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聖女の準備
1.今日から始まる
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キリルから受け取った魔力が私のものに変換できた日の朝は快晴だった。
部屋が明るくなったのを感じてベッドの中で目を覚ましたら、
隣で寝ているキリルとの間に一本の白い線が見えていた。
ふれようとしてもふれられない。
何度かつかもうとしていると、寝ていたはずのキリルに笑われる。
「つかめないよ、それ。見えるようになったんだね。」
「これ何?全然さわれないのに見えるの。」
「これがユウリと俺をつないでいる線。魔力の供給はここからしてた。
離れていても近くに居たら供給できるって言ってただろう。
それがこれ。」
「この線から?」
そういえば同じ部屋に居れば魔力の供給はできるって言ってた。
どうやって供給するのか考えていなかったけれど、こんな風につながっていたんだ。
うっすらと発光しているように見える白い線が目の前にあるのに、
どうやってもさわることができなくて何度か確かめてしまう。
「この線から供給してもいいんだけど、ユウリは魔力の器が大きいから、
この線だけで供給しようとするとすごく時間がかかる。
だから手をつないだり、一緒に寝たりしてたんだ。
ふれる面積が広いほど多く魔力を流せるから。」
「あぁ、そういうことだったんだ。
それならイメージしやすいかも。」
手をつないでいたほうが安心するのも、違うベッドで寝ると不安になるのも、
キリルの魔力の供給が減るからなのか。
自分はあまり喜怒哀楽がはっきりしたタイプじゃないと思っていたのに、
ここに来てからは気持ちが乱れてばかりだった。
こうして理由が目に見えてわかると安心する。
どこかおかしくなったわけじゃないって。
「ちゃんとこれが見えているってことはユウリの魔力が調ったってこと。
これで今日から修行が始められる。
さ、起きて着替えようか。」
「うん。」
ベッドから下りると二人で衣裳部屋へと向かう。
あれ以来毎朝二人で着る服を選んでいる。
と言っても、キリルがその日の予定にあわせて服を三着ほど持ってきて、
その中から私が一着を選んで着ている。
着替えた後、数分間鏡の前で自分の姿を確認しているけれど、
慣れる日が来るのかと思うくらい見慣れない。
鏡の中にいる美少女がこちらを見て、恥じらっているように見える。
…自分を見て恥じらうって。
それを後ろで笑っているキリルに軽く文句を言いながら朝ごはんを食べに行く。
そんな生活をここ三日送っていたけれど、今日の服は違っていた。
真っ白いワンピースを渡され、受け取ると不思議な感じがした。
「…?何かこの服いつもと違う気がする?」
「うん、修行用の服なんだ。」
「真っ白か…汚さないようにしないと。」
「着替えはいくらでもあるから、心配しなくていいよ。」
そういう問題じゃないんだけどなと思いながらキリルに着替えさせてもらう。
最初は動けるようになったんだし自分で着替えようとしたけれど、
ここの服にはボタンとかファスナーというものがない。
脱ぎ着するということがないから、そういうものが一切ないため、
自分で魔術を使えるようになるまでキリルに着替えさせてもらうしかなかった。
ボタンやファスナーが無い分、私の身体にフィットするようにできていて、
着心地は良いのだけど…やっぱり子供のようだと感じてしまう。
「やらなきゃいけないこと、たくさんあるな…。」
「あせらなくていいよ。」
「うん、わかってる。」
ここに来てから何度も言われているから、もう焦らないことにしている。
私はこの世界に戻ってきた時に生まれなおしたのだと。
まだ生まれて一月もたっていないのだから、お世話されるのも仕方ない。
地道に修行して、成長していくしかない。
「よし!がんばろう!」
両手を握りこんでいると、また笑っているキリルに片手を持っていかれる。
そのまま手をつなぐようにして衣裳部屋から出た。
「まずはご飯食べてからね。」
「はーい。」
部屋が明るくなったのを感じてベッドの中で目を覚ましたら、
隣で寝ているキリルとの間に一本の白い線が見えていた。
ふれようとしてもふれられない。
何度かつかもうとしていると、寝ていたはずのキリルに笑われる。
「つかめないよ、それ。見えるようになったんだね。」
「これ何?全然さわれないのに見えるの。」
「これがユウリと俺をつないでいる線。魔力の供給はここからしてた。
離れていても近くに居たら供給できるって言ってただろう。
それがこれ。」
「この線から?」
そういえば同じ部屋に居れば魔力の供給はできるって言ってた。
どうやって供給するのか考えていなかったけれど、こんな風につながっていたんだ。
うっすらと発光しているように見える白い線が目の前にあるのに、
どうやってもさわることができなくて何度か確かめてしまう。
「この線から供給してもいいんだけど、ユウリは魔力の器が大きいから、
この線だけで供給しようとするとすごく時間がかかる。
だから手をつないだり、一緒に寝たりしてたんだ。
ふれる面積が広いほど多く魔力を流せるから。」
「あぁ、そういうことだったんだ。
それならイメージしやすいかも。」
手をつないでいたほうが安心するのも、違うベッドで寝ると不安になるのも、
キリルの魔力の供給が減るからなのか。
自分はあまり喜怒哀楽がはっきりしたタイプじゃないと思っていたのに、
ここに来てからは気持ちが乱れてばかりだった。
こうして理由が目に見えてわかると安心する。
どこかおかしくなったわけじゃないって。
「ちゃんとこれが見えているってことはユウリの魔力が調ったってこと。
これで今日から修行が始められる。
さ、起きて着替えようか。」
「うん。」
ベッドから下りると二人で衣裳部屋へと向かう。
あれ以来毎朝二人で着る服を選んでいる。
と言っても、キリルがその日の予定にあわせて服を三着ほど持ってきて、
その中から私が一着を選んで着ている。
着替えた後、数分間鏡の前で自分の姿を確認しているけれど、
慣れる日が来るのかと思うくらい見慣れない。
鏡の中にいる美少女がこちらを見て、恥じらっているように見える。
…自分を見て恥じらうって。
それを後ろで笑っているキリルに軽く文句を言いながら朝ごはんを食べに行く。
そんな生活をここ三日送っていたけれど、今日の服は違っていた。
真っ白いワンピースを渡され、受け取ると不思議な感じがした。
「…?何かこの服いつもと違う気がする?」
「うん、修行用の服なんだ。」
「真っ白か…汚さないようにしないと。」
「着替えはいくらでもあるから、心配しなくていいよ。」
そういう問題じゃないんだけどなと思いながらキリルに着替えさせてもらう。
最初は動けるようになったんだし自分で着替えようとしたけれど、
ここの服にはボタンとかファスナーというものがない。
脱ぎ着するということがないから、そういうものが一切ないため、
自分で魔術を使えるようになるまでキリルに着替えさせてもらうしかなかった。
ボタンやファスナーが無い分、私の身体にフィットするようにできていて、
着心地は良いのだけど…やっぱり子供のようだと感じてしまう。
「やらなきゃいけないこと、たくさんあるな…。」
「あせらなくていいよ。」
「うん、わかってる。」
ここに来てから何度も言われているから、もう焦らないことにしている。
私はこの世界に戻ってきた時に生まれなおしたのだと。
まだ生まれて一月もたっていないのだから、お世話されるのも仕方ない。
地道に修行して、成長していくしかない。
「よし!がんばろう!」
両手を握りこんでいると、また笑っているキリルに片手を持っていかれる。
そのまま手をつなぐようにして衣裳部屋から出た。
「まずはご飯食べてからね。」
「はーい。」
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