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24.謁見室の人々

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「なぁ、伯爵家の令嬢だったら、
 俺の妃にしても問題なかったんじゃないか?」

近くにいた近衛騎士のジョンと女官のラミーアに問いかけてみる。
あの日ルーラを連れてきた後、ユキ姉様に無理やり薬を飲まされ、眠らされた。
平民の子どもを無理やりさらって来るとは何事かと、
いろんな者に説教されて、かなり反省したのだが。

連れてきたのが伯爵家の令嬢で、結婚できる年齢なんだとしたら、
何にも問題ないんじゃないだろうか。
なんだったら、今からでも俺の妃に…。

「何言ってるんですか、陛下。無理ですよ。」

「なんでだよ。黒髪黒目はめずらしいし、あの美貌だ。
 伯爵家と侯爵家から産まれている令嬢なら、血筋も問題ないし。
 見たか?あの所作。平民育ちにはまるで見えん。
 妃としてやっていけるだろう?」

「陛下、どうやって王城に連れて来たのか忘れてませんか?
 承諾も得ずに担ぎ上げて連れてきたんですよ。
 攫ってきたのと同じじゃないですか。」

「う…。」

ジョンに痛いところを突かれる。
あの日、護衛でいたジョンを巻いてから一人で街に行った。
まだ根に持たれているのだろうか。

「陛下、いいですか?サージュから話は聞きましたが、
 あの時のルーラ様は死を覚悟して抵抗する気だったようですよ。
 16歳になったばかりで両親もいない令嬢に、なんてことするんですか。」

え?死んだほうがましなくらい嫌だったのか…知らなかった。

「そんなに嫌われてた?」

「そういうことじゃありません。
 あの時のルーラ様は平民だったのです。
 平民がお妃になれるわけが無いと考えていたのです。
 一夜の慰み者にされて放り出されるくらいなら、
 殺されたほうがましだとお考えだったようですよ。
 何てけなげな…。」

あ、まずい。ラミーアがうるうるし始めた。泣いたら長いんだ。

「わかった、わかった。俺が悪かった。
 魔力にひかれていたとはいえ、16歳の少女にしていいことではなかった。」

「陛下、次に妃にしたい方がいたら、先に言ってくださいね。
 勝手に連れてくるのだけは止めてくださいよ。」

「うん、そうだな。見つけたら言うよ。」

もうぐったり。あぁ、でも惜しいな。
フォンディ家か…そういえば手を出してはいけない家の一つだった。
ルーラ…綺麗だったなぁ。
手は出せないけど、声かけてみるくらいならいいよな。
お詫びだって言って、お茶に呼んでみようかな。
もしかしたら今から仲良くなれるかもしれないし。

「あ、ルーラはもうノエルと結婚しているので、
 ちょっかい出すのは止めてくださいね?」

「ラミーア、それを先に言ってくれないか…?」




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