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3章 将軍っていらないよね

6.懲りない人

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…嫌な令嬢が来たな。
リリーの妹のアンジェリーナだった。

同じ両親から生まれたというのに、ちっとも似ていない。
リリーが銀髪緑目なのに対して、アンジェリーナは金髪碧眼だった。
リリーたちの祖母が公爵家に降嫁した王女なので、
王家由来の金髪を受け継いだアンジェリーナは大事に育てられている。
リリーが銀髪なのは、降嫁した先の公爵家特有の色だ。
公爵家生まれだが茶髪だったことで評価があまり高くなかった母親が、
侯爵家当主で茶髪の父親のところに嫁いでいる。
娘は二人とも両親に似なかったが、末の娘が王家特有の色を持って生まれたことで、
親子の力関係がいびつなものになっていた。

リリーが生まれた時に銀髪だったことが、
茶髪だった夫妻の劣等感を刺激してしまったのだろう。
親としての必要最低限のことすら関わらずに、
リリーはシーナとシオンに育てられたようなものだ。
その後両親との亀裂は妹が金髪で生まれたことで確実なものになった。
侯爵家はアンジェリーナ至上主義というか、妹のために存在する家になった。

確かに、王家以外に生まれた金髪の令嬢を求める家は多い。
おそらく兄貴が側妃を選ぶ際には候補に上がってくるだろう。
ただし、姉のリリーが俺と結婚していることから、
実際にはアンジェリーナが選ばれることはないと思っている。
一つの侯爵家から王家に2人も同時に嫁いだら、
貴族間の力関係を歪めてしまうだろう。それを他家は黙っていない。

本人はそれを理解しているのかいないのか、まだ婚約者を決めていないようだ。
リリーとは仲が悪くほとんど会うこともないが、
会えばいつもアンジェリーナがリリーに食って掛かってる印象しかない。

「もう、さっきのアンヌ様、最悪じゃなかった?
 何あの護衛たち。あれって軍人じゃないの?」


どうやら、アンヌ嬢に会ったらしい。
アンジェリーナの周りにいる令息たちが、
慌ててアンジェリーナのご機嫌をとろうとする。
周りの令息たちは取り巻きだろうか。
今年学園に入ったそうだから、学園内で出会った令息なのだろう。
同じ学園にいたはずの俺が顔を知らないということは、
俺たちが卒業した後で入学した令息たちだと思われる。

アンヌ嬢について他にも話さないかと聞き耳を立てているが、
会話がどんどん流れて行って、なかなかアンヌ嬢の話にはならなかった。

「お姉さまがいけないのよ。」

話題がリリーの話になり、思わずそちらを向きそうになる。
ショーンの姿を借りてるとはいえ、不審な態度になってはまずい。
落ち着いて話を聞こうと紅茶を一口飲む。

「いくらなんでも4年も避妊薬飲まされていて気が付かないって、
 間抜けすぎるでしょう?だから子供ができないんだわ。
 レオルド様がお可哀そうすぎる。
 そんな妻なんて、変えてしまえばいいのよ。」
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