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第1話 「復讐の紅」
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ーー響き渡る轟音。草木を焼き尽くす業火。悲鳴。絶望。それらを全て押しのけて、逃げ惑う人々を押しのけて、戦乱の渦中、一人の少年が人々の進む逆方向へと走っていた。何かを求めて血眼で走っていた。少年は道を外れ、人気のない森へと入る。彼は酷く心配していた。たった単身で、自分を先に逃がしてくれた母親の事をー。
(母さん...!)
母親は勇敢で強い人だった。女手一つで、少年を育ていた。母親は、天魔の戦争から人類を守るために作られたとある組織の人間だった。剣術の達人で、いつも少年に剣術を教えていた。憧れ。心の支え。少年にとって、たった一人の大切な人だった。そんな母親が。
家に突然攻めてきた謎の存在。巨大な鎌を担いでいた男は、不気味な仮面をつけていた。仮面の男は、突入してくるや否や急に襲いかかってきたのだ。母親はそれを払いのけ、『先に逃げろ』とー。そう言って少年を逃した。しかし、少年はそれを無下にする程の「嫌な予感」を感じていた。狼狽し、ただただ逆戻りを続けた。我が家へ。母の元へ。
ーそこに、少年の元へ何者かが追ってくる。悪魔達が少年を狙って追ってきたのだ。合計三体。そのうち二体は小型の悪魔、もう一体は中型の少し大きい悪魔だった。いかにも悪魔らしい見た目の悪魔達だ。悪魔達にとって、殺しの対象に年齢、性別、種族は関係ない。仲間以外に容赦なく襲いかかる殺戮兵器なのだ。槍で穿とうとする悪魔の攻撃を少年はなんとか避けつつ、無我夢中で走った。しかし、そのせいで元のルートとは大きく逸れてしまった。
ーーーそして少年はようやく足を止めた。息を切らし、絶望の目で足元を眺めていた。足元にあったのは断崖絶壁、崖の上だった。とうとう追い詰められてしまったのだ。遥か下の森は大きな山火事になっている。そこには目的地の少年の家もあった。
(やるしかない...!)
少年は覚悟を決め、腰に携えた刀を抜く。
(ここで...死んでたまるか!)
伊達に剣術を教わってはいない。少しずつにじり寄る悪魔達と睨み合う。少年は最初に襲ってきた小型の悪魔の攻撃を見切り、そして見事斬り伏せた。もう一体襲いかかった小型の悪魔とも応戦する、その時だった。中型の悪魔が槍を構え、そして小型の悪魔とは比にならないスピードで近づき、槍を大きく振るった。少年は避けきれず、吹き飛ばされてしまった。衝撃で地面にヒビが入り、少年は落ちるまで残り数十センチのところまで飛んだ。間髪入れず、中型の悪魔が口から熱線のビームを発射した。今度は少年を狙わず、足元の崖をビームで焼き切る。
(!!!)
崖の一角が音を立てて崩れ始め、少年も共に奈落へと落ちてしまった。悪魔達は少年の姿が見えなくなったところで、追うのをやめた。
ーー深い森の中。少年は目を覚ました。どうやら振り切れたようだ。しかし、体の損傷が激しい。ゆっくり庇うように、歩く。少年の目の前に燃え盛る我が家が見えた。
(家が...!)
少年は炎の中に突入する。
「母さん!どこにいるんだ!?」
炎の中母親を探していると、屋上から剣戟のような音が聞こえる。
やっと家の屋上についた少年は、ついに母親と再会した。しかし、少年の"嫌な予感"が的中していた。母は未だ、仮面の男と戦っていた。満月の妖光に照らされて不気味な輝きを放つ仮面と鎌。青い光の中に、赤い液体が混じる。仮面の男の方が優勢で、母親は傷だらけで、すでに瀕死の状態だった。
「母さん!」
「!!」
母親がこちらに気づく。目を逸らした隙に吹き飛ばされた。少年がその体を受け止める。
「...馬鹿!あんた、先に...逃げろって...言ったでしょ!?」
「母さんを一人置いていけねえ!俺も戦える!母さんを守るんだ!」
「あいつには敵わない...いいから...逃げて!」
「!!...でも...っ!」
母親は一呼吸置いて、最後の力を振り絞って話した。
「いい...あんたは強い子。でも...その前に...あんたは私の...唯一無二の大事な子。だから...母さんと約束。絶対に...死なないでね。生きて、幸せになって。"ジーク"...」
「母...さん...?」
ジークと言う名の少年は、母親の気迫を感じ、それが最後の言葉かのように語っているのに気づいた。
認めたくない。大切な存在を失うなんて。まだどこかで手当てすれば助かるのでは...
そう考えた次の瞬間。背後から鎌が回転しながら高速で飛んできた。その凶刃が母親の背部から腹部にかけて突き刺さった。大量の血が吹き出る。ジークは返り血を受けた。
「あー、家族ドラマ中申し訳ないんだけど、僕はそこまで悠長じゃないんだ。」
鎌を遠隔で引き抜き、手元へ引き寄せ、手に取る。
「ん~~やっぱり強いヤツと殺りあうのは格別だなぁ...」
「にしても、君も馬鹿だねぇ。せっかく君の母さんが逃がしてくれたってのに。なんで戻ってきた?ん?魔でもさしたのか?...ククク.....」
ーー放心。もはやジークにその声は聞こえていない。様々な感情が渦巻いていた。悲しみ。怒り。憎しみ。喪失感。穴。自分の大切な人は、自分の幼さのせいで。自分の心が弱いせいで。自分の力が弱いせいで。目の前で、死んだ。
ーー抑えきれない程の膨大な感情が溢れ出る事は、この幼い少年にとって明白な事だった。
「うわああああああああああああ!!!!」
「クハハハハ!!いいねぇ!その顔が人間のする顔で一番好きな顔だ!混沌に満ちた、その顔がなぁッ...!」
脱力。終わった。そう思い、うなだれたジークだったが、同時に湧いてくるのは大切なものを奪われた怒り、憎しみだった。ジークはゆらりと立ち上がり、刀を取ると、猛スピードで近づいた。そして、仮面の男へ振りかざした。
ーー刃が通らない。男の鎌によって防がれてしまった。
「...人間のガキごときの攻撃が、通るわけねぇだろ?」
衝撃波を受け、吹き飛ばされる。そのまま壁に頭を激突し、ジークは意識が朦朧としていた。
一方、仮面の男は、「何か」に勘付いていた。
(いや...ガキにしてはあまりにも重い一撃だった...それに、ちらっと見えたあの"眼"の紋章...)
「ククク...やっと見つけた。」
仮面の男はニヤニヤと、嬉しさと期待を混じらせた笑みを浮かべているのが仮組み面越しに分かる。
「君、なかなかやるじゃあないか...。では、君の未来を見込んで、僕のこの"能力"を少し分けよう。この力を使えば、君は強くなれる。また強くなってこい。」
「そしたら今度は...たっぷりいたぶってやるよ。」
すると仮面の男は指先から怪しげな光線を放つ。そしてそれは、ジークの左目を貫通した。
「!!」
想像を絶する激痛。ジークは絶叫した。
「ぐ、ぁあぁああぁあぁああああ!!!!」
ジークは目を押さえて転げ回った。左目から血が大量に流れ出ている。目の下にはタトゥーのようなマークが現れた。
ーー暫く転げ回った後、ジークが落ち着き、よろめきながらも立ち上がった。光線を受けた左目は、夜の闇を切り裂くほど煌々と紅く光っていた。
「...成功、かな...。でもまぁ、殺すのはまだ早い。ゆっくりお休み。ククク...」
ジークは再び反撃しようとするが、抵抗もままならず、ジークは痛みと大量の出血、心身の疲弊により、そのまま失神して倒れてしまった。頭の中に、あの仮面の男の、気味の悪い笑い声だけが響いていた。
ーージークは目を覚ました。もうすでに夜が明けていた。慌てて辺りを見回すと、既に仮面の男の姿はなく、目に移ったのは事切れた母の姿だった。ジークは号哭した。悲しみに明け暮れた。後悔の念でいっぱいだった。
「くそ...くそっ!!もっと俺が強ければッ...!」
行き場のない怒りからひたすらに地面を殴る。もう誰も助けてはくれない。誰も支えてはくれない。"唯一無二"を失った悲しみは底知れなかった。
ーふと、鏡の破片が落ちているのを見つけた。鏡に映っていたのは、左目が変容した自分の姿だった。
「『これ』は...」
その時、焼きついていた仮面の男の声がフラッシュバックする。
『僕の"能力"をあげよう。この力を使えば、君は強くなれる。また強くなってこい。』
自分の中で理解し、繋がる。自分が何をすべきかを。何を求めるべきかをーー。
ーー数日後。戦死者達の葬儀が執り行われた。天候は生憎の雨。粛々と立ち並ぶ墓石達、その中の一つの前に、ジークは傘をさして一人ぽつんと立っていた。右手には母の形見の"マフラー"を握りしめていた。
そして、母に言い聞かせるよう語った。
「母さん、待っててくれ...必ず...」
「必ず...『復讐』を果たしてやる。」
墓を後にするジーク。その眼は、紅く光り輝いていた。
to be continued...
(母さん...!)
母親は勇敢で強い人だった。女手一つで、少年を育ていた。母親は、天魔の戦争から人類を守るために作られたとある組織の人間だった。剣術の達人で、いつも少年に剣術を教えていた。憧れ。心の支え。少年にとって、たった一人の大切な人だった。そんな母親が。
家に突然攻めてきた謎の存在。巨大な鎌を担いでいた男は、不気味な仮面をつけていた。仮面の男は、突入してくるや否や急に襲いかかってきたのだ。母親はそれを払いのけ、『先に逃げろ』とー。そう言って少年を逃した。しかし、少年はそれを無下にする程の「嫌な予感」を感じていた。狼狽し、ただただ逆戻りを続けた。我が家へ。母の元へ。
ーそこに、少年の元へ何者かが追ってくる。悪魔達が少年を狙って追ってきたのだ。合計三体。そのうち二体は小型の悪魔、もう一体は中型の少し大きい悪魔だった。いかにも悪魔らしい見た目の悪魔達だ。悪魔達にとって、殺しの対象に年齢、性別、種族は関係ない。仲間以外に容赦なく襲いかかる殺戮兵器なのだ。槍で穿とうとする悪魔の攻撃を少年はなんとか避けつつ、無我夢中で走った。しかし、そのせいで元のルートとは大きく逸れてしまった。
ーーーそして少年はようやく足を止めた。息を切らし、絶望の目で足元を眺めていた。足元にあったのは断崖絶壁、崖の上だった。とうとう追い詰められてしまったのだ。遥か下の森は大きな山火事になっている。そこには目的地の少年の家もあった。
(やるしかない...!)
少年は覚悟を決め、腰に携えた刀を抜く。
(ここで...死んでたまるか!)
伊達に剣術を教わってはいない。少しずつにじり寄る悪魔達と睨み合う。少年は最初に襲ってきた小型の悪魔の攻撃を見切り、そして見事斬り伏せた。もう一体襲いかかった小型の悪魔とも応戦する、その時だった。中型の悪魔が槍を構え、そして小型の悪魔とは比にならないスピードで近づき、槍を大きく振るった。少年は避けきれず、吹き飛ばされてしまった。衝撃で地面にヒビが入り、少年は落ちるまで残り数十センチのところまで飛んだ。間髪入れず、中型の悪魔が口から熱線のビームを発射した。今度は少年を狙わず、足元の崖をビームで焼き切る。
(!!!)
崖の一角が音を立てて崩れ始め、少年も共に奈落へと落ちてしまった。悪魔達は少年の姿が見えなくなったところで、追うのをやめた。
ーー深い森の中。少年は目を覚ました。どうやら振り切れたようだ。しかし、体の損傷が激しい。ゆっくり庇うように、歩く。少年の目の前に燃え盛る我が家が見えた。
(家が...!)
少年は炎の中に突入する。
「母さん!どこにいるんだ!?」
炎の中母親を探していると、屋上から剣戟のような音が聞こえる。
やっと家の屋上についた少年は、ついに母親と再会した。しかし、少年の"嫌な予感"が的中していた。母は未だ、仮面の男と戦っていた。満月の妖光に照らされて不気味な輝きを放つ仮面と鎌。青い光の中に、赤い液体が混じる。仮面の男の方が優勢で、母親は傷だらけで、すでに瀕死の状態だった。
「母さん!」
「!!」
母親がこちらに気づく。目を逸らした隙に吹き飛ばされた。少年がその体を受け止める。
「...馬鹿!あんた、先に...逃げろって...言ったでしょ!?」
「母さんを一人置いていけねえ!俺も戦える!母さんを守るんだ!」
「あいつには敵わない...いいから...逃げて!」
「!!...でも...っ!」
母親は一呼吸置いて、最後の力を振り絞って話した。
「いい...あんたは強い子。でも...その前に...あんたは私の...唯一無二の大事な子。だから...母さんと約束。絶対に...死なないでね。生きて、幸せになって。"ジーク"...」
「母...さん...?」
ジークと言う名の少年は、母親の気迫を感じ、それが最後の言葉かのように語っているのに気づいた。
認めたくない。大切な存在を失うなんて。まだどこかで手当てすれば助かるのでは...
そう考えた次の瞬間。背後から鎌が回転しながら高速で飛んできた。その凶刃が母親の背部から腹部にかけて突き刺さった。大量の血が吹き出る。ジークは返り血を受けた。
「あー、家族ドラマ中申し訳ないんだけど、僕はそこまで悠長じゃないんだ。」
鎌を遠隔で引き抜き、手元へ引き寄せ、手に取る。
「ん~~やっぱり強いヤツと殺りあうのは格別だなぁ...」
「にしても、君も馬鹿だねぇ。せっかく君の母さんが逃がしてくれたってのに。なんで戻ってきた?ん?魔でもさしたのか?...ククク.....」
ーー放心。もはやジークにその声は聞こえていない。様々な感情が渦巻いていた。悲しみ。怒り。憎しみ。喪失感。穴。自分の大切な人は、自分の幼さのせいで。自分の心が弱いせいで。自分の力が弱いせいで。目の前で、死んだ。
ーー抑えきれない程の膨大な感情が溢れ出る事は、この幼い少年にとって明白な事だった。
「うわああああああああああああ!!!!」
「クハハハハ!!いいねぇ!その顔が人間のする顔で一番好きな顔だ!混沌に満ちた、その顔がなぁッ...!」
脱力。終わった。そう思い、うなだれたジークだったが、同時に湧いてくるのは大切なものを奪われた怒り、憎しみだった。ジークはゆらりと立ち上がり、刀を取ると、猛スピードで近づいた。そして、仮面の男へ振りかざした。
ーー刃が通らない。男の鎌によって防がれてしまった。
「...人間のガキごときの攻撃が、通るわけねぇだろ?」
衝撃波を受け、吹き飛ばされる。そのまま壁に頭を激突し、ジークは意識が朦朧としていた。
一方、仮面の男は、「何か」に勘付いていた。
(いや...ガキにしてはあまりにも重い一撃だった...それに、ちらっと見えたあの"眼"の紋章...)
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仮面の男はニヤニヤと、嬉しさと期待を混じらせた笑みを浮かべているのが仮組み面越しに分かる。
「君、なかなかやるじゃあないか...。では、君の未来を見込んで、僕のこの"能力"を少し分けよう。この力を使えば、君は強くなれる。また強くなってこい。」
「そしたら今度は...たっぷりいたぶってやるよ。」
すると仮面の男は指先から怪しげな光線を放つ。そしてそれは、ジークの左目を貫通した。
「!!」
想像を絶する激痛。ジークは絶叫した。
「ぐ、ぁあぁああぁあぁああああ!!!!」
ジークは目を押さえて転げ回った。左目から血が大量に流れ出ている。目の下にはタトゥーのようなマークが現れた。
ーー暫く転げ回った後、ジークが落ち着き、よろめきながらも立ち上がった。光線を受けた左目は、夜の闇を切り裂くほど煌々と紅く光っていた。
「...成功、かな...。でもまぁ、殺すのはまだ早い。ゆっくりお休み。ククク...」
ジークは再び反撃しようとするが、抵抗もままならず、ジークは痛みと大量の出血、心身の疲弊により、そのまま失神して倒れてしまった。頭の中に、あの仮面の男の、気味の悪い笑い声だけが響いていた。
ーージークは目を覚ました。もうすでに夜が明けていた。慌てて辺りを見回すと、既に仮面の男の姿はなく、目に移ったのは事切れた母の姿だった。ジークは号哭した。悲しみに明け暮れた。後悔の念でいっぱいだった。
「くそ...くそっ!!もっと俺が強ければッ...!」
行き場のない怒りからひたすらに地面を殴る。もう誰も助けてはくれない。誰も支えてはくれない。"唯一無二"を失った悲しみは底知れなかった。
ーふと、鏡の破片が落ちているのを見つけた。鏡に映っていたのは、左目が変容した自分の姿だった。
「『これ』は...」
その時、焼きついていた仮面の男の声がフラッシュバックする。
『僕の"能力"をあげよう。この力を使えば、君は強くなれる。また強くなってこい。』
自分の中で理解し、繋がる。自分が何をすべきかを。何を求めるべきかをーー。
ーー数日後。戦死者達の葬儀が執り行われた。天候は生憎の雨。粛々と立ち並ぶ墓石達、その中の一つの前に、ジークは傘をさして一人ぽつんと立っていた。右手には母の形見の"マフラー"を握りしめていた。
そして、母に言い聞かせるよう語った。
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