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第5章 完成!究極の超次元殺法!!

第284話 とんだ思い違い

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(パキィィィィン!!!)


 闘技場内に澄んだ金属音が鳴り響いた。何が起きた?現在はジュリアとの戦闘中だが、今は幸い間合いも空いているし、アイツ自身も音に気を取られていた。俺もつられて音のした方向を見る。


「参った。僕の負けだ。」


 視線の先にはガンツがいた。ヤツの鎧は綺麗に真っ二つになっていた。だというのにヤツ自身の体は傷一つ付いていなかった。こんな不可思議な現象を起こせるのは自分の相方しかいない。ヤツめ、また何かとんでもないことしでかしやがったな!


「ダーリン!……そんな、嘘でしょ!」

「すまない、ジュリア。これは負けを素直に受け入れざるを得ない。僕の防御術は完全に破られてしまった。お手上げだ。」

「おおーっと、ガンツ選手は降参を決定したようです!」


 ガンツは盾と斧から手を放し、両手を上に上げている。負けたとはいえ、随分とすがすがしい表情をしている。俺の相方が起こした現象を賞賛するかのようだ。


「ジュリア、君は気にせずファル君との決着をつけるといい。彼もそれを望んでいるはずだ。」

「俺も手は出さない。ファルが負けてもだ。ファルが負けた時点で俺達は負けでもいい。だから、絶対負けんじゃねえぞ、ファルちゃんよ!」

「ロア選手はガンツ選手を下しましたが、試合に関わらない模様です!ここからはジュリア選手とファル選手の一騎打ちにもつれ込むようです!」


 相方はこの試合にこれ以上、関わらないつもりのようだ。しれっと俺にプレッシャーをかけてきやがった。もちろん、俺も負けるつもりはない。


「くうっ!ダーリンの仇は必ず取る!行くわよ!」

「バカ言え!俺は仇じゃねえだろうが!」


 その一言が再戦の合図となった。互いに全力の一撃をたたき込む。互いの武器が鉢合わせる結果となった。激しい金属音が闘技場にこだまする。


「力の勝負じゃ、アンタに勝ち目はないんだからね!」


 その言葉通り、俺の方が押し戻される結果になっている。


「そんなこたぁ、わかってんだよ!」


 わかっていた。だからこそ、この瞬間を待っていたんだ。今の一瞬に残りの全てを賭ける。剣を片手で持ち、右手の平を相手の腹部に向ける。


「これで決まりだ!ヴォルテクス・ブロウ!」


 近距離用に調整した風魔法を放つ。射程は短いが、近い間合いならヴォルテクス・カノンに匹敵する威力がある。発生した爆風に耐えきれるはずもなく、ジュリアの体は吹き飛び、闘技場の壁に激突した。俺はすかさずジュリアを追いかける。風魔法を使い、瞬時に追いつく。


「どうだ、まだ続けるか?」


 倒れたジュリアに剣を突きつける。これ以上、戦うようなら、容赦なく攻撃を加えるつもりだ。


「ちょっと、ひどくない?……魔法で攻撃をしないんじゃなかったの?」

「誰がそんなことを言った?俺は近距離戦を挑むことに決めただけだ。剣だけで戦うとは言ってないからな。剣を囮に魔法を使っただけだ。勝手な思い込みをしたお前が悪い。」


 性懲りることもなく、倒れたままで落とした戦槌を手にしようとしている。やれやれ、諦めの悪いヤツだ。


「おっと、そう簡単に取らせると思うか?」


 軽く風魔法を放ち、戦槌を遠ざけた。そして、改めて、降伏勧告をする。


「どうだ、まだ続けるか?」

「クソっ、ホント、ムカつくわアンタ!」

「降参でいいんだな?」

「わかったわよ、降参する!」


 往生際は悪かったが、ようやく負けを認めたようだ。これで俺達の勝利は確定した。
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