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第4章 勇者の剣と剣の巫女

第213話 魔王の真価

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「エルちゃんを放せ!」


 魔王の腕はちぎれたままの状態でエルちゃんの首を締め上げている。腕の大きさや腕力の事を考えると、普通なら一瞬で粉砕されてしまいそうだ。でも、エルちゃんが持ちこたえているあたり、彼女もアクセレイションで力を増幅させて耐えているのだろう。


「今助ける!霽月八刃!」


 魔王の腕を真っ二つにする!この技で斬りつければ、例え魔王でも腕が再生不能になるはず。


(ブシュウウウゥ!)


 黒い血しぶきを上げて切れ目が走っただけで、腕は消滅には至らなかった。でも、腕の力が弱まったみたいで、エルちゃんは腕からの束縛から逃れた。


「ううっ……、げほっ、げほっ!」

「大丈夫か、エルちゃん!」


 エルちゃんは苦しそうにしている。苦しそうにしているだけで、怪我はしていないようだ。首の骨が折られたりしてないかと、ヒヤヒヤしたが杞憂だったようだ。


「大丈夫です……勇者様。私はまだ戦えます。」

「でも、無理はしないでくれよ。」


 援護してくれるのは助かるが、彼女は武術の経験が浅いので無理はさせたくはない。狐面から多少の手解きをして貰ったようだが、実戦経験がまだ少ない。そんな段階で魔王なんて化け物と相対しなければいけないんだから、色々無理が出てくる。とはいえ敵もこちらの都合なんてお構いなしだ。


「チクショウが!痛えじゃねえか!」


 魔王が痛みを訴えている。その姿を見るといつの間にか首が胴体の所に戻っていた。傷跡すらない。でも、腕はそのまま、斬れたままになっている。


「痛えってことは、コアにダメージが入ってるってことか!ゴズのコアを消滅させたってはどうやら本当みてえだな。」


 腕をくっつけるのかと思いきや、傷口の所から腕が突然生えてきた!切り落とされた方の腕は黒い煙になり消滅した。


「付け直すよりも再生した方がマシだとはな、ムカつくぜ!この痛みのツケはたっぷりと払って貰うからな!」


 まさか霽月八刃で腕を再生不能に出来ないなんて!この前は不完全な魔王だったから、壊れた状態のコアだったから効いただけなのか?痛いって言ってるって事はコアにダメージは届いているんだろうけど、決定打にはなってない。アイツを倒すには絶空八刃を使うしかないのか?……でも、今持っている刀では技の負荷に耐えきれないんじゃないのか……。
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