目指すは師匠の助手です!規格外な戦闘系少女は、魔術師になりたい~大魔術師の弟子ですが、腹黒な兄弟子がいるとか知りませんでした~

百門一新

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兄弟子との関係は最悪ですが、出発です

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「何?」
「ぷっくくく、ユキちゃん気にしないで。ロイってばすごい魔術師だからさ。そんなふうに話しかけられることなくて、ふふっ、反応に困っているんだと思う」
「なんだ、そんなことか」
「『そんなこと』じゃねぇよ」
「おや、名門貴族なのにそんな言い方していいのかな――ぐふっ」

 ユーファの頭が沈んだ。

「容赦なく殴るとか、最低だ!」
「……お前は、俺が怖くないのか?」
「そっちのこと知ったの、今だもん。よく知らないし」

 ユキは腰に手をあて、どーんっと胸を張った。

 一層仏頂面になったロイの後ろで、ユーファが大笑いする。

「――師匠、いい度胸した野生児の弟子を入れたもんですね」
「これこれ、ロイ」
「ボクは野生児じゃない!」
「じゃあ世間知らずだ」

 ユキは、こいつ、と思って青筋を浮かべた。

(ボク、こいつのこと大嫌いだっ)

 優秀な魔術師らしいが、魔術学校で世話になった教師たちみたいに教えてもらいたいという気持ちは、これっぽっちも起きない。

 すると、なだめるみたいにライファスが目線の高さを合わせてきた。

「師匠っ」

 ユキの目にぱっと明るさが宿る。

「外に出る時に別行動をとるのは、初めてだろう。不安はあるだろうがロイは優秀な魔術師でもある。無理をしないように、頑張りなさい」
「はい! ボク、せいいっぱい頑張ります!」

 まさかの兄弟子がいた。そのうえ性格が悪いときているロイは気に食わないが、ライファスの二番目の弟子として彼と協力して依頼はきちんとこなす。

 師匠が引き合わせてくれたおかげでチャンスがきた。

(ボクも、魔術師になれる)

 魔術師学校の卒業は、そのまま魔術師を目指すものは、卒業試験を終えたら魔術師のスタートラインに立てる。

 あとは、卒業後に初依頼をこなすことが条件だ。

 ユキは、すぐにでも取り掛かりたい気持ちがあった。

(師匠も今日にでも出発するみたいだし、ボクも行く!)

 魔術師の証がもらえれば、魔術師の『助手』になれる。誰にも文句を言われずずっとライファスのそばにいて、そしてユキは彼の役に立つのだ。

 すぐ支度にとりかかることになった。

 ライファスとロイが依頼関係と流れについて確認し合っている間に、ユキはユーファと、しばらく留守になる家の片付けなど行った。ユキは基本的に師匠の指示に従う立場なのだが、ロイとユーファも似たような関係らしい。

「実力者が指揮官、みたいな感じかな」
「ふうん」

 ユーファはお喋りにも付き合ってくれた。何をすればいいのか聞きながら、浮遊魔法を使って手伝ってくれる。

 おかげで普段よりしっかりとする戸締りも、早く済んだ。

 みんなで外に出た時、日差しは正午から少し傾いたくらいだった。

 魔術師学校のほうから祝いの花火の音が聞こえてきたので、卒業を祝うパーティーが始まったのだろう。

「ユキ、出なくてよかったのかい?」
「ううん、ボクはいいや」

 仲良くしてくれた子もいるが、多くはそうではない。それに卒業試験をみにきた魔術師たちとの交流会のようなパーティーだというのは聞いていた。

「こういう日くらいゆっくりすべきなのだろうが、落ち着かなくてすまないね」
「いえいえっ、師匠の外出の用事ってラスフィールドだったんですね。ボク、いつも数日お留守番だったから、今度は一緒に外に出られて嬉しいです!」

 王都にいると大魔術師への用件も多くあった。

 場所によっては用心棒業も休みとなり、ユキは迎えにきた魔術師たちに師匠を任せて留守番をした。魔術師でもない場合には入れない場所もたくさんあったから、治安がよく、そして重要な国立機関も集まっている王都だと留守番は結構ある。

「ユキ」

 それではと別れようとしたところで、ライファスが呼び止めた。

「はい?」

 振り返ると微笑むライファスのブルーの目が、揺れるのが見えた。

「師匠?」
「なんでもなんだ。お守りは外さないようにね?」
「もちろんですよ」

 外に出る時は気をつける必要があるし、縁起がいいものならつけておいて損はない。

 それに、これがあるからユキは師匠と離れることに不安はなかった。

 血の繋がりはないけれど、出会ってから彼と積み上げてきた年月が『お守り』にもある気がして、あれば不安なんて飛んでいく。

「私も早めに用事を済ませられるようにしよう。ユキ、それからロイも、そしてユーファ君も気をつけて行くんだよ」

 ライファスが背を向けた。出会った頃にも綺麗だと思った白髪が、やはりまるで雪みたいだとユキは思った。

          ◆◆◆

 王都は賑わいに溢れていた。

 魔術師学校の卒業式とあって、各国から偉い魔術師や関係者たちも集まっているからお祭り騒ぎに近い。馬車が何台も通れる大通りも人が大勢いて、客を呼び込む声が周囲からは聞こえてきて活気がある。

「ユキちゃん、大魔術師様からお守りプレゼントされたの?」

 歩きだして間もなく、ユーファが肩越しに見てくる。彼の隣にはロイがいて、ユキはやや後ろからついて歩いていた。

「うん」
「羨ましいなぁ。僕は母からももらえなかったよ。愛情たっぷりだね」

 やはりそう思うようだ。

 ユキもそう感じていたので、上機嫌になった。

 幼い頃、ライファスからお守りだと言われ、エメラルドの原石を結び付けたお手製のネックレスをもらった。

 宝石の原石だなんてとびっくりしたが、それはユキの初めての、本物の宝物になった。今は身につけているのが当然になっていて、歩みに合わせてお守りのネックレスが服の下で、胸元の間で揺れている感触も心地いい。

「子供だな」
「何か言った?」

 ムカッとしたユキが睨み付けた時、ユーファが慌てて間に入る。

「ささっ、向こうの転移ゲートからいくつか超えていかなきゃいけないから、港がある町まではぐれないようにね! 魔術師学校の卒業パーティー中の今がチャンスッ、今なら船もすいているから、港までパパッといくよ!」
「あっ、それで今日すぐ来たの?」
「そうそう。おかげで、観光地のラスフィールドも平和だろうしね」

 転移ゲートは大地の魔力をうまい具合に利用し、設置されている。昔あった精霊の通り道に便乗させてもらっている形なのだと聞いたことがあるが、ユキは詳しい仕組みはよく分からない。

 お金はある程度かかるものなだが、一年間の利用を買い取るか、それなりに資格を与えられた魔術師は使い放題なのは知っている。

 ロイとユーファも後者のタイプだったようだ。

 ユキは、二人について歩き、どんどん転移ゲートをくぐっていった。あっという間に王都を出て、そうしてエバナスという港を持った大きな町に辿り着いた。
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