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聖女の準備
11.説明しよう
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「悠里に話してなくてごめん。
だけど、悠里にも相談して、もし同じように言われたら…。
もう立ち直れないかもしれないと思ったら怖くて話せなかった。」
「ううん…そんな状況なら話せなくても仕方ないよ。
だけど、高校に通ってたよね?断れたんだよね?」
断れなかったとしたら高校で出会ったりしていない。
だったらちゃんと断れたんだと思ったのに、美里は首を横に振った。
「もう…断るのは無理なんだと思って、あきらめたの。
だけど、結婚するのはせめて高校卒業してからにしてほしいってお願いしたんだ。」
「ええぇ!」
「高校に行っている間も従兄と婚約しているなんて知られたらどうしようって、
それが怖くて仕方なかった。
また同じように周りからうらやましいだなんて言われたくなくて。
周りと距離を取るようになって…友達一人もいなかった。
悠里と会うまで、まともに話せる相手もいなかったんだよ。」
知らなかった。普段の美里がどういう風に過ごしていたのか。
クラスが違ったし、律と一花がいたから関わることもできなかった。
週に一度、図書室の中でだけ会う関係。
美里が苦しんでいたなんて思ってもいなかった。だけど。
「だから…美里は私の相談を真剣に聞いてくれたんだ。
律と一花と離れたい、わかってもらえないかもしれないけど、って言った時に、
大丈夫、その気持ちわかるよって。」
「うん。全く同じ気持ちだったから。
どれだけ相手がすごい人で、周りがうらやましいって思っていても、
自分にとっては迷惑でしかないって気持ち、すごくよくわかった。
同じように悩んで離れようとしている悠里の相談に乗っているうちに、
私もあきらめないで頑張ってみようかと思ったんだ。
通っている女子大の特待生、学費に困っている学生のためにあるんだけど、
他にも使える条件があったから選んだんだ。
親が進学を認めてくれない場合、結婚を強いられている場合。
昔からある女子大だから、そんな制度が残っていてね。
さすがに令和にもなってその条件で使う人はめずらしいみたいだったけど。
おかげで親にお金を出してもらわなくても進学できて、
大学に勧められたアパートは男性は立ち入れないように管理されている。
やっと従兄から逃げられた…そう思ってたんだ。」
逃げられたと思っていたのに、その従兄が家に来ていた。
私を探すために…従兄に会ってしまったなんて。
「なぜか両親はいなくて、従兄だけで。
多分、従兄を呼んだのは両親で…仕組まれたんだと思う。
リビングで従兄に襲われそうになって…突き飛ばして自分の部屋に逃げた。
部屋に鍵をかけたのに、合い鍵を持っていて…。
ドアを開けられそうになって怖くなって助けてって叫んだら、
白い光に包まれてまぶしくて目を閉じて…目を開けたらあの部屋にいた。
いなくなったはずの悠里がいるし、お城みたいな場所だし、
この部屋は豪華だし…どういうことなの?」
「あーそういう状況で逃げてきたんだ。」
聖女は何かから逃げてこの世界に戻ってくることが多いと言っていた。
美里も従兄から逃げて、ここに来た。
これから話すことを信じてくれるかはわからないけれど、
従兄から逃げられたことだけは安心できるんじゃないかと思った。
静かに話を聞いていたカインさんが話の途中から顔色が悪かった。
話が区切りのいいところまで終わったと思ったんだろう。
美里が怪我していないかどうか確認し始めた。
「…大丈夫か?どこか痛むところは無いだろうか?
浄化はかけたが、気持ち悪いならすぐに風呂の用意をさせようか?
あぁ、ボタンがひとつとれている。着替えるか?」
「え?え?あの?大丈夫です。
逃げる時に服をつかまれて、
多分その時にボタンが一つ飛んだんだと思います。
抱き着かれたけど、さわられたりは…えぇええ!」
抱き着かれたと言ったせいだろう。カインさんが美里をぎゅっと抱きしめている。
カインさんはキリルよりも少しだけ背が低いけど、
それでも180cmは軽く超えていると思う。
私よりも小柄で155cmくらいの美里はすっぽりと抱きしめられてしまっている。
あぁ、うん。カインさんってキリルと兄弟だなぁなんて呑気に思ってしまう。
対の魂の美里が汚されたかもしれないと思って、怖くなったんじゃないかな。
カインさんが抱きしめることで浄化しているのかもしれない。
…でも、そろそろ止めてあげようかな。美里が興奮して倒れてしまいそうだ。
「あの…カインさん。
急に抱きしめたから美里がびっくりしてる。
説明しなきゃいけないし、離してあげて…。」
「あぁ!すまない。
心配で…つい。嫌な思いをさせたか?」
「嫌じゃないです…けど、驚くんでやめてくださいぃ。」
真っ赤な顔の美里を見て、もう少しほっといたら危なかったと思う。
ここで気を失って倒れられたら説明ができない。
美里を抱きしめるのはやめたけれど、
手はつないだままのカインさんがようやく本題を思い出したらしい。
真剣な顔になって、美里へと話しかける。
「さて、状況はわかったから、俺からこの世界を説明してもいいか?」
「はい、お願いします。」
「異世界転移って言えばわかる?」
「……はい?」
…カインさんもやっぱりそこからスタートするんだ。
だけど、悠里にも相談して、もし同じように言われたら…。
もう立ち直れないかもしれないと思ったら怖くて話せなかった。」
「ううん…そんな状況なら話せなくても仕方ないよ。
だけど、高校に通ってたよね?断れたんだよね?」
断れなかったとしたら高校で出会ったりしていない。
だったらちゃんと断れたんだと思ったのに、美里は首を横に振った。
「もう…断るのは無理なんだと思って、あきらめたの。
だけど、結婚するのはせめて高校卒業してからにしてほしいってお願いしたんだ。」
「ええぇ!」
「高校に行っている間も従兄と婚約しているなんて知られたらどうしようって、
それが怖くて仕方なかった。
また同じように周りからうらやましいだなんて言われたくなくて。
周りと距離を取るようになって…友達一人もいなかった。
悠里と会うまで、まともに話せる相手もいなかったんだよ。」
知らなかった。普段の美里がどういう風に過ごしていたのか。
クラスが違ったし、律と一花がいたから関わることもできなかった。
週に一度、図書室の中でだけ会う関係。
美里が苦しんでいたなんて思ってもいなかった。だけど。
「だから…美里は私の相談を真剣に聞いてくれたんだ。
律と一花と離れたい、わかってもらえないかもしれないけど、って言った時に、
大丈夫、その気持ちわかるよって。」
「うん。全く同じ気持ちだったから。
どれだけ相手がすごい人で、周りがうらやましいって思っていても、
自分にとっては迷惑でしかないって気持ち、すごくよくわかった。
同じように悩んで離れようとしている悠里の相談に乗っているうちに、
私もあきらめないで頑張ってみようかと思ったんだ。
通っている女子大の特待生、学費に困っている学生のためにあるんだけど、
他にも使える条件があったから選んだんだ。
親が進学を認めてくれない場合、結婚を強いられている場合。
昔からある女子大だから、そんな制度が残っていてね。
さすがに令和にもなってその条件で使う人はめずらしいみたいだったけど。
おかげで親にお金を出してもらわなくても進学できて、
大学に勧められたアパートは男性は立ち入れないように管理されている。
やっと従兄から逃げられた…そう思ってたんだ。」
逃げられたと思っていたのに、その従兄が家に来ていた。
私を探すために…従兄に会ってしまったなんて。
「なぜか両親はいなくて、従兄だけで。
多分、従兄を呼んだのは両親で…仕組まれたんだと思う。
リビングで従兄に襲われそうになって…突き飛ばして自分の部屋に逃げた。
部屋に鍵をかけたのに、合い鍵を持っていて…。
ドアを開けられそうになって怖くなって助けてって叫んだら、
白い光に包まれてまぶしくて目を閉じて…目を開けたらあの部屋にいた。
いなくなったはずの悠里がいるし、お城みたいな場所だし、
この部屋は豪華だし…どういうことなの?」
「あーそういう状況で逃げてきたんだ。」
聖女は何かから逃げてこの世界に戻ってくることが多いと言っていた。
美里も従兄から逃げて、ここに来た。
これから話すことを信じてくれるかはわからないけれど、
従兄から逃げられたことだけは安心できるんじゃないかと思った。
静かに話を聞いていたカインさんが話の途中から顔色が悪かった。
話が区切りのいいところまで終わったと思ったんだろう。
美里が怪我していないかどうか確認し始めた。
「…大丈夫か?どこか痛むところは無いだろうか?
浄化はかけたが、気持ち悪いならすぐに風呂の用意をさせようか?
あぁ、ボタンがひとつとれている。着替えるか?」
「え?え?あの?大丈夫です。
逃げる時に服をつかまれて、
多分その時にボタンが一つ飛んだんだと思います。
抱き着かれたけど、さわられたりは…えぇええ!」
抱き着かれたと言ったせいだろう。カインさんが美里をぎゅっと抱きしめている。
カインさんはキリルよりも少しだけ背が低いけど、
それでも180cmは軽く超えていると思う。
私よりも小柄で155cmくらいの美里はすっぽりと抱きしめられてしまっている。
あぁ、うん。カインさんってキリルと兄弟だなぁなんて呑気に思ってしまう。
対の魂の美里が汚されたかもしれないと思って、怖くなったんじゃないかな。
カインさんが抱きしめることで浄化しているのかもしれない。
…でも、そろそろ止めてあげようかな。美里が興奮して倒れてしまいそうだ。
「あの…カインさん。
急に抱きしめたから美里がびっくりしてる。
説明しなきゃいけないし、離してあげて…。」
「あぁ!すまない。
心配で…つい。嫌な思いをさせたか?」
「嫌じゃないです…けど、驚くんでやめてくださいぃ。」
真っ赤な顔の美里を見て、もう少しほっといたら危なかったと思う。
ここで気を失って倒れられたら説明ができない。
美里を抱きしめるのはやめたけれど、
手はつないだままのカインさんがようやく本題を思い出したらしい。
真剣な顔になって、美里へと話しかける。
「さて、状況はわかったから、俺からこの世界を説明してもいいか?」
「はい、お願いします。」
「異世界転移って言えばわかる?」
「……はい?」
…カインさんもやっぱりそこからスタートするんだ。
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