王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

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3章 将軍っていらないよね

7.それ聞く?

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「いくらなんでも4年も避妊薬飲まされていて気が付かないって、
 間抜けすぎるでしょう?だから子供ができないんだわ。
 レオルド様がお可哀そうすぎる。
 そんな妻なんて、変えてしまえばいいのよ。」

あぁ、またか。俺とリリーが婚約した頃、侯爵家に挨拶に行ったことがあった。
妹が一人いて、仲が良くないとは聞いていたが、
まさか初対面で婚約者を変えろと言われるとは思わなかった。

「私のほうがレオルド様に相応しいわ。
 だって、王家の色を持っているんだし、若いし。
 私なら子を生んでさしあげられるわ!」

こういう理由だったな…と脱力する。
リリーと仲が悪いのも納得する。リリーは貴族らしい考え方をしない。
自分の髪が銀髪だから、妹に負けるとは思っていない。
だけど、妹のほうは髪の色一つで姉に勝てると思い込んでいる。
話がかみ合うわけがない。

「今度、お父様のほうから伝えてもらいましょう。
 それがいいわ。レオルド様もお喜びになるでしょう。」

あーもう限界だ。残っていたチーズパイを飲み込んでしまう。
席を立って、ずかずかとアンジェリーナの席の前に立つ。

「なんだ、お前は!」

アンジェリーナの周りにいた令息が3人立ち上がって、
突然現れた俺からアンジェリーナを守ろうとする。
それを無視して、変化を解いた。
令息たちが驚きで動きが止まったのが見えた。
次の瞬間、その令息たちを押しのけてアンジェリーナが前に出てきた。

「レオルド様!お会いしたかったです!
 え?私に会いに来てくれたんですか!?
 もしかして、やっぱり私が良いって、迎えに来てくれたとか!?」

もう殴っていいかなと思うけど、何とか我慢して、冷静に伝えようとする。

「アンジェリーナ、その勘違い、まだしてたんだな。」

「勘違いですか?」

心底わからないと言った感じで首をかしげている。

「俺は侯爵家と縁を結びたくてリリーと結婚したわけじゃない。
 リリーだから選んで結婚したんだ。子どもなんてどうでもいい。
 別れることなんて一生ないし、
 アンジェリーナと結婚しなおす可能性は全くない。」


「え?」

何を言われたのか理解できないって顔してる。
聞きたくないことは聞かないふりするんだよな…
いや、本当に聞こえてないかもしれないな。

「俺は金髪なんて好きじゃない。王家の血も必要じゃない。
 貴族らしさとかホントどうでもいい。
 優秀で可愛いリリーがいれば、他の令嬢なんて全部どうでもいい。」


「…どうでもいい。」

これは聞こえたようだ。ふるふると震えているのは怒りか?
よろけたところを支えた令息が思わずといった感じで声を上げる。

「どうしてですか?アンジェリーナ様のどこがダメなんですか?
 リリーアンヌ様じゃなくてもいいじゃないですか。」

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