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最終章 虚像
〈一〉刻まれた現実
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僕は母さんの顔を知らない。父さんはもう会えない母さんを思い出すのが辛いのか、写真だけでなく母さんとの思い出があるものはすべて処分してしまったらしい――それを教えてくれたのは、僕を引き取ってくれた叔母だった。
だからまだ父さんが生きていた頃の僕は、母さんの話すら聞いたことがなかった。保育園で周りの子供達と見比べて、どうしてうちには母さんがいないんだろうと思った記憶は確かにある。だけど子供ながらになんとなく何かを察していたのだろう、僕がその質問を父さんに投げかけることはなかった。
それでも、気になる気持ちは止められない。僕は父さんのいない隙に何度もこっそりと家の中を探し回った。でも結局見つけられたのはお菓子の缶の中に入った、父さんが男友達と写る写真だけ。一応手紙も見つけたけれど、ひらがなも分からない僕には読むことはできなかった。
§ § §
安物のベッドの上でぼんやりと天井を見つめながら、僕は開いたばかりの目を再び閉じた。
布団に接した背中が暑い。身体中に汗が滲む。一応エアコンを付けてはいるけれど、節約のために温度は耐えられるぎりぎりまで高く設定している。
『君の見ているものが正しいとは限らないよ』
椿の声が頭の中に響く。どうせいつもの妄言だろうと分かっているのに、さっき聞いた彼女の言葉はじわじわと僕の心を蝕んで、夢の中でまで古い記憶を引っ張り出そうとしてくるのだ。
『自分でようく考えてごらん。まあ、考えても分からないと思うけど』
馬鹿にするような椿の顔が瞼の裏にちらついて、僕は渋々目を開けた。彼女に考えてみろと言われたから、買い物から帰った後ずっとこうして考えている。でもいくら考えても何を考えればいいかすら分からないから眠りへと逃げたのに、そんな僕を嘲笑うかのように椿の言葉は僕の頭にこびりついて離れない。
「なんなんだよ……」
椿は一体何のことを言っているのだろうか。僕は確か、彼女に本物の橘椿の家に連れて行った理由を尋ねたはず。そしてそれに対して椿はさっきの発言を返してきたのだ。
「僕の見ているもの……何の話だよ……」
考えれば考えるほど、身体を覆う熱が高くなっていく気がする。流石にこれ以上部屋が熱くなったら熱中症になると思ってエアコンのリモコンを手に取ろうとしたけれど、僕は床へと伸ばしたその手をベッドに置いて身体をのそりと持ち上げた。
「……出かけるか」
エアコンの設定温度を下げるより、外に涼みに行く方が経済的だ。それに考えが行き詰まっているから気分転換をしたいというのもある。外に出れば真犯人に何かされるかもしれないという恐れもあったけれど、朝は無事に帰ってこられたからきっと大丈夫だろう。いざとなれば僕を見張っている警官が助けてくれるはずだ。
僕は改めて床からリモコンを拾うと、エアコンを止めて窓を開けた。肌を撫でる真夏の温風に清々しさは一切なかったけれど、なんとなくごちゃごちゃだった頭の中が綺麗になっていく気がする。
昼間は大合唱しているセミの鳴き声は、時間帯が夕方に近いということもあり少し落ち着いていた。日差しはまだまだ強いものの、既に太陽は傾き始めているからこれから弱まっていくだろう。
そんなことを考えながらアパートの二階にある自宅から窓の外を眺めていると、眼下に黒い影が映り込んできた。
「は……? 椿……!?」
何故こんなところにいるのだろう。何故彼女は僕の家を知っているのだろう。疑問も確かに頭の中に浮かんだが、今はそれよりも苛立ちの方が大きかった。
「――何しに来た!」
家を飛び出して、椿がいた場所に走り寄る。彼女はそんな僕の行動を予測していたかのように、薄く笑みを浮かべながら僕を見ていた。
「困っているかなと思って」
そう言う椿はいつもどおり、何を考えているかさっぱり分からない。表情から窺おうにも、いつだって彼女は不敵に微笑んでいるから読み取ることはできなかった。
「お前が変なこと言うからだろ」
一日に二度も椿に会うのはこれが初めてだった。というか、まだ彼女には数回しか会ったことがない。それなのにこれだけ感情を顕にできるのは、椿の口振りがいつも僕のことを知っているとでも言いたげな雰囲気を含んでいるからだろう。実際には大して知らないのだろうが、言葉で表現されると僕もそういう気になってきてしまうのだから不思議だ。
「知りたいならついておいで」
口端を上げて椿が言う。言葉が足りないから一瞬何の話かと思ったけれど、僕の発言に対しての答えだと分かると無意識のうちに眉間に皺が寄った。
「どこにだよ」
「君も知っている場所だよ」
「僕が知ってる場所……?」
考えて、ふと頭に浮かんだ答えに僕は慌てて口を開いた。
「倉庫は駄目だぞ!? あとあの家も……いくら警察にちゃんと話したって言っても、僕の立場であんなところに行けばどう思われるか……!」
椿と僕が共有している場所など、東海林卓の死んでいた倉庫と本物の橘椿の家くらいしかない。そのどちらも僕が迂闊に近寄るべきではない場所なのだ。行きたくないのは当然だった。
「どちらでもないよ」
だからその椿の言葉は少なからず僕の緊張を弱めた。頭に浮かんだ二箇所のどちらでもないのであれば、他に僕にとって行くのが不都合な場所なん思い付かないからだ。それに「知りたくないの?」と小首を傾げる彼女からは、僕に対する害意なんて感じられなかった。
「……分かったよ、行くよ」
「そうこなくちゃ」
歩き出した椿の後を、例のごとく少し距離を取ってついていく。以前は彼女の容姿に気後れしたからだったけれど、今は見張りの警官に椿と仲良く並んで歩くところを見られたくないという気持ちの方が強かった。
「――どこに行くんだ?」
椿の後を黙ってついていくと、段々と川に近付いているのが分かった。そっちには倉庫がある。それに本物の橘椿の遺体が発見されたのもその近くだったはずだ。
まさかどちらでもないというのは嘘だったのでは――一体椿が僕をどこに連れて行きたいのか考えると不安になって、思わず問いかけた声は少し弱くなった。
「着いてからのお楽しみ」
それから少し歩いて川沿いの道に着くと、椿は土手を下りて川岸へと向かった。川岸と言ってもちゃんと道がある。そこを静かに歩いていって、影が差したところで足を止めた。
「……ここ?」
そこは川にかかる大きな橋の下だった。少し下流には警察の物らしき黄色いテープが見えるから、ここは例の事件現場のすぐ近くなのだろう。
「こんなところに何の用が……」
「そこを見てごらん」
困惑する僕に、椿は草むらを指差してそう言った。僕は訝しみながらもそこに近付いてみたが、目に入るのは雑草だけで彼女が何を僕に見せようとしているのかが分からない。
「そのあたり探してみなよ。面白いものが見つかるよ」
「面白いもの?」
言われるがままに草をかき分ける。そうして何箇所か探すと、汚れたブレスレットが落ちているのを見つけた。
「ああ、それそれ」
椿の言葉にそのブレスレットが探しものだったと分かった僕は、それを手に取って立ち上がった。しゃがんでいたせいで少し疲れた腰を伸ばしながら、軽く汚れを払ってブレスレットを観察してみる。
全く見覚えはなかったけれど、華奢なデザインだからきっと女物だろう。よく見ると時計のようなものが付いているのが分かったものの、動いていないからただの飾りかどうか判断が付かない。
「これが何だっていうんだ」
「君にとって大事なものだよ」
「こんなゴミが? 確かに作りはしっかりしてるけど、そこまで価値があるようには……」
「大事なのは値段じゃない」
時折フィクションで聞く綺麗な言葉に、僕は似合わないなと思いながら椿に視線を戻した。
「それはきっと視界に入っていなかったんだろうね。だからここにある」
「何の話だ?」
「言っただろう?」
椿に差す陰が、濃くなった気がした。
「君の見ているものは正しいとは限らない。でも君の見ていなかったものは、正しさを失わない」
その椿の言葉は意味が分からないのに、無性に僕の心を掻き乱した。
だからまだ父さんが生きていた頃の僕は、母さんの話すら聞いたことがなかった。保育園で周りの子供達と見比べて、どうしてうちには母さんがいないんだろうと思った記憶は確かにある。だけど子供ながらになんとなく何かを察していたのだろう、僕がその質問を父さんに投げかけることはなかった。
それでも、気になる気持ちは止められない。僕は父さんのいない隙に何度もこっそりと家の中を探し回った。でも結局見つけられたのはお菓子の缶の中に入った、父さんが男友達と写る写真だけ。一応手紙も見つけたけれど、ひらがなも分からない僕には読むことはできなかった。
§ § §
安物のベッドの上でぼんやりと天井を見つめながら、僕は開いたばかりの目を再び閉じた。
布団に接した背中が暑い。身体中に汗が滲む。一応エアコンを付けてはいるけれど、節約のために温度は耐えられるぎりぎりまで高く設定している。
『君の見ているものが正しいとは限らないよ』
椿の声が頭の中に響く。どうせいつもの妄言だろうと分かっているのに、さっき聞いた彼女の言葉はじわじわと僕の心を蝕んで、夢の中でまで古い記憶を引っ張り出そうとしてくるのだ。
『自分でようく考えてごらん。まあ、考えても分からないと思うけど』
馬鹿にするような椿の顔が瞼の裏にちらついて、僕は渋々目を開けた。彼女に考えてみろと言われたから、買い物から帰った後ずっとこうして考えている。でもいくら考えても何を考えればいいかすら分からないから眠りへと逃げたのに、そんな僕を嘲笑うかのように椿の言葉は僕の頭にこびりついて離れない。
「なんなんだよ……」
椿は一体何のことを言っているのだろうか。僕は確か、彼女に本物の橘椿の家に連れて行った理由を尋ねたはず。そしてそれに対して椿はさっきの発言を返してきたのだ。
「僕の見ているもの……何の話だよ……」
考えれば考えるほど、身体を覆う熱が高くなっていく気がする。流石にこれ以上部屋が熱くなったら熱中症になると思ってエアコンのリモコンを手に取ろうとしたけれど、僕は床へと伸ばしたその手をベッドに置いて身体をのそりと持ち上げた。
「……出かけるか」
エアコンの設定温度を下げるより、外に涼みに行く方が経済的だ。それに考えが行き詰まっているから気分転換をしたいというのもある。外に出れば真犯人に何かされるかもしれないという恐れもあったけれど、朝は無事に帰ってこられたからきっと大丈夫だろう。いざとなれば僕を見張っている警官が助けてくれるはずだ。
僕は改めて床からリモコンを拾うと、エアコンを止めて窓を開けた。肌を撫でる真夏の温風に清々しさは一切なかったけれど、なんとなくごちゃごちゃだった頭の中が綺麗になっていく気がする。
昼間は大合唱しているセミの鳴き声は、時間帯が夕方に近いということもあり少し落ち着いていた。日差しはまだまだ強いものの、既に太陽は傾き始めているからこれから弱まっていくだろう。
そんなことを考えながらアパートの二階にある自宅から窓の外を眺めていると、眼下に黒い影が映り込んできた。
「は……? 椿……!?」
何故こんなところにいるのだろう。何故彼女は僕の家を知っているのだろう。疑問も確かに頭の中に浮かんだが、今はそれよりも苛立ちの方が大きかった。
「――何しに来た!」
家を飛び出して、椿がいた場所に走り寄る。彼女はそんな僕の行動を予測していたかのように、薄く笑みを浮かべながら僕を見ていた。
「困っているかなと思って」
そう言う椿はいつもどおり、何を考えているかさっぱり分からない。表情から窺おうにも、いつだって彼女は不敵に微笑んでいるから読み取ることはできなかった。
「お前が変なこと言うからだろ」
一日に二度も椿に会うのはこれが初めてだった。というか、まだ彼女には数回しか会ったことがない。それなのにこれだけ感情を顕にできるのは、椿の口振りがいつも僕のことを知っているとでも言いたげな雰囲気を含んでいるからだろう。実際には大して知らないのだろうが、言葉で表現されると僕もそういう気になってきてしまうのだから不思議だ。
「知りたいならついておいで」
口端を上げて椿が言う。言葉が足りないから一瞬何の話かと思ったけれど、僕の発言に対しての答えだと分かると無意識のうちに眉間に皺が寄った。
「どこにだよ」
「君も知っている場所だよ」
「僕が知ってる場所……?」
考えて、ふと頭に浮かんだ答えに僕は慌てて口を開いた。
「倉庫は駄目だぞ!? あとあの家も……いくら警察にちゃんと話したって言っても、僕の立場であんなところに行けばどう思われるか……!」
椿と僕が共有している場所など、東海林卓の死んでいた倉庫と本物の橘椿の家くらいしかない。そのどちらも僕が迂闊に近寄るべきではない場所なのだ。行きたくないのは当然だった。
「どちらでもないよ」
だからその椿の言葉は少なからず僕の緊張を弱めた。頭に浮かんだ二箇所のどちらでもないのであれば、他に僕にとって行くのが不都合な場所なん思い付かないからだ。それに「知りたくないの?」と小首を傾げる彼女からは、僕に対する害意なんて感じられなかった。
「……分かったよ、行くよ」
「そうこなくちゃ」
歩き出した椿の後を、例のごとく少し距離を取ってついていく。以前は彼女の容姿に気後れしたからだったけれど、今は見張りの警官に椿と仲良く並んで歩くところを見られたくないという気持ちの方が強かった。
「――どこに行くんだ?」
椿の後を黙ってついていくと、段々と川に近付いているのが分かった。そっちには倉庫がある。それに本物の橘椿の遺体が発見されたのもその近くだったはずだ。
まさかどちらでもないというのは嘘だったのでは――一体椿が僕をどこに連れて行きたいのか考えると不安になって、思わず問いかけた声は少し弱くなった。
「着いてからのお楽しみ」
それから少し歩いて川沿いの道に着くと、椿は土手を下りて川岸へと向かった。川岸と言ってもちゃんと道がある。そこを静かに歩いていって、影が差したところで足を止めた。
「……ここ?」
そこは川にかかる大きな橋の下だった。少し下流には警察の物らしき黄色いテープが見えるから、ここは例の事件現場のすぐ近くなのだろう。
「こんなところに何の用が……」
「そこを見てごらん」
困惑する僕に、椿は草むらを指差してそう言った。僕は訝しみながらもそこに近付いてみたが、目に入るのは雑草だけで彼女が何を僕に見せようとしているのかが分からない。
「そのあたり探してみなよ。面白いものが見つかるよ」
「面白いもの?」
言われるがままに草をかき分ける。そうして何箇所か探すと、汚れたブレスレットが落ちているのを見つけた。
「ああ、それそれ」
椿の言葉にそのブレスレットが探しものだったと分かった僕は、それを手に取って立ち上がった。しゃがんでいたせいで少し疲れた腰を伸ばしながら、軽く汚れを払ってブレスレットを観察してみる。
全く見覚えはなかったけれど、華奢なデザインだからきっと女物だろう。よく見ると時計のようなものが付いているのが分かったものの、動いていないからただの飾りかどうか判断が付かない。
「これが何だっていうんだ」
「君にとって大事なものだよ」
「こんなゴミが? 確かに作りはしっかりしてるけど、そこまで価値があるようには……」
「大事なのは値段じゃない」
時折フィクションで聞く綺麗な言葉に、僕は似合わないなと思いながら椿に視線を戻した。
「それはきっと視界に入っていなかったんだろうね。だからここにある」
「何の話だ?」
「言っただろう?」
椿に差す陰が、濃くなった気がした。
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