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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第99話 ガンガン行こうぜ!

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「マップはこまめに書いていくでヤンスよ。」


 犬の人がマップ作成の方法をレクチャーしてくれていた。通路の形に合わせて線を引き、罠があったところには印を入れたりした。


「こんな感じでいいの?」

「そうそう!そんな感じでヤンス。」


 犬の人はそれでいいと言う返事をしてはいるが、若干、そわそわしているような……。


「…おかしいでヤンス。中の構造が違うような気がするでヤンス……。」


 ブツブツ独り言を言っている。……あやしい!


「何か言った?」

「……んん!?な、なんでもないでヤンスよ!」 
 

 そう言いながら、ピ~ピピ~♪と口笛を吹き始めた。……なんてベタなごまかし方なんだ!これなら自分からあやしいと言っているようなもんだ。


「ホントにぃ~?なんかあったら承知しないぞ?」

「な、な、な!?なにも……、」


 犬の人は慌てふためき、口をもごもごさせている。


「……ない?ある?どっち?」

「あ、あるでヤンスぅ~!」


 とうとう白状したな!やっぱり、なんかおかしいんだな?


「じゃあ、説明してもらえる?」

「あ、あ、あ、あの!え、えーと……、」


 犬の人はしどろもどろになっている。目線もキョロキョロして、全然定まっていなかった。


「な、なんかスけど、前に入ったときと罠の位置とか、通路が増えてヤウンス!ヤンヌ、フンス!」


 口調が物凄く変になっている。動揺しすぎだろ。


「勇者様!さっきから周りの様子が変です!」

「やっぱ、気のせいじゃなかったか!」


 周囲から物々しい気配が近付いているのは気付いていた。


「初心者ザマぁ!!お前らの冒険はここでオシマイ!」


 気配の正体が姿を現した。数人の冒険者風のヤツラが次々と出てきた。


「泣いて謝っても許さないからね、俺たち!金を取るドロボウとは違うから。勝つのを楽しむだけだから!」


 リーダーらしいヤツが偉そうに、もう勝ったつもりで宣言した。すがすがしいほどの悪役ぷりっである。コイツは倒しがいがありそうでなによりである。


「あう、あわわ!うわわうわでヤ、ヤヤンスゥ!」


 犬の人の混乱具合がピークに達していた!お前が案内人なのにそんなことでどうするんだ!


「どうしましょう、勇者様?」


 エルちゃんは俺に判断を促してきたが、もう既に魔法の準備を始めているようだった。俺も既に剣を抜いていた。こうなってしまった以上、もう、やることは決まっている!


「決まってんじゃん!……蹴散らしてやる!ガンガン、行こうぜ!」
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