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絡み合う運命
23.幸せな朝
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夕べはいつの間にかそのまま眠ってしまっていたようだ。
ベッドの中で目を覚ますと、キリルの腕の中だった。
そんなことはめずらしくないのに、なんだか恥ずかしくてたまらない。
昨日のキスを思い出して、キリルの胸に額を押し当てる。
ふれるだけのキスだけど、身体中に熱が伝わって、
おかしくなるんじゃないかと思うほど気持ちよかった。
…両想いだった。
聖女の仕事が終わっても、キリルと離れなくていい。
少しずつ実感してきて、うれしくて泣きそうになる。
「…ん?ユウリ、起きた?」
「うん。ちょっと前に起きた。」
「そっか。おはよう。」
半分寝ぼけたようなキリルに抱き寄せられ、額にキスをされる。
今までなかった挨拶に、顔に熱が集まるのがわかる。
「き、キリル?」
「ん?嫌だった?」
「…嫌じゃないけど、急にそんな風にされると驚くっていうか…。」
「そう?ちょっとずつ慣れていってね。
俺、もう我慢するのやめたから。」
「え?」
どういうこと?と思ってキリルを見たら、その隙にチュっと軽くキスされた。
驚いている私に向かって、とろけるような甘い笑顔を見せるキリルに、
もう何も言えずに胸に顔を押し付けて隠した。
美里とカインさんはまだ起きていないようで、リビングには誰もいなかった。
すぐに用意するから待っててと言われ、ソファに一人座る。
キリルがトレイにのせてきた朝ごはんは中華風のおかゆだった。
台湾風のレトロな絵柄が可愛い丼ぶりで、小皿には刻んだショウガが添えられていた。
「まだ身体は本調子じゃないから、これ食べたらまた休もう。
今日は一日ちゃんと休んで、魔力を戻すことに専念しようね。」
「うん、わかった。」
とろっとしたおかゆには貝柱と小葱が入っていて、薄味のだしが美味しくて、
一口食べるとまた一口と欲しくなる感じだった。
ゆっくり食べ終わると、今日のお茶は温かい烏龍茶を出される。
口の中をさっぱりとさせると、また抱きかかえられてベッドへと連れて行かれる。
両想いになったからか、一緒のベッドに寝るのが恥ずかしい。
キリルはそんなことは思わないようで、私をベッドに寝かせるとそのまま隣に寝転がる。
昨日は疲れていたからすぐに眠れたんだろうけど、この状況で眠れるとは思えない。
「あぁ、眠らなくてもいいよ。
横になっているだけでも身体は休まると思うし、
俺がこうしてくっついていれば魔力の回復も早い。
何か話していようか?」
「寝なくてもいいんだね?」
「うん、さっき起きたばかりだし、眠り続けるのもね。
眠いのなら寝てていいけど、そうじゃないなら起きてていいよ。」
話したい事…何かあった気がするけど、なんだろう。
今こうしてキリルと一緒に寝ていると、他のことがどうでもよくなってしまいそう。
あ、でも、気になることがあった。
「ねぇ、キリルとキスしたのは聖女と隊長として大丈夫なことなの?
清くないとダメなんじゃなかった?
神力が使えなくなるとか、そういうことは無いの?」
私たちは清くなきゃいけないって言ってたはずなのに、キスはセーフなんだろうか。
だとしたら、どの辺まで…なんて考えて、自分で言ったことが恥ずかしくなる。
どこまで…って、キリルとそういうことしたいって言ってるみたいだ…。
「…まぁ、ここまで来たらユウリに隠す必要はないか。」
「隠す?」
「うん、昨日も規則がって言ったと思うけど、
聖女を守るために隊長がしてはいけない規則っていうのがけっこうあってね。
清くなきゃいけないって聖女に教えるっていうのもその一つなんだ。」
「実際は違うってこと?」
「いや、まったく違うわけじゃないんだけど。
この世界に来るまでは厳しく制限して清くなきゃいけないわけだけど、
聖女がこの世界に戻ってきた後はそこまで清くなきゃいけないわけじゃない。
ただ、この世界に来たばかりの聖女に会えるのは隊長か隊員だけだろう?
聖女の身を守るためにも、聖女は清くなきゃいけないって規則になってる。
これは隊長や隊員が聖女を口説かないようにってことでもあるんだ。」
「あぁ、そういう意味での規則だったんだ。
でも、どうして聖女を口説いちゃいけないの?」
そういえば自分から想いを言うわけにはいかないって言ってた。
これも口説いちゃいけないって理由なんだろう。
でも、清くなくても大丈夫なのに、どうして口説いちゃいけないのかな。
「聖女は何も知らない世界に急に来るわけだろう?
そんな状況で頼れるのは隊長や隊員だけなのに、
その相手に口説かれたら…嫌だなって思っても断れないかもしれない。
聖女と隊長が結ばれることは多いけど、絶対じゃない。
誰とも結婚しなかった聖女や、隊員と結婚した聖女もいる。
大昔は王族の申し出を受けて側妃になった聖女もいる。
おそらくそれは聖女を守り切れなくて権力に負けたんだろうと思うけど。
大昔はそこまで聖女の地位は高くなかったそうだから。」
「王族に言われて無理やり妃にされたってこと?」
ベッドの中で目を覚ますと、キリルの腕の中だった。
そんなことはめずらしくないのに、なんだか恥ずかしくてたまらない。
昨日のキスを思い出して、キリルの胸に額を押し当てる。
ふれるだけのキスだけど、身体中に熱が伝わって、
おかしくなるんじゃないかと思うほど気持ちよかった。
…両想いだった。
聖女の仕事が終わっても、キリルと離れなくていい。
少しずつ実感してきて、うれしくて泣きそうになる。
「…ん?ユウリ、起きた?」
「うん。ちょっと前に起きた。」
「そっか。おはよう。」
半分寝ぼけたようなキリルに抱き寄せられ、額にキスをされる。
今までなかった挨拶に、顔に熱が集まるのがわかる。
「き、キリル?」
「ん?嫌だった?」
「…嫌じゃないけど、急にそんな風にされると驚くっていうか…。」
「そう?ちょっとずつ慣れていってね。
俺、もう我慢するのやめたから。」
「え?」
どういうこと?と思ってキリルを見たら、その隙にチュっと軽くキスされた。
驚いている私に向かって、とろけるような甘い笑顔を見せるキリルに、
もう何も言えずに胸に顔を押し付けて隠した。
美里とカインさんはまだ起きていないようで、リビングには誰もいなかった。
すぐに用意するから待っててと言われ、ソファに一人座る。
キリルがトレイにのせてきた朝ごはんは中華風のおかゆだった。
台湾風のレトロな絵柄が可愛い丼ぶりで、小皿には刻んだショウガが添えられていた。
「まだ身体は本調子じゃないから、これ食べたらまた休もう。
今日は一日ちゃんと休んで、魔力を戻すことに専念しようね。」
「うん、わかった。」
とろっとしたおかゆには貝柱と小葱が入っていて、薄味のだしが美味しくて、
一口食べるとまた一口と欲しくなる感じだった。
ゆっくり食べ終わると、今日のお茶は温かい烏龍茶を出される。
口の中をさっぱりとさせると、また抱きかかえられてベッドへと連れて行かれる。
両想いになったからか、一緒のベッドに寝るのが恥ずかしい。
キリルはそんなことは思わないようで、私をベッドに寝かせるとそのまま隣に寝転がる。
昨日は疲れていたからすぐに眠れたんだろうけど、この状況で眠れるとは思えない。
「あぁ、眠らなくてもいいよ。
横になっているだけでも身体は休まると思うし、
俺がこうしてくっついていれば魔力の回復も早い。
何か話していようか?」
「寝なくてもいいんだね?」
「うん、さっき起きたばかりだし、眠り続けるのもね。
眠いのなら寝てていいけど、そうじゃないなら起きてていいよ。」
話したい事…何かあった気がするけど、なんだろう。
今こうしてキリルと一緒に寝ていると、他のことがどうでもよくなってしまいそう。
あ、でも、気になることがあった。
「ねぇ、キリルとキスしたのは聖女と隊長として大丈夫なことなの?
清くないとダメなんじゃなかった?
神力が使えなくなるとか、そういうことは無いの?」
私たちは清くなきゃいけないって言ってたはずなのに、キスはセーフなんだろうか。
だとしたら、どの辺まで…なんて考えて、自分で言ったことが恥ずかしくなる。
どこまで…って、キリルとそういうことしたいって言ってるみたいだ…。
「…まぁ、ここまで来たらユウリに隠す必要はないか。」
「隠す?」
「うん、昨日も規則がって言ったと思うけど、
聖女を守るために隊長がしてはいけない規則っていうのがけっこうあってね。
清くなきゃいけないって聖女に教えるっていうのもその一つなんだ。」
「実際は違うってこと?」
「いや、まったく違うわけじゃないんだけど。
この世界に来るまでは厳しく制限して清くなきゃいけないわけだけど、
聖女がこの世界に戻ってきた後はそこまで清くなきゃいけないわけじゃない。
ただ、この世界に来たばかりの聖女に会えるのは隊長か隊員だけだろう?
聖女の身を守るためにも、聖女は清くなきゃいけないって規則になってる。
これは隊長や隊員が聖女を口説かないようにってことでもあるんだ。」
「あぁ、そういう意味での規則だったんだ。
でも、どうして聖女を口説いちゃいけないの?」
そういえば自分から想いを言うわけにはいかないって言ってた。
これも口説いちゃいけないって理由なんだろう。
でも、清くなくても大丈夫なのに、どうして口説いちゃいけないのかな。
「聖女は何も知らない世界に急に来るわけだろう?
そんな状況で頼れるのは隊長や隊員だけなのに、
その相手に口説かれたら…嫌だなって思っても断れないかもしれない。
聖女と隊長が結ばれることは多いけど、絶対じゃない。
誰とも結婚しなかった聖女や、隊員と結婚した聖女もいる。
大昔は王族の申し出を受けて側妃になった聖女もいる。
おそらくそれは聖女を守り切れなくて権力に負けたんだろうと思うけど。
大昔はそこまで聖女の地位は高くなかったそうだから。」
「王族に言われて無理やり妃にされたってこと?」
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