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聖女の準備

12.信じない

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そこからはカインさんが美里に説明するのを黙って聞いていたが、
美里が「このイケメン、大丈夫なのかな」って顔に変化していくのを見て、
最後まで説明を聞かずに話を止めてしまった。

「…カインさん、美里、ぜんっぜん信じてません。
 今、そうやって説明しても無駄だと思う…。」

「あぁ、やっぱり?
 なんかそんな気はしたんだ。
 でも、説明しないとわかってもらえないだろうし、
 説明なしに信じてって言うのもおかしいだろう?」

「それはそうかもしれないけど…。」

美里が私を見る目も「悠里も大丈夫なの?」って疑いの目になってる気がする。
ここで私が本当だよって言っても逆効果な気がするなぁ。

…私はどうしてキリルを信じたんだっけ。
あまり説明はされないで真名の儀式を先にしたから?
あの綺麗すぎて怖かった場所、絶対的な存在との会話、
自分の身体が変化したっていう実感…そうだった、話を聞いたからじゃない。

「ねぇ、カインさん。
 私がここに来た時は説明をほとんど聞かないで神の住処に行ったの。
 真名の儀式を急いだほうがいいって言われて。」

「あぁ、うん。ユウリは寄生されていたからね。
 真名を早く戻したほうがいいと判断して、すぐに連れて行ったんだ。」

「そっか、私の場合、律と一花がいたからか。」

そういえばそうだった。
律と一花に何かされたら困るって、だからすぐに行ったんだった。

「は?律と一花もここにいるの!?」

さっきまで変な顔してた美里が焦ったように聞いて来た。

「言ってなかったね。美里の場合とはちょっと違うけど、
 私も律と一花につかまりそうになって、助けてって叫んだらここに来てた。
 ただ…その時に律と一花が離してくれなくて…一緒に来ちゃったの。」

「はぁ?さっきの説明だと、向こうの世界から来たら聖女なんでしょ?
 律と一花も聖女になるの?」

「いや、二人は寄生するもの?とかなんとか。」

「あぁ、それは俺から説明するよ。」

寄生するものについては美里にどう説明していいかわからなかった。
困っていたらカインさんが美里にも説明してくれる。
そして、最後にこう付け加えた。

「程度は違うかもしれないけど、ミサトの従兄もそうだと思う。
 ミサトが産まれた瞬間にその力に魅入られてしまったんだろう。
 少しタイミングが遅かったら、その従兄もこちらについてきていただろうね。」

「え!うそ!」

想像して気持ち悪くなったのか、美里が腕のあたりをさすってる。
鳥肌がたったのかもしれない。
カインさんがそれに気がついて、「怖がらせてごめん」ってしょんぼりする。

「え、あ、うん、大丈夫です。
 実際にはついてこなかったんだし…。
 ここに来なかったら多分…あのまま襲われてたし。
 そっか…助けてもらったんだ。
 信じるかどうかは置いといて…ありがとうございます。
 あのままなし崩しに従兄のものにされるのだけは嫌だったから。
 もう向こうに戻れないのだとしても、助けてもらってよかったと思う。」

「…俺も、ミサトがそんな目にあう前に戻ってきてくれてうれしい。
 もう会えないと思ってたんだ。
 それがこうして会って、手をつないで、会話もできる。
 こんなに幸せなことは無いよ。」

「カインさん…あの…抱きしめないで…。」

興奮したのか抱き着いてしまってるカインさんに、
美里が真っ赤になりながらも突っ込んでいる。
止めたほうが良いのかと思うけど、多分これも魔力供給になっているんだろうなと思うと、
下手に止めていいのかはわからない。

キリルが言うには、美里は腰が抜けたんじゃなくて、
魔力が一気に減った衝撃で力が入らないのだろうと。
それを解消するために手をつないでいるというのは説明したけど、
夜…一緒に寝るって聞いたら騒ぐんだろうなぁ。

「で、兄さん、どうするの?
 ミサトはいつ連れて行くんだ?」
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