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第1章 英雄と竜帝
第6話 師、曰く。 ~くうげきのじん~
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「……これ!ロア!しっかりしなさい。」
かけられた声に応えようと、身を起こそうとするが頭に鈍い痛みが走り、意識がぼんやりとして、体も重い。
「……くうう。体に力が……。」
中々体に力が入らなかったが、意識はだんだんとはっきりとしてきた。今ここで何をしていたのか、次第にわかるようになってきた。
「……そういえば、技の練習中だったっけ。そうだ、そうだ。」
独り言を言いながら一人で納得していた。
「何を言ってるんですか?頭を打っておかしくなってしまいましたか?」
さっきから話しかけてきてるのは誰だったっけ?とまだ完全に状況把握できていない様子でロアは声のする方へと顔を向けた。
「……し、師父?」
そこには彼の尊敬する師父の姿があった。
「困ったものですねえ。私のことまで忘れてしまいましたか?」
紛れもなく師父その人であった。今は師父から技の手解きを受けている最中なんだということをはっきりと思い出した。その最中でうっかり転倒してしまい、頭を強打してしまったのだ。頭を触ってみると、たんこぶが出来ていた。出血はしていないものの、当然のことながらまだ痛い。
「……ふむ。今日はこれぐらいにしておきましょうか?頭を冷やしてからにした方がよいでしょう。」
「……いや、大丈夫っす。これくらい!」
ロアはその場で跳び跳ねたりして見せた。このまま終わるのは師父に対しても面目がたたない。技の習得に何日もかかっているので、出きるだけ早く結果を見せたい。ロアはそんな思いに身を流行らせていた。
「……あなたがそこまで言うのなら仕方ありませんね。では、あと少しだけやりましょう。いいですね?」
ロアは無言でゆっくりとうなずいた。そしてゆっくりと構えの体勢をとった。しかし、そこである重大な事実に彼は気付いた。
「……あれ?何の技でしたっけ?」
こんな拍子抜けするような一言に思わず師範もあきれた表情になる。
「本当に大丈夫ですか?今は戦技一0八計の一つ、空隙の陣の修練中ですよ。」
「あーそうそう!空隙、空隙の陣!」
今の瞬間まで忘れていたにも関わらず、その名を連呼する。技の名と共に修練の内容も頭の中に甦ってきた。
――戦技一0八計。それは梁山泊に集った数々の武芸の達人たちが積み重ねてきた戦いの技術、心得、修練法を集約した八陣五覇からなる体系である。その中の一覇、剣術においての技の名かの一つが空隙の陣である。その技は敵からの不意な一撃に対して反撃を行う技である。敵の殺気に対していち早く反応し、反撃の体勢をとらなくては技が成立しない。
その一連の動作が出来ずにいた。この技の修練を始めてから一週間ほどが過ぎようとしていた。一般的に考えれば、空隙の陣のような技は一週間どころか何年も鍛練を続けなければ習得できない芸当なのだが、この梁山泊では過酷な基礎鍛練を日常的に行うため、常識では考えられない速度で戦技一0八計のような超人絶義を習得することを可能にしている。
平均的な実力であれば2、3日もあれば習得可能な技であり、優れた者であれば技の要領を聞いただけで、再現してしまうこともあったという。その一方でロアはというと、梁山泊の中では歴代随一といわれるほどの……落ちこぼれなのであった。
「いいですか?この技は目だけに頼ってはいけません。相手の気配を察知するには感覚の目に頼らなくてはいけません。」
ロアは次第に頭がハッキリとしてくる中で、何度も耳にしてきたこの技の要領を反芻していた。この理屈だけは完全に覚えてはいるが、実際に動くとなると、全くうまくいかない。体が理解してくれない。先程のダメージと体の疲労のせいで、余計にうまくいかないのではないか?……とさえ思った。
(……余計なことは考えずに、全神経を集中させるんだ!)
ロアはゆっくりと目を閉じ、構えをとった。
かけられた声に応えようと、身を起こそうとするが頭に鈍い痛みが走り、意識がぼんやりとして、体も重い。
「……くうう。体に力が……。」
中々体に力が入らなかったが、意識はだんだんとはっきりとしてきた。今ここで何をしていたのか、次第にわかるようになってきた。
「……そういえば、技の練習中だったっけ。そうだ、そうだ。」
独り言を言いながら一人で納得していた。
「何を言ってるんですか?頭を打っておかしくなってしまいましたか?」
さっきから話しかけてきてるのは誰だったっけ?とまだ完全に状況把握できていない様子でロアは声のする方へと顔を向けた。
「……し、師父?」
そこには彼の尊敬する師父の姿があった。
「困ったものですねえ。私のことまで忘れてしまいましたか?」
紛れもなく師父その人であった。今は師父から技の手解きを受けている最中なんだということをはっきりと思い出した。その最中でうっかり転倒してしまい、頭を強打してしまったのだ。頭を触ってみると、たんこぶが出来ていた。出血はしていないものの、当然のことながらまだ痛い。
「……ふむ。今日はこれぐらいにしておきましょうか?頭を冷やしてからにした方がよいでしょう。」
「……いや、大丈夫っす。これくらい!」
ロアはその場で跳び跳ねたりして見せた。このまま終わるのは師父に対しても面目がたたない。技の習得に何日もかかっているので、出きるだけ早く結果を見せたい。ロアはそんな思いに身を流行らせていた。
「……あなたがそこまで言うのなら仕方ありませんね。では、あと少しだけやりましょう。いいですね?」
ロアは無言でゆっくりとうなずいた。そしてゆっくりと構えの体勢をとった。しかし、そこである重大な事実に彼は気付いた。
「……あれ?何の技でしたっけ?」
こんな拍子抜けするような一言に思わず師範もあきれた表情になる。
「本当に大丈夫ですか?今は戦技一0八計の一つ、空隙の陣の修練中ですよ。」
「あーそうそう!空隙、空隙の陣!」
今の瞬間まで忘れていたにも関わらず、その名を連呼する。技の名と共に修練の内容も頭の中に甦ってきた。
――戦技一0八計。それは梁山泊に集った数々の武芸の達人たちが積み重ねてきた戦いの技術、心得、修練法を集約した八陣五覇からなる体系である。その中の一覇、剣術においての技の名かの一つが空隙の陣である。その技は敵からの不意な一撃に対して反撃を行う技である。敵の殺気に対していち早く反応し、反撃の体勢をとらなくては技が成立しない。
その一連の動作が出来ずにいた。この技の修練を始めてから一週間ほどが過ぎようとしていた。一般的に考えれば、空隙の陣のような技は一週間どころか何年も鍛練を続けなければ習得できない芸当なのだが、この梁山泊では過酷な基礎鍛練を日常的に行うため、常識では考えられない速度で戦技一0八計のような超人絶義を習得することを可能にしている。
平均的な実力であれば2、3日もあれば習得可能な技であり、優れた者であれば技の要領を聞いただけで、再現してしまうこともあったという。その一方でロアはというと、梁山泊の中では歴代随一といわれるほどの……落ちこぼれなのであった。
「いいですか?この技は目だけに頼ってはいけません。相手の気配を察知するには感覚の目に頼らなくてはいけません。」
ロアは次第に頭がハッキリとしてくる中で、何度も耳にしてきたこの技の要領を反芻していた。この理屈だけは完全に覚えてはいるが、実際に動くとなると、全くうまくいかない。体が理解してくれない。先程のダメージと体の疲労のせいで、余計にうまくいかないのではないか?……とさえ思った。
(……余計なことは考えずに、全神経を集中させるんだ!)
ロアはゆっくりと目を閉じ、構えをとった。
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