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ジョージアという魔術師
39.命がけ
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今日も陛下の所でお茶をしたら公爵家に行く予定だった。マリーを医術士局まで送り届け、謁見室に向かっているところで、白い鳥が飛びこんできた。ジョセフから声を伝える魔術だった。
「レイフィア様が痛み始めたと言ってます。」
「っ!わかった!すぐ行くって言って!」
産気づいたのか、異常が起きたのか、マリーに見てもらわなければいけない。もう臨月だし、生まれてもおかしくはないけれど、油断はできなかった。
謁見室まで走り、陛下に今日のお茶は無しでと伝えると、状況がわかったのだろう。明日も休みで良いと言われた。
通りがかった文官に馬車の準備を急いでするように伝言を頼み、医術士局に戻る。ガラッと音をたてて扉を開けるとリリアさんに驚かれた。
「ジョージア様、どうかしたの?」
「急いで公爵家に向かいます。マリー、準備して!」
「はい!」
「リリアさん、後でまた連絡しますが、
この後俺とマリーは医術士局に戻ってこれない可能性が高いです。
いない間頼みます。何かあれば公爵家のジョセフに連絡ください。」
「わかったわ。後は心配しないで、いってらっしゃい!」
「準備できました!」
「よし、行こう。じゃあ、行ってきます。」
急いで馬車乗り場に行くと、先ほどお願いした文官が馬車を用意してくれていた。
「伝言だけでも良かったんだが、助かる。ありがとう。」
「いいえ、お気をつけて!」
おそらく公爵家の話は文官にも伝わっていたんだろう。この後、俺は夜間王宮にいないことになる。その間の護衛の配置を考えるのも文官の仕事だからだ。
好意をありがたく受け取って、馬車に乗ると、すぐにマリーからいくつか注意を受けた。
「いいですか?出産中は絶対に部屋に入ってこないでください。
特に、赤ちゃんの泣き声が聞こえたからって、すぐに入ろうとしちゃダメです。」
「え?ダメなの?」
「ダメです。レイフィア様に嫌われますよ?
いいですか?出産は子どもを産んで、ハイおしまいじゃないんです。
その後の母体の処置も大事なんです。レイフィア様の命がかかってるんです。
私が終わったから入って大丈夫だと呼ぶまで、絶対に入ろうとしないでください。
こっちはそれどころじゃないので、邪魔しないでくださいね?」
真剣な顔で説明されて、これは本気で聞かないとダメなやつだと感じた。
そう言えば子供の頃、母親がレイフィアを出産した時に、入ろうとして侍女に止められた気がする。あれはそういうことだったのか。
「わかった。絶対にマリーが良いよって言うまで入らない。
約束する。レオンハルト殿も止める。
だから、集中してくれて大丈夫だから。」
「わかりました。母子ともに大事な時間なので、
入る入っちゃダメのやり取りしている時間が無いんです。
レオンハルト様の説得も任せましたからね?」
「うん。レイフィアと子どもたちを頼んだ。
マリーなら大丈夫だと信じている。」
「ええ。任されました。」
公爵家に着いて部屋に入ると、レイフィアの近くに刺繍されたものが置いてあった。こんな時まで刺繍していたのかと小言を言いたくもなるが、レオンハルト殿が真っ青な顔しているのを見て、あぁ止められなかったんだなと思う。
本当にダメだったらレオンハルト殿が止めているだろう。
「レイフィア様、そろそろ本格的な陣痛がきます。
すぐ用意しますね。
お二人は別室に移動してもらえますか?」
レオンハルト殿は移動するのが嫌そうだったが、マリーの有無を言わせない雰囲気に黙って移動する。
ここぞという時の迫力というか、仕事にかける情熱は人一倍のマリーだ。レオンハルト殿でも逆らえないようだ。
「レイフィア、隣の部屋にいるからね。
何かあれば呼んで?すぐに来るよ。」
「大丈夫、…がんばるから待ってて…。」
もう話すのも辛そうなレイフィアに声をかけるのもためらって、そのまま別室に移動した。
俺もレオンハルト殿も落ち着くことができず、座らずに部屋の中を行ったり来たりしていた。
たまに様子を見に来るジョセフには座るように言われたが、座ってもちっとも落ち着かず、結局また立って歩いてしまっている。
「レイフィア様が痛み始めたと言ってます。」
「っ!わかった!すぐ行くって言って!」
産気づいたのか、異常が起きたのか、マリーに見てもらわなければいけない。もう臨月だし、生まれてもおかしくはないけれど、油断はできなかった。
謁見室まで走り、陛下に今日のお茶は無しでと伝えると、状況がわかったのだろう。明日も休みで良いと言われた。
通りがかった文官に馬車の準備を急いでするように伝言を頼み、医術士局に戻る。ガラッと音をたてて扉を開けるとリリアさんに驚かれた。
「ジョージア様、どうかしたの?」
「急いで公爵家に向かいます。マリー、準備して!」
「はい!」
「リリアさん、後でまた連絡しますが、
この後俺とマリーは医術士局に戻ってこれない可能性が高いです。
いない間頼みます。何かあれば公爵家のジョセフに連絡ください。」
「わかったわ。後は心配しないで、いってらっしゃい!」
「準備できました!」
「よし、行こう。じゃあ、行ってきます。」
急いで馬車乗り場に行くと、先ほどお願いした文官が馬車を用意してくれていた。
「伝言だけでも良かったんだが、助かる。ありがとう。」
「いいえ、お気をつけて!」
おそらく公爵家の話は文官にも伝わっていたんだろう。この後、俺は夜間王宮にいないことになる。その間の護衛の配置を考えるのも文官の仕事だからだ。
好意をありがたく受け取って、馬車に乗ると、すぐにマリーからいくつか注意を受けた。
「いいですか?出産中は絶対に部屋に入ってこないでください。
特に、赤ちゃんの泣き声が聞こえたからって、すぐに入ろうとしちゃダメです。」
「え?ダメなの?」
「ダメです。レイフィア様に嫌われますよ?
いいですか?出産は子どもを産んで、ハイおしまいじゃないんです。
その後の母体の処置も大事なんです。レイフィア様の命がかかってるんです。
私が終わったから入って大丈夫だと呼ぶまで、絶対に入ろうとしないでください。
こっちはそれどころじゃないので、邪魔しないでくださいね?」
真剣な顔で説明されて、これは本気で聞かないとダメなやつだと感じた。
そう言えば子供の頃、母親がレイフィアを出産した時に、入ろうとして侍女に止められた気がする。あれはそういうことだったのか。
「わかった。絶対にマリーが良いよって言うまで入らない。
約束する。レオンハルト殿も止める。
だから、集中してくれて大丈夫だから。」
「わかりました。母子ともに大事な時間なので、
入る入っちゃダメのやり取りしている時間が無いんです。
レオンハルト様の説得も任せましたからね?」
「うん。レイフィアと子どもたちを頼んだ。
マリーなら大丈夫だと信じている。」
「ええ。任されました。」
公爵家に着いて部屋に入ると、レイフィアの近くに刺繍されたものが置いてあった。こんな時まで刺繍していたのかと小言を言いたくもなるが、レオンハルト殿が真っ青な顔しているのを見て、あぁ止められなかったんだなと思う。
本当にダメだったらレオンハルト殿が止めているだろう。
「レイフィア様、そろそろ本格的な陣痛がきます。
すぐ用意しますね。
お二人は別室に移動してもらえますか?」
レオンハルト殿は移動するのが嫌そうだったが、マリーの有無を言わせない雰囲気に黙って移動する。
ここぞという時の迫力というか、仕事にかける情熱は人一倍のマリーだ。レオンハルト殿でも逆らえないようだ。
「レイフィア、隣の部屋にいるからね。
何かあれば呼んで?すぐに来るよ。」
「大丈夫、…がんばるから待ってて…。」
もう話すのも辛そうなレイフィアに声をかけるのもためらって、そのまま別室に移動した。
俺もレオンハルト殿も落ち着くことができず、座らずに部屋の中を行ったり来たりしていた。
たまに様子を見に来るジョセフには座るように言われたが、座ってもちっとも落ち着かず、結局また立って歩いてしまっている。
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