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10.欠けた器

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「何があった?」

「それがわからないんです。急に力が抜けたようになって、
 今は話しかけても反応がほとんどないんです。」

「ん?」

「何かわかったんですか?」

遠くでユキ様とノエルさんの会話が聞こえる。
聞こえているけど、それに反応するのも難しい。

「ノエルがルーラの魔力を吸ってるんだ。
 駄々洩れだった魔力が減ってきている。
 …そうか、ノエルの器が欠けているところに、
 ルーラの駄々洩れの魔力が引き寄せられたのか。」

「俺が魔力を吸っているから、ルーラの力が入らないってことですか?」

「ああ。それなら問題ない。むしろ良かったよ。
 ルーナの魔力はありすぎて困っていたんだ。
 どうやって消費しようか迷っていたんだが、これはいい。
 しばらくそのままでいてくれ。
 吸われるのが止まれば、ルーラも動けるようになるだろう。」

「…そうですか。わかりました。」

抱きかかえられていたまま、ソファに移動する。
しっかりと抱きかかえられるように移動したらしい。
まるで父親に抱っこされている赤ちゃんだわ…はずかしい。
魔力が吸われるのが止まれば動けるって言ってたし、
この状態で待つしかないのね…。



ふわっと身体が上昇する感じがして、身体に力が戻る。

「あ、動けそう。」

ようやく声が出てほっとする。

「ルーラ!大丈夫か!?」

よほど心配してくれたんだろう。ノエルさんの顔が真っ青だ。
起き上がろうとすると、背中を支えて起き上がらせてくれた。
まだひざに乗せられているけど、まずは動けるか確認しよう。
手をにぎにぎする。うん、大丈夫そう。

「ノエルさん、もう大丈夫だと思う。
 降ろしてもらっていい?」

そう聞くと、もう一度抱き上げて、そっと私だけソファに座らせてくれる。
本当に優しい人なのだろう。
こんなに丁寧に扱わなくても、けっこう頑丈にできているのだけど。

「何か変わったところは無いか?
 有り余ってる魔力を吸ってもらったのだから、
 むしろ身体は軽くなったんじゃないか?」

ユキ様に聞かれて、そういえばと思う。

「そうですね、なんていうか爽快感みたいな感じはします。
 すっきりしました。」

「ふむ。ノエル、今日から毎日ルーラの魔力を吸うことにしよう。
 そうだな、寝る前に吸って、それから部屋に帰ればいいだろう。」

「毎日ですか?ルーラの身体に負担はかかりませんか?」

ノエルさんが恐る恐ると言った感じでユキ様に聞いている。
急に倒れたのが衝撃だったのだろうか。
力が入らないだけで、痛いわけではなかったのだけど。

「ルーラの魔力はかなりの量なんだ。
 吸わないと逆に大変なことになりかねない。
 おそらくルーラの魔力を吸えるのはノエルだけだろう。
 いやー良かった。これでなんとかなりそうだ。
 昨日から探してるんだが、魔力を消費する方法見つからなくてね。
 ノエルがいれば大丈夫だろう。頼んだぞ?」

妙に楽し気にユキ様がノエル様にそう告げる。
肩をポンポンたたかれたノエル様は微妙な顔している。

「あの…?ノエルさんが大変なのでは?」

そんな顔されるくらいなら無理にしてもらわなくても…と思ったのだが、
ノエルさんにすぐさま否定された。

「俺は平気だ。だから、子どもがそんなことを気にするな。
 甘えておけばいいんだよ。
 今日はこれで大丈夫だろうから、明日から寝る前に吸えばいいんだろう?」

やっぱり良い人だ。それに、笑ってくれると可愛い顔になる。
今日はいろんなノエルさんの顔を見れた。

「うん、ありがとう。明日からよろしくね。」

明日は笑ってくれるだろうか。

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