのがもう少し遅かったら、
ライオネル様は容赦なく冷たく断ったはずだ。
その怒りはきっと私へと向かってきただろう。
教室に向かう途中を待ち伏せされたら、何をされていたかわからない。

「ちゃんと考えてジニーをつけてくれたのね。ありがとう」

「いいよ。これでもう再儀式はないはずだな?」

「ええ」

「じゃあ、今日からまた案内役よろしく頼むよ」

「ふふ。もちろん!」

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