妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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24、これからは私らしく

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「ミーナ。
 これからどこへ行こうが、ここより悪い所はないと思うの。
 だから勇気をもって邸を出ましょう」

 そう言うと、唇を引き結んで扉のノブに手をかけた。

「やったあ。
 リーフ家での修行がやっとおわったんだ。
 ミーナ、チョウ喜しい」

「けど。
 私の荷物って本当に何もないのね。
 さっきマリーンが投げつけたハリス少年の服だけだもの」

 それは魔法で小さくして、ワンピースのポケットにしまっている。

 追い出されたも同然の状態で、邸を出ていくのだから、マリーンに魔力を譲る気持ちなんてさらさらない。 

 これからは自分のために、どんどん魔力を解放するのだ。

「だよね。
 アイリーンの部屋にあったワンピースや、カップなんかも全部マリーンにめちゃくちゃにされたし。
 けど、これからはもっともっといい物が増えるよ」

「うん。ありがとう。
 1番大切なミーナがいればそれでいいわ」

 そう言って、扉のノブに手をかけた時、マリーンの言葉を思い出す。

「あ、いけない。
 めちゃくちゃになっているこの部屋を元にもどすのを忘れていたわ」

 クルリとキビスを返して、もう1度部屋の中へまいもどる。

「最後の最後まで、マリーンの言うとおりにしなくてもいいのにさあ」 

「いいなりじゃないのよ。
 私がそうしたいの。
 なんだかんだ言っても、長年暮らしてきた邸なのよ。
 きれいにしてから出ていきたいの。
 それにもっと魔法を使ってみたいの」

「いーじゃん。
 カーラは『魔法を使えば魔力がちびる』なんて変な事を言って、アイリーンに魔法を使わせないようにしてたけど、魔法は使えば使うほど腕が上がるんだからね」

「あの古くさい石頭はどーしようもないのよ」

 ニコリと笑ってから口をつぐむ。

 そして「ハア」と深呼吸をして、気持ちを落ち着けると「元どおりになーれ」と唱えて、ひとさし指をふった。

 すると指先から銀色の粒子がこぼれて、あっという間に部屋は綺麗になっている。

「すっごい。
 久しぶりに使った魔法がこれだ。
 アイリーンって、ひょっとしたら魔法の天才だったりして」

「ミーナ。それはホメすぎよ。
 けどホメられるって本当にいい気持ちね。
 今までずーとそういう事がなかっので、よけいにそう思うのかしら」

「暗い日々も今日でおしまい。
 きっと明日からは、アイリーンはホメられてばかりだよ。
 楽しみにしてて」

「そうね。 
 じゃあ、今度こそ邸をサヨナラするわね」

 私はそう言うと、空中に指で文字をかいた。

「邸を出た私を探さないでね。
 2度とカーラとマリーンの顔は見たくないから。
 それと、マリーン。
 私の魔力は私の物よ。
 マリーンには譲れない。
 人の魔力なんてあてにせず、身の丈にあった暮らしをするのよ。
 では、サヨナラ。
 せいせいしたアイリーンより」

「アイリーンもやるじゃん」

 1つ1つ文字を目で追っていたミーナが、小粒な白い歯を見せる。

「これをテーブルに貼り付けるの」

 もう1度指をふれば、文字は部屋の真ん中にあったテーブルの上にパラパラと落ちて文をつくってゆく。

 これを読んだカーラやマリーンの悔しがる顔を想像しただけで、つかえていた胸のモヤモヤがはれていった。

「これからは私らしく生きてゆく」

 決意を口にすると、ミーナを抱いて部屋の窓からフワリと飛び出したのだ。






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