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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第293話 嵐の予感
しおりを挟む「エレオノーラ選手が倒れるなど、一波乱ある試合が展開されましたが、会場の盛り上がりもピークに達しております。次は本日の二回戦最後の試合となります!」
次はエドとジェイの出番だ。ホントはエルちゃんの側にいてあげたいが、狐面に「無問題!」の一言で追い返されてしまったので、そのまま試合観戦することに。彼女の心配もしなければいけないが、エド・ジェイの心配もしないといけない。相手は“あの男”だからだ。
「最後の試合はあの方が満を持しての登場です。大武会優勝の常連、グレートチャンプ、黒衣の貴公子エドワード・イグレス選手です!」
暗くなっている入り口の方から足音が聞こえてくるが、中々姿が見えない。黒い鎧を着てるから全然見えてこない。しかし、徐々に見えてくると、何かおかしいことに気付いた。
「おおっと、どういうことでしょう!エドワード選手が二人!二人になっています!目の錯覚でしょうか?」
トレードマークの全身黒づくめの甲冑に身を包んだ男が二人並んで現れた。あれ、ジェイは?……でも、片方をよく見ると鎧の隙間から、毛皮がチラリと見えている。ジェイがエドと同じ甲冑を着ているのか?ざわめく会場をよそに、毛皮が見えている方が踏ん張るようなポーズをとると、全身の甲冑がバラバラと外れ落ちた。そして、最後に残った兜を脱ぎ捨て、ジェイが姿を現した。
「おお~っと!?何ということでしょう!ジェイ選手が姿を現しました!何というサプライズ、何というニクい演出なのでしょう!さすが実績のある選手、ファンの心を掴んで離しません!」
入場パフォーマンスまでしやがるとは!やっぱ常連は違うなあ。俺もなにか考えとくか?ビックリドッキリな演出をやってみなくては、勇者の名も廃るモンよ!
「ジェイ選手はエドワード選手と並ぶ、大武会の常連で、彼とも死闘を演じてきたライバル同士でもあります。しかし、二人組制となった本大会では夢のタッグが実現しました!まさに最強のコンビです!」
あの二人もライバル同士、同僚同士のコンビか?俺とファルちゃんも似たようなモンだな。同僚ではないけど。
「対するは、今大会のダークホース、たった一人で東洋からやってきた謎の刺客、ジン・パイロン選手です。ご入場願います!」
司会がコールするがあの男は姿を現さない。気配すらない。何してるんだ、あのジジイ。逃げるなんて事はないだろうから、飽きたから帰ってしまったのだろうか?
「オイ、見ろ!アレがそうじゃないのか!」
ファルちゃんの視線の先には人影が見える。しかも、観客席の更に上の外壁の部分に誰かがいた。長い三つ編みにした白髪が風になびかせているのが辛うじてわかる。間違いない、アイツだ!人影が何を血迷ったか、その場から飛んだ!
「おいおい、無茶だろアレ!」
俺が驚いているうちに、人影が観客席を余裕で飛び越え、闘技場の中心部にまで到達した。
(……っ、トン……。)
着地音は驚くほど静かだった。その場で軽く足踏みしたぐらいの音しか聞こえなかった。着地の衝撃を体術でほぼ完全に相殺したんだ!しかも、あんな高さから飛び降りて、何事もなかったようにその場にたたずんでいる。俺にはそれだけでヤツの恐ろしさを垣間見てしまった。
「おおおおお~~っとぉ!!!パイロン選手、なんと大胆な登場の仕方をするのでしょうかぁ!見たことも考えたこともありません!さすがは本大会のダークホース!恐るべしです!」
「なんだいありゃ!ほとんど魔術じゃねえか!」
ファルまでうろたえている。魔法以外での超人絶技を目の当たりにしたためだろう。確かにあの芸当は魔法じみている。人の領域を逸脱している。ここまで来ると最早人間ではない。
「では、両者揃ったところで、試合を開始します!」
これから、東西の実両者同士の試合が始まる。でも、不安でいっぱいだ。エド達を信じていないワケじゃないが、恐ろしいことが起きるような気がする。
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