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13.眠るルーラ

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「落ち着いたかい?」

「それが、ぐったりしたまま戻らないんです。
 意識が無い。ユキ様、どうしたらいいんですか!」


俺が帰ってきて、ルーラが落ち着いたと思ったのだろう。
ユキ様が部屋に来ていた。だけど、俺はそれどころじゃなかった。



「意識が無い?」

抱きかかえたままのルーラは、まったく力が感じられない。
いつもとは全然違う様子に、どうしていいかわからない。
ユキ様がルーラの手首をつかんで、魔力の流れを見ている。

「何があった?」

「母親の形見を渡したんです。
 俺が4年前の魔獣の大発生で埋葬した遺体がルーラの母親でした。
 その時に預かった指輪を渡したら、泣いて…しばらく泣いていて。
 ようやく泣き止んだと思ったら、
 その時にはもうぐったりして意識が無かったんです。」

「なるほどね…。
 これから3日ほどは魔力が暴走する恐れがある。
 暴走し始めたらノエルしか近寄れなくなるだろう。
 だが、そうなったらノエルだけで助けられるとは思えない。
 暴走させないために、ルーラから離れないでいてくれ。」

「3日?」

「ああ。ルーラはきっと寝たままだろう。
 一緒の寝台で寝ていればいい。
 ノエルも魔獣退治で疲れてるだろう?休暇だと思って休めばいい。」

「それだけで治るんですか?」

「安心していい。ノエルがそばにいれば、ちゃんと治るから。」

「わかりました。」


抱き直して奥の部屋に連れて行く。前よりも軽く感じる。
一人でいる間、ちゃんと食事できていたのだろうか。
こんなに小さいルーラ。そうか、あの女性がルーラの母親だったのか。
4年も前から一人で店を守っていたんだ…。

今回俺が一人にしなければ、
こんなに寂しい思いをさせなくてもよかったのに、
それでも魔獣を倒す方が大事だって言うのか。
どうして甘えようとしないのか、わかった気がした。
ずっと甘える相手がいなかったんだろう。

甘えればいいといいながら、甘えていたのは俺の方だった。
こうなるまで、ルーラを思いやれていなかった。

3日か。目が覚めたら、俺が甘やかしてやるから、早く元気になってくれ。
ルーラの部屋の小さな寝台に丸まるように横になる。
俺の腕にルーラの頭をのせて、抱きかかえたまま眠る。
たとえ魔力暴走しても、全部ぜんぶ俺が吸いとればいい。

涙の跡を拭いて、頭を撫でた。
もし夢を見ているなら、幸せな夢であればいいと願って。



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