王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

文字の大きさ
126 / 167
6章 つながる世界

4.女の闘い

しおりを挟む
「あら、聞き捨てならないわ?
 リオル様が従弟でレイモンド様が弟だと、そこのものは言うのかしら?」

まさかのレミリアだった…あぁ、こいつが黙ってられないの忘れてたよ。

「エリザ王女に失礼だぞ!」

さきほどの令息が叫んだが、レミリアは表情を変えることなく告げた。

「この国の王女はミーシャ様だけです。
 エリザなどという王女はこの国にはいません。
 それは誰のことですの?」

「え?」

「確かに、昔いたジョセフィーヌという側妃が産んだ子がエリザと名を付けられましたが、
 その側妃は身分をはく奪され、同時にその側妃が産んだ王子と王女も廃嫡されました。
 以後生まれたものにエリザという王女はいません。
 で、誰のことですの?」

「…。」

「犯罪を犯して身分をはく奪された側妃の子を王女と呼ぶのは、反逆行為です。
 それをわかって、ここで王女と呼んでいるのなら、捕まってもおかしくないのよ?
 で、そこのものは名乗りなさい?あなたはどこの誰ですの?」

「…。」

ここで自分から名乗ることは出来ないだろう。エリザには家名が無い。
もちろん王女ではないので、国名を名乗ることもできない。今ここで名乗ったら、間違いなく捕まる。王族がいる前で偽証したことになるのだから。
それをわかっているのだろう…エリザは悔しそうに唇をかむと、涙をこらえた表情で去って行った。
周りの令息たちもそれを追いかけるように去って行った。


「レミリア…。」

「何よ。お兄様たちは話せないし、ジーンとブランじゃ無理だったでしょう?
 最悪、私は身分を明かせばすむことだし、問題なかったからいいじゃない。」

「お前の身分を明かしたら、父上や宰相の仕事が増えるんだぞ。
 こっちにもその影響が来るからやめろよ。」

「今のは仕方無かったでしょう?
 あきらめて帰ったみたいだからいいじゃない。」

「お前が攻撃されたらどうするんだよ。令息たちが睨んでたじゃないか。」

「…自分の身くらい自分で守れるもの。困ったらシオン呼ぶし。」

「はぁぁぁぁ。俺がシオンに怒られんだろうが。」

「まぁまぁ、今日のことは俺から宰相に報告しておくよ。
 まさかこんな手で来るとは思わなかったけど。
 ちょっとまずいな。」

「そうだな。」

いくらこれがエリザの暴走で、礼儀知らずだということが事実であっても、俺と従兄弟、レイモンドと姉弟というのは本当のことだ。
それを言い訳に使われて交流したかったと言われると厳罰にすることができない。
下手に厳罰にすると同情する者が出てくるからだ。
今までは直接じゃなかったからよかったが、か弱い令嬢を装ってこられると周りの目が厳しくなるのがわかる。まいったな…。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。  読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。 「私は君を愛することはないだろう。  しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。  これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」  結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。  この人は何を言っているのかしら?  そんなことは言われなくても分かっている。  私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。  私も貴方を愛さない……  侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。  そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。  記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。  この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。  それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。  そんな私は初夜を迎えることになる。  その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……    よくある記憶喪失の話です。  誤字脱字、申し訳ありません。  ご都合主義です。  

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」  大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。  けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。  王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。  婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。  だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。

処理中です...