ひとりぼっちだった魔女の薬師は、壊れた騎士の腕の中で眠る

gacchi(がっち)

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30.新たな疑問

誤解がとけたら安心したのだろう。寵妃さまの表情が柔らかくなった。
良かった。これでもう呼び出されることはないだろう。

「そうでしたか。王宮薬師長になるかたでしたのね。
 ルーラ様、これからよろしくお願いしますね?」

…えーっと、また呼び出されるのかしら。
どう返答して良いのか、迷った結果、素直に答えることにした。

「申し訳ございません。私は王宮薬師長になるどころか、
 王宮薬師にすらなれていません。
 寵妃さまにお目にかかれるような立場になるには、しばらくかかりそうです。
 今は人に処方する許可も下りていない状況です。」

「あら、そうなのですか。
 残念です。ルーラ様に処方してもらえたらと思ったのですが…。」

「もちろん、修行した結果、
 王宮薬師として仕事をいただけるようになりましたら、
 全力でお勤めいたします。
 その時までお待ちいただけますか。」

「わかったわ。楽しみにしています。」

納得してもらえたようで良かった。
いつになるかわからない約束ではあるが、今すぐ処方しろと言われても困る。
それにしても、処方してもらいたい薬ってなんだろう。

「寵妃さまは、何かお困りなのでしょうか?」

薬師としての気持ちが勝ってしまい、思わず聞いてしまった。

「あぁ、困っているというか…避妊薬をお願いしようと思って。」

「…失礼いたしました。」

聞いてはいけない話だった。聞かなければよかった。
その後はいくつか薬師としての生活のことを聞かれたが、
予想とは違い和やかな雰囲気でお茶会は終わり、
ミラさんとノエルさんと一緒に塔に戻ることになった。
終わりの挨拶をして帰ろうとすると、
ふいに後ろのノエルさんに気が付いたのか、寵妃さまに尋ねられた。

「青の騎士…?もしかして、ルーラ様の護衛はノエル様なの?」

「はい。」

「公爵家の当主になるかたが専属の騎士って、すごいわ。
 やはり次期王宮薬師長って、他の薬師とはまったく待遇が違うのね。」

つぶやくような寵妃さまの声を聞き返す前に、女官たちに扉を開かれた。
促されるままに廊下に出て、礼をすると、すぐに扉は閉じられた。
今の話は、どういうこと?


「ノエルさん…?」

「帰ってから話そうか。ここは立ち止まっていて良い場所ではない。」

表情がかたいままのノエルさんに、素直に従って歩き始めた。
来た時と違い、エスコートされる必要は無かったし、
その腕にさわれるような雰囲気では無かった。

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