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第3章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派【灰と青春と学園モノ!!】
第177話 ガッツリ食堂タニちゃんマン!?
しおりを挟む「アニキ、紹介するでヤンス! タガメおじさんでヤンス! ガツ森グループの社長でヤンスよ。」
学院での生活に慣れてきた頃、タニシの野望が一歩前進することになった。なんと、ガツ森のフランチャイズ店を構えることになったのだ!
「どうも、勇者さん! うちのタニシがお世話になってるガンス! 評判はタニシから聞いてるでガンスよ!」
店を構えるということで、アドバイス等を受けるために社長をやっているタニシのオジサンに来てもらったのだ。当然、オジサンもコボルトで、体格や背格好はよく似ていて、毛の色に違いがある。赤・黒・白が混じり合った複雑な毛色をしている。
「わざわざ来てもらってスンマセン。これがタニシや俺らの大きな一歩になると思うんで、お力添えをよろしくお願いします!」
オジサンの年齢は五十を超えてるらしいが、ぶっちゃけコボルトの年齢はわかりにくい。タニシと同じくらいにしか見えない。それと……コボルトは語尾が特徴的になるのが常識なんだろうか? ガンスって……?
「いやあ、アッシとしても初めての試みなんで、気合いが入ってるでガンスよ。魔術学院に初出店てことになるんで、色々、交渉も手間取ったガンス。」
俺たちの店はベヒモス料理で大きな結果を残し、評判を得た。一学生が始めた商売でこれほど成功した前例はないらしい。そもそも商売しようってヤツもいないのだが。
「でも、スゴいっすよ。学院の石頭連中をなんとか言いくるめたんでしょ? なかなかできないっす。」
学院内には飲食店などは存在してはいるが、あくまでセレブ向けの店が大半を占めていた。俺らはその傾向に反旗を翻す意味で、低価格路線を進めることにしていた。ベヒモス肉は高級食材だったが、値段は低価格に抑えて人気を博した。
「交渉事はアッシらの得意技なんで。一度、土俵に上げちまえば、インテリであろうと最終的には首を縦に振るでガンス。」
「さすがおじさん! カッコいいでヤンス!」
あくまでこれは宣伝活動であり、第一段階の戦略だった。これはタニシの考えた作戦である。ヤツも学んだことを着々と発揮し始めているのだ。
「学生さんも若い人の方が多いだろうから、ガッツリ系の食べ物を腹一杯食べてもらいたいでガンスよ! 安い、早い、うまいの三拍子のガツ丼が受けないはずはないでガンス!」
現状では庶民出身の学生の食生活は侘しい。食堂は高額で使えないし、売店で売られているのもあんまりおいしくないパンぐらいしかまともに売ってない。俺らもそれを買って凌いでいたが、結構ツラかった。旅の途中の保存食の方がまだマシだった。
「限定メニューで押していけば間違いないでヤンス! ベヒモスメニューとアニキとロッヒェン君の東西グルメ激突シリーズを展開すれば、客も途絶えないでヤンス!」
俺とロッヒェンは期間限定の創作メニューで協力することになっている。対決という名目でそれぞれメニューを考案し、客にはおいしい方に表を入れてもらい勝敗を決める。勝った方はレギュラーメニューに採用されるという。大変だが学院の環境を変えるためだから、協力を惜しんではいられない。
「ゆくゆくはオールナイト営業も考えてるでヤンス! 学生さんは徹夜して勉強したりする事も多いでヤンスし、先生の中にも夜通し研究を続けてる人もいるでヤンス。合間の一息に使ってもらえる店を目指すヤンス!」
夜通し営業とか正気を疑ったが、実は以前行ったことのあるノウザンウェルの店舗は、二十四時間営業だったらしい。あの時はゲンコツのおっちゃんの食べっぷりにばかり目が行っていたので見逃していた。思いつくのは簡単だろうが、維持が難しそうだなとは思う。俺だったら……やらないかな。普通に寝たいし。
「アルバイトも募集すればみんなやってくるでガンしょ。お金に困ってる学生さんもいるはずでガンス。」
今、俺らの所に集まってきている学生の中には生活費で苦しんでいるヤツもいる。働いて稼ぐ環境も作れば、お金が原因で退学なんて悲しい結末になる確率は減るはず。
「そういえばタニシ、店名は決まったのか?」
もちろんフランチャイズなので、ガツ森の屋号は入る。とはいえ、独自のメニューも出したりするので、オリジナルの屋号を入れることになったのだ。
「当然でヤンス! その名も……“タニシ食堂”でヤンスよ!」
なんだ以外と普通だな……。タニシにしてはまともというか。“ガッツリ食堂タニちゃんマン”とかになりそうと予想していたんだが……。まあ、いいか。本人の考えたことだし。シンプルでいいじゃないか!
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