王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

文字の大きさ
35 / 167

34.ロードンナ国

しおりを挟む
「わ。ちょっとリリー怒らないで…。
 わかったよ、話すけど、気分のいい話じゃないから黙ってたかったんだよ。」

「私の話なの?」

「リリーの話でもある。
 あの夜、出かけてたって言っただろう?
 ジョエルと会ってたんだ。
 向こうから非公式の話がしたいと呼び出されて。」

「ジョエルが?来ていたの?
 それがどうして言えない話?」

レオが大きくため息をついた。そんなに嫌な話なのかな。
思わず、姿勢を直して、気持ちを引き締める。

「あの魅了の話、うちの国ではなかったことになってるだろう?
 だけど、ロードンナ国ではきちんと記録されているんだ。
 ジョエルが報告していたらしい。
 うちの国の話ではあるが、魅了については他の国への影響も大きい。
 王太子のジョエルが報告しないわけにはいかない、それは仕方ない。
 ただ、魅了を封じたのがリリーだってことも知られてしまっているんだ。」

「でもその話は4年も前の話よね。どうして今になって関係するの?」

「4年過ぎたからだよ。
 ロードンナ国の議会は、
 ずっとリリーをロードンナ国の王太子妃として狙っていた。
 だから、4年も子どもが生まれないことで離縁されるのを期待したんだ。
 俺は王弟だろう?妻は一人しか娶れない。
 子どもが生まれなければ離縁するだろうと議会がそう判断したらしい。
 ロードンナ国では、身分も大事だが、それ以上に魔術師は大事にされる。
 侯爵家令嬢で魔術師、その上魅了を封じる力まで持っている。
 おまけにここ2年は王妃の仕事まで立派にこなしていた。
 ジョエルの正妃として迎えてはどうかと、議会が決めたらしい。」

子どもが生まれないから、離縁…。
そうよね、普通なら4年も生まれなかったら、できないと思われても仕方ない。
妻を一人しか娶れない王弟なら、離縁させられるわよね。
どうして気が付かなかったんだろう…。

「リリー?リリー!落ち着いて、大丈夫だから。
 もし一生子供が出来なくても、俺にはリリーだけだから!」

考え込んで自分の世界に入り込んでしまった私を、
焦ったレオが必死で戻そうとする。
頬を両手で包みこまれて、真剣な目で見つめられる。
ゆっくり息を整えて、レオの言葉をかみしめた。

「うん、わかった。もう大丈夫だから、話して?」


「ああ、それでジョエルだって、そんなことを本気で思ってるわけじゃない。
 だけど王太子としては議会の決定を無視するわけにはいかない。
 だから俺にこっそり会いに来たんだ。議会からの手紙を持って。
 俺たちに離縁する意思が無いってわかれば、
 同盟国だしそれ以上のことは考えないだろうからと、
 俺に議会への返事を書くように頼まれたんだよ。

 でも、こんな話したら、リリーだって嫌だろう?
 俺はすごく嫌だった。
 ジョエルにその気がないってわかってたけど、それでも嫌だった。
 リリーが誰かの横にたつなんて、想像するだけでも嫌なんだ。
 リリーがそれを想像するだろうと思って、話をするのも嫌だった。
 こんな我がままで内緒にして動いたせいで、こんなことになったんだ。
 本当にごめん。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。

クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」 平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。 セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。 結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。 夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。 セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。 夫には愛人がいた。 愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される… 誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」  大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。  けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。  王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。  婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。  だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

処理中です...