49 / 56
49.見えた希望(アマンダ)
しおりを挟む
「あら、もうこんな時間?そろそろ寝ましょうか。
今日の話も面白かったわ。ねぇ?」
「ええ、そうね。すごくよかったわ。
あの女がそこまでひどいとは思わなかったもの。
おとなしそうな顔に私たちも騙されるところだったわ。
また聞かせてちょうだいね」
「はい、ルミリア様、ブランカ様」
ジュリアについて話を聞かせろと、
毎晩のように宿の部屋に呼び出されていたが、これも今日が最後。
明日にはジョルダリ国に着く予定だ。
二人はライオネル様の妃になろうとしているらしく、
邪魔になるジュリアのことを聞きたがった。
特に、他人には言えないようなジュリアの悪癖を。
どれだけジュリアが人から嫌われてきたか、
裏でやってきた悪行を聞かせてやると、
ルミリアとブランカは令嬢らしくない顔で笑う。
そんな女ならライオネル様の妃になんてなれるわけがない。
どちらが選ばれても恨みっこなし、協力しましょう、
なんて約束を取り付けているのだからおかしくて仕方ない。
ジュリアに悪癖なんてものはない。
だが、そんなことは関係ない。
私が言えばそれが本当になる。
学園で同級生だった、ということが証明になるからだ。
こんなことが証明になるなんて馬鹿みたいだと思うが、
これが貴族社会ということなのだろう。
平民でも優秀な才能があれば学園に通うことができるが、
そのためには後ろ盾となる貴族家が必要になる。
つまり、平民だと思われている私がジュリアの悪口を言うというのは、
後ろ盾を無くてしてもいいと思うほどひどかったということなのだ。
貴族から見れば、それほどの覚悟で話すのであれば、
これは間違いなく本当のことだと思うらしい。
この二人はジョルダリに戻った後、社交界で話すつもりでいる。
ライオネル様の婚約者について、同級生がこんなことを話してくれた。
平民だが、ジュリアという令嬢の悪癖に困らされていたらしい、と。
私が話したことは全部嘘だが、
高位貴族の二人が話せばあっという間に真実として広がる。
ジュリアがジョルダリに来ることには、
もう取り返しのつかないことになっているに違いない。
本当にこの二人は私が思うように動いてくれる。
これほどまで役に立ってくれるとは思わなかったけれど。
ジョルダリに入国した後は、
ルミリアの侍女であることを利用して、
動ける範囲を広げていこうと思っていたが、
その前にルミリアから面白い提案がされた。
「アマンダの後ろ盾はもうないのよね?」
「はい。学園でジュリアに従わなかったことで、
後ろ盾を無くしてしまいましたから」
「まぁ……それは可哀そうに。
では、どこか貴族家の養子に入る気はない?」
「養子ですか?」
突然、貴族家の養子にならないかと誘われ、
何を企んでいるのかと思ったが、微笑んで話を聞く。
「後ろ盾もない平民だと王宮に連れていけないのよね。
アマンダを王妃のヴァイオレット様にも会わせたいのよ。
王女のマリリアナ様にも。
あの女の話を聞かせてあげたいから」
「王宮ですか。たしかに平民の私では難しいですね」
「だから、どこかの養女になればいいと思って。
ねぇ、ブランカ。ちょうどいい家はないかしら」
「うちの分家の男爵家なら受け入れると思いますわ。
お父様は王妃様に気に入られるためなら何でもしますもの」
「じゃあ、頼んだわ」
「ええ、お任せください」
「アマンダも、もう下がっていいわ」
「わかりました。失礼いたします」
養女になると承諾してもいないのに、勝手に話が決まる。
それが面白くなかったが、何も言わずに部屋から出る。
まぁいい。どこかの貴族家の養子になるのは私も考えていたことだ。
イマルシェ伯爵家の商会のつながりで探すかと思っていたけれど、
下手なことをすればロベルトに捕まってしまうかもしれない。
男爵家でも、ジョルダリの貴族になってしまえば、
ロベルトでも手を出せなくなる。
最初は男爵家でも貴族は貴族だ。
少しずつジョルダリ国での知り合いを増やし、力をつける。
ジュリアを貶め、あの立場を、すべてを奪い返してみせる。
この旅で唯一の心配は、外交官のハルナジ伯爵だった。
直接会ったことはないため、顔でバレる心配はない。
だが、ジュリアが何かよけいなことを吹き込んでいるかもしれない。
ルミリアとブランカには、
私が筆頭伯爵家の令嬢だったことは話していない。
さすがに平民落ちしていると知れば、関りを持ちたくないと思うだろう。
それよりも、見下される可能性が高い。
同じような貴族令嬢だったのに、今は平民の侍女。
あの性格の悪い二人がそのことを知れば、
私を見下して遊ぶに違いない。
いくら利用価値があるとはいえ、
見下されてまで侍女の仕事にしがみつく気にはなれない。
自分の立場を強固なものにするまでは、
ハルナジ伯爵には近づかないほうがいい。
だが、ハルナジ伯爵は私にというよりも、
ルミリアやブランカに関わろうとしなかった。
馬車の列が乱れないように部下に監視させているだけで、
ハルナジ伯爵の馬車は少し離れて動いているようだ。
おかげで旅の間はハルナジ伯爵の顔を見ていない。
これならば何も心配する必要はない。
明日になれば、ジョルダリに行けばすべてが変わる。
ルミリアとブランカの部屋を出て、自分の部屋へと戻る。
使用人に用意された宿の部屋は寝台が硬くて、変なにおいがする。
こんな場所は私にふさわしくない。
早く平民の生活から抜け出さなくては。
今日の話も面白かったわ。ねぇ?」
「ええ、そうね。すごくよかったわ。
あの女がそこまでひどいとは思わなかったもの。
おとなしそうな顔に私たちも騙されるところだったわ。
また聞かせてちょうだいね」
「はい、ルミリア様、ブランカ様」
ジュリアについて話を聞かせろと、
毎晩のように宿の部屋に呼び出されていたが、これも今日が最後。
明日にはジョルダリ国に着く予定だ。
二人はライオネル様の妃になろうとしているらしく、
邪魔になるジュリアのことを聞きたがった。
特に、他人には言えないようなジュリアの悪癖を。
どれだけジュリアが人から嫌われてきたか、
裏でやってきた悪行を聞かせてやると、
ルミリアとブランカは令嬢らしくない顔で笑う。
そんな女ならライオネル様の妃になんてなれるわけがない。
どちらが選ばれても恨みっこなし、協力しましょう、
なんて約束を取り付けているのだからおかしくて仕方ない。
ジュリアに悪癖なんてものはない。
だが、そんなことは関係ない。
私が言えばそれが本当になる。
学園で同級生だった、ということが証明になるからだ。
こんなことが証明になるなんて馬鹿みたいだと思うが、
これが貴族社会ということなのだろう。
平民でも優秀な才能があれば学園に通うことができるが、
そのためには後ろ盾となる貴族家が必要になる。
つまり、平民だと思われている私がジュリアの悪口を言うというのは、
後ろ盾を無くてしてもいいと思うほどひどかったということなのだ。
貴族から見れば、それほどの覚悟で話すのであれば、
これは間違いなく本当のことだと思うらしい。
この二人はジョルダリに戻った後、社交界で話すつもりでいる。
ライオネル様の婚約者について、同級生がこんなことを話してくれた。
平民だが、ジュリアという令嬢の悪癖に困らされていたらしい、と。
私が話したことは全部嘘だが、
高位貴族の二人が話せばあっという間に真実として広がる。
ジュリアがジョルダリに来ることには、
もう取り返しのつかないことになっているに違いない。
本当にこの二人は私が思うように動いてくれる。
これほどまで役に立ってくれるとは思わなかったけれど。
ジョルダリに入国した後は、
ルミリアの侍女であることを利用して、
動ける範囲を広げていこうと思っていたが、
その前にルミリアから面白い提案がされた。
「アマンダの後ろ盾はもうないのよね?」
「はい。学園でジュリアに従わなかったことで、
後ろ盾を無くしてしまいましたから」
「まぁ……それは可哀そうに。
では、どこか貴族家の養子に入る気はない?」
「養子ですか?」
突然、貴族家の養子にならないかと誘われ、
何を企んでいるのかと思ったが、微笑んで話を聞く。
「後ろ盾もない平民だと王宮に連れていけないのよね。
アマンダを王妃のヴァイオレット様にも会わせたいのよ。
王女のマリリアナ様にも。
あの女の話を聞かせてあげたいから」
「王宮ですか。たしかに平民の私では難しいですね」
「だから、どこかの養女になればいいと思って。
ねぇ、ブランカ。ちょうどいい家はないかしら」
「うちの分家の男爵家なら受け入れると思いますわ。
お父様は王妃様に気に入られるためなら何でもしますもの」
「じゃあ、頼んだわ」
「ええ、お任せください」
「アマンダも、もう下がっていいわ」
「わかりました。失礼いたします」
養女になると承諾してもいないのに、勝手に話が決まる。
それが面白くなかったが、何も言わずに部屋から出る。
まぁいい。どこかの貴族家の養子になるのは私も考えていたことだ。
イマルシェ伯爵家の商会のつながりで探すかと思っていたけれど、
下手なことをすればロベルトに捕まってしまうかもしれない。
男爵家でも、ジョルダリの貴族になってしまえば、
ロベルトでも手を出せなくなる。
最初は男爵家でも貴族は貴族だ。
少しずつジョルダリ国での知り合いを増やし、力をつける。
ジュリアを貶め、あの立場を、すべてを奪い返してみせる。
この旅で唯一の心配は、外交官のハルナジ伯爵だった。
直接会ったことはないため、顔でバレる心配はない。
だが、ジュリアが何かよけいなことを吹き込んでいるかもしれない。
ルミリアとブランカには、
私が筆頭伯爵家の令嬢だったことは話していない。
さすがに平民落ちしていると知れば、関りを持ちたくないと思うだろう。
それよりも、見下される可能性が高い。
同じような貴族令嬢だったのに、今は平民の侍女。
あの性格の悪い二人がそのことを知れば、
私を見下して遊ぶに違いない。
いくら利用価値があるとはいえ、
見下されてまで侍女の仕事にしがみつく気にはなれない。
自分の立場を強固なものにするまでは、
ハルナジ伯爵には近づかないほうがいい。
だが、ハルナジ伯爵は私にというよりも、
ルミリアやブランカに関わろうとしなかった。
馬車の列が乱れないように部下に監視させているだけで、
ハルナジ伯爵の馬車は少し離れて動いているようだ。
おかげで旅の間はハルナジ伯爵の顔を見ていない。
これならば何も心配する必要はない。
明日になれば、ジョルダリに行けばすべてが変わる。
ルミリアとブランカの部屋を出て、自分の部屋へと戻る。
使用人に用意された宿の部屋は寝台が硬くて、変なにおいがする。
こんな場所は私にふさわしくない。
早く平民の生活から抜け出さなくては。
2,064
あなたにおすすめの小説
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました
ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、
ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。
理由はただ一つ――
「平民出身の聖女と婚約するため」。
だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。
シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。
ただ静かに席を立っただけ。
それだけで――
王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、
王国最大の商会は資金提供を打ち切り、
王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。
一方シャウラは、何もしていない。
復讐もしない。断罪もしない。
平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。
そして王国は、
“王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、
聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。
誰かを裁くことなく、
誰かを蹴落とすことなく、
ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。
これは、
婚約破棄から始まる――
静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。
「私は何もしていませんわ」
それが、最強の勝利だった。
【完結】真実の愛に気付いたと言われてしまったのですが
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済みです!!!】
かつて王国の誇りとされた名家の令嬢レティシア。王太子の婚約者として誰もが認める存在だった彼女は、ある日、突然の“婚約破棄”を言い渡される。
――理由は、「真実の愛に気づいてしまった」。
その一言と共に、王家との長年の絆は踏みにじられ、彼女の名誉は地に落ちる。だが、沈黙の奥底に宿っていたのは、誇り高き家の決意と、彼女自身の冷ややかな覚悟だった。
動揺する貴族たち、混乱する政権。やがて、ノーグレイブ家は“ある宣言”をもって王政と決別し、秩序と理念を掲げて、新たな自治の道を歩み出す。
一方、王宮では裏切りの余波が波紋を広げ、王太子は“責任”という言葉の意味と向き合わざるを得なくなる。崩れゆく信頼と、見限られる権威。
そして、動き出したノーグレイブ家の中心には、再び立ち上がったレティシアの姿があった。
※日常パートとシリアスパートを交互に挟む予定です。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる