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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第103話 誰が豚やねん!

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「うわああ!ぶ、豚が出たああ!」


 エルちゃんと対峙していた魔術師の後ろの方から豚の人が姿を現した。魔術師はおもいっきり動揺している。


「誰が豚やねん!」


 豚の人は魔術師の顔面に裏拳を喰らわせた。豚がぶった、なんちて!


「パッチィッ!!」


 豚の人は軽くぶっただけに見えたが、魔術師は思いきり吹き飛んでいった。いや、豚の人じゃなかった。猪の人だった。そう言わないとさっきの魔術師と同じ目にあわされる!


「おお!誰かと思たら、昨日の兄ィちゃんやんけ!」

「もしかして?ガツ丼奢ってくれたおっちゃん?」


 思わぬ場所での再会だった。なんでこんな所にいるんだ?


「兄ィちゃんがここにおるってことは……、」

「そやつが勇者じゃ!頼りない顔をしとるがの。」


 今度はサヨちゃんまで現れた!なんだ?どういうことだ?


「おう、すまんな!ちょっとしたドッキリをしかけさせてもろたんや。」

「ちなみにこやつら、賊は本物じゃがのう。」

「なっ、何だよ、それ!」


 ドッキリだと?しかけただと?はじめっから、全部罠みたいなもんだったのか。


「そなたらと此奴の社員の実力を測るために、一計を講じてみたのじゃ。まあ、結果としてはそなたらの勝ちじゃ。」

「ホンマ、恥ずかしいトコ見せてもうたわ。コイツ、ホンマ、あかんわ!まだ、独り立ちさせられんわ。」

「ああ、そう?」


 勝ち、とか言われても実感が湧かない。なんか釈然としない。


「それにしても、こいつら、一体なんなの?」


 盗賊かといったらそうでもなさそうだ。勝つのを楽しむとか言ってたし。


「最近、世間を騒がしとる、通称“初心者狩り”というやつじゃ。教習用ダンジョンを出入りする怪しい輩がおるという話があったのでな。ついでで、そなたらに成敗させることにしたのじゃ。」

「ついでぇ?俺たちに何かあったらどうするつもりだったんだよ?」

「そなたらがこのような輩に負けるはずがなかろう?竜食いの英雄と魔王を倒した奴が賊に勝てぬというのか?」

「でも、ドッキリはひどくない?」

「これぐらいのことで文句を申すな。これから挑むダンジョンはもっと大変じゃぞ?覚悟をしておけい!」


 ドッキリよりひどい目にあうとか、どんなダンジョンだ?


「姐さん?もうええか?そろそろ、ずらかろうや!こないなとこで立ち話すんのもなんやし、飲みながらでも話の続きしようや!」


 飲みながらというのはもちろん酒のことなんだろうけど、まあいいや。腹も減ってきたし、早く出よう。
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