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7章 新たな未来へ
4.宰相
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「あれ。宰相が帰って来てる。こんな時間にめずらしいね。」
授業が終わり、3人で帰ってきたら、
まだ夕方前なのに宰相がマジックハウスに帰っていた。
いつもなら夜遅くに帰ってくるか、宰相室に泊まったりしているのに。
テーブルでシーナと二人、話をしていたようだ。
「おかえりなさーい。ジーンとブランに用があって待ってたみたいよ。」
「う…。」「ヤな予感。」
「そういう顔するってことは、何かあったな。
王女と公爵令嬢のことを聞いたか。」
宰相がめずらしく素顔になっているのを見て、おやっと思う。
いつもなら宰相の姿は変化してわからないようにしているはずなのに。
白銀の髪に、緑に琥珀が入った瞳。
おそらく見る人が見れば、どこの国のものかわかるのだろう。
詳しく聞いたことは無かったが、他国から流れ着いた魔術師なのは知っていた。
「宰相、もしかして身分を公表するつもりなの?」
「その話もしようと思って来たんだが。
…なに、俺のこと知ってたの?」
「いや。聞いてないよ。
だけど、父上と対等で話せるのは知っていた。
人前ではそれを隠しているのも。
だから、何かあるんだろうとは思ってたよ。」
「…意外と見てたんだな~。さすが二人の子というべきか。
俺はレランガ国の元王族だよ。今のレランガ国王の叔父にあたる。
つまり、俺も王弟だった。
いろいろとあって、命を狙われて、この国に逃げてきた。
その時にレオルドに助けられたんだ。」
「レランガ国の元王族…。なるほど。
その髪と目が王家の色だから隠してたの?」
「そういうこと。
さすがにもう命を狙われることは無いと思うが…。
今のレランガ国の国王に子どもがいない。
俺以外の王族も生き残っていない。
つまり、ジーンとブランが最後の王族の生き残り。」
「「は?」」
あまりの話にジーンとブランの口が開けっ放しになる。
二人は宰相の身分を知らなかったようだ。
「どうやら、ジョエル国王に気がつかれたらしい。」
一瞬でこの話をした理由がわかってしまった。
ジョエル国王が、王女と公爵令嬢を留学させた理由も。
「…ジーンとブランを婚約させるつもりなのか?」
「いや、その気はない。
俺は…レランガ国の次の国王は王族じゃなくてもいいと思ってる。
ジーンとブランを連れて国に帰る気はない。
だけど、ジョエル国王にバレてしまったからには、この国にいるのも難しい。
ジーン、ブラン、学園に通うのはもう無理だ。」
「「…。」」
「…ちょっと待ってくれ。
学園を休むのは仕方ないし、姿を消すのも仕方ない。
だけど、この国から出ていくのはちょっと待ってくれないか?」
「リオル、少しでも情報が洩れたら、大変なのは陛下だよ。」
「…だけど、ジョエル国王が知ってるだけで、証拠はないはずだ。
宰相は素顔を人に見せていない。
今の状態なら、まだ大丈夫なんじゃないのか?」
「……わかった。とりあえず、俺とジーンとブランは姿を隠す。
王女と公爵令嬢があきらめて帰国して、安全だとわかるまでは。
それでいいか?」
「ああ、頼む。時間をくれ。
俺は…三人がいなくなるなんて嫌だ。
きっと父上もそうだと思う。だから、少し待ってくれ。」
「ジーンとブランもそれでいいな?」
「ああ。リオル…一人で大丈夫なのか?」
「俺たちがいない間…暴走しないって約束できるか?」
「…約束する。お前たちがいない間に無茶はしない。
俺が暴走したら、よけいにまずくなるだろう。」
「それならいい。無理するなよ。」
「で、俺たち三人…って。母さんは国を出る気は無いんだね…。」
「あら。私が姫さまを置いていくなんて、あるわけないじゃない~。」
「「こういう人だった…。」」
がっくりしているジーンとブランの肩に俺の手を片手ずつ乗せる。
守護の術をかけると、同じようにジーンとブランから俺の肩に手を乗せられて、
守護の術をかけ返される。
「大丈夫だよ。すぐに元通りになるさ。」
「ああ。」
「少しの間の我慢だな…。」
授業が終わり、3人で帰ってきたら、
まだ夕方前なのに宰相がマジックハウスに帰っていた。
いつもなら夜遅くに帰ってくるか、宰相室に泊まったりしているのに。
テーブルでシーナと二人、話をしていたようだ。
「おかえりなさーい。ジーンとブランに用があって待ってたみたいよ。」
「う…。」「ヤな予感。」
「そういう顔するってことは、何かあったな。
王女と公爵令嬢のことを聞いたか。」
宰相がめずらしく素顔になっているのを見て、おやっと思う。
いつもなら宰相の姿は変化してわからないようにしているはずなのに。
白銀の髪に、緑に琥珀が入った瞳。
おそらく見る人が見れば、どこの国のものかわかるのだろう。
詳しく聞いたことは無かったが、他国から流れ着いた魔術師なのは知っていた。
「宰相、もしかして身分を公表するつもりなの?」
「その話もしようと思って来たんだが。
…なに、俺のこと知ってたの?」
「いや。聞いてないよ。
だけど、父上と対等で話せるのは知っていた。
人前ではそれを隠しているのも。
だから、何かあるんだろうとは思ってたよ。」
「…意外と見てたんだな~。さすが二人の子というべきか。
俺はレランガ国の元王族だよ。今のレランガ国王の叔父にあたる。
つまり、俺も王弟だった。
いろいろとあって、命を狙われて、この国に逃げてきた。
その時にレオルドに助けられたんだ。」
「レランガ国の元王族…。なるほど。
その髪と目が王家の色だから隠してたの?」
「そういうこと。
さすがにもう命を狙われることは無いと思うが…。
今のレランガ国の国王に子どもがいない。
俺以外の王族も生き残っていない。
つまり、ジーンとブランが最後の王族の生き残り。」
「「は?」」
あまりの話にジーンとブランの口が開けっ放しになる。
二人は宰相の身分を知らなかったようだ。
「どうやら、ジョエル国王に気がつかれたらしい。」
一瞬でこの話をした理由がわかってしまった。
ジョエル国王が、王女と公爵令嬢を留学させた理由も。
「…ジーンとブランを婚約させるつもりなのか?」
「いや、その気はない。
俺は…レランガ国の次の国王は王族じゃなくてもいいと思ってる。
ジーンとブランを連れて国に帰る気はない。
だけど、ジョエル国王にバレてしまったからには、この国にいるのも難しい。
ジーン、ブラン、学園に通うのはもう無理だ。」
「「…。」」
「…ちょっと待ってくれ。
学園を休むのは仕方ないし、姿を消すのも仕方ない。
だけど、この国から出ていくのはちょっと待ってくれないか?」
「リオル、少しでも情報が洩れたら、大変なのは陛下だよ。」
「…だけど、ジョエル国王が知ってるだけで、証拠はないはずだ。
宰相は素顔を人に見せていない。
今の状態なら、まだ大丈夫なんじゃないのか?」
「……わかった。とりあえず、俺とジーンとブランは姿を隠す。
王女と公爵令嬢があきらめて帰国して、安全だとわかるまでは。
それでいいか?」
「ああ、頼む。時間をくれ。
俺は…三人がいなくなるなんて嫌だ。
きっと父上もそうだと思う。だから、少し待ってくれ。」
「ジーンとブランもそれでいいな?」
「ああ。リオル…一人で大丈夫なのか?」
「俺たちがいない間…暴走しないって約束できるか?」
「…約束する。お前たちがいない間に無茶はしない。
俺が暴走したら、よけいにまずくなるだろう。」
「それならいい。無理するなよ。」
「で、俺たち三人…って。母さんは国を出る気は無いんだね…。」
「あら。私が姫さまを置いていくなんて、あるわけないじゃない~。」
「「こういう人だった…。」」
がっくりしているジーンとブランの肩に俺の手を片手ずつ乗せる。
守護の術をかけると、同じようにジーンとブランから俺の肩に手を乗せられて、
守護の術をかけ返される。
「大丈夫だよ。すぐに元通りになるさ。」
「ああ。」
「少しの間の我慢だな…。」
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