めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。

hoo

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諦めませんわよ

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 散々な目に遭いましたわ。
 
 マジマンジ皇太子さまが今日はわたくしを家まで送ると仰られて譲らなかったのです。そんなことしてくださらなくていいと何度も申しましたのに。
 
 侍従たちは馬車からマジマンジ皇太子さまが降りてこられたので大慌てでしたわ。
 マジマンジさまのご説明がこれまた問題ありで、わたくしはあれよあれよという間に病人扱いされてベッドへ押し込められました。
 
 本日は夕刻に歴史の講義がありましたのに。もちろんキャンセルされてしまいましたわ。わたくし、歴史の講義だけは好きなのでございます。隠れ歴女なのです。それなのにどうしてこんなことに。残念すぎて泣けてきましたわ。
 
 
 
 翌朝、わたくしはいつも以上に、きっちりと振舞いました。もうすっかり元通りであると周囲に思っていただくため。
 
 当のわたくしは元通りどころか、逃げ出したい心情に拍車がかかってございます。だってそうでございましょう。次期王妃は、けったるがっただけで異常事態あつかい。とんでもねーじゃありませんか。皆、王妃をなんだと思ってらっしゃるのかしら。ロボットじゃありませんのよ。
 ええ、たしかにロボットのように教育されてまいりましたけども。
 
 
 昼時までわたくしの大嫌いな教科を表面上はそつなくこなしまして、やっと束の間の自由時間になりましたので、わたくし早くも疲弊している頭で、懸命に考えました。
 本当にいったい、どうすればマジマンジさまにドン引きしていただけるのか。
 
 同じことをしてまた同じ目に遭うわけにいきません。
 もっと他の手をつかわなくてはならないのです。なんて、他に思いつくことなど、やはり御目の前でヒロインを虐めるくらいしかもうないではございませんの?
 
 まだまだ断片的にしか思い出せないでおりますけども、たしか、あの乙ゲーの中のわたくしはドロボーニャさまを湖に突き落としてましたわね。
 
 この国が誇る最大の自然公園の湖には、アッシーという恐竜たちが住んでおりますの。首長恐竜の子孫で、湖に落ちたあらゆる生物を岸まで送ってくれる、とても都合の良い存在なのです。
 
 ですから皆、あの湖では水難の心配を一切せずに、楽しくボートを出してございますのよ。生物だけではございません。一度わたくしお帽子を風で飛ばしてしまったのですけど、それも無事に岸まで送り届けてもらえました。
 
 あの湖になら、ドロボーニャさまを突き落しても心配ございませんわね。
 
 そうしましょう。
 ええ、さすがに御目の前でわたくしがドロボーニャさまを突き落せば、マジマンジさまのレディーファースト魂は、わたくしから離れて、ドロボーニャさまの心配へとシフトすることでしょう。
 
 
 
 
 ボート日和ですわ。
 
 さっそくマジマンジさまのご都合を伺ってのち、自然公園での遊行にドロボーニャさまをお誘いいたしました。
 いったいあと何回、このしちめんどくさいセッティングを繰り返せばいいのかと本当に嫌になりますけども、明るい未来のためにわたくし決して諦めませんことよ。
 
 さてドロボーニャさまはといいますと今日は三つ返事くらいでいらっしゃいました。彼女も少々嫌気がさしてらっしゃるようですわね。あたりまえですわ。ヒロイン様の攻略対象が何故か最大級の難易度とあらば、ちょっと疲れも出て参りましょう。
 ドロボーニャさま、それも今日かぎりでございますからどうかご安心を。まあ、そのために水浸しにはなっていただきますけども。
 
 
 「ここへ来るのは大変に久しぶりですね。君と初めて来た時を思い出します」
 
 煌びやかな陽光の中、マジマンジさまがわたくしにそう仰ってにっこり微笑まれました。
 
 「マジマンジさま…」
 ですからその麗しいお顔で優しい笑顔を見せないでくださいませ。くらくらしてしまいますわ。きっとこの世のものとは思えない美しさだからですわね。
 
 わたくしの高鳴った心拍とは反対に、穏やかで気持ちのいい風が草原をゆくわたくしたちにそよぎます。辺りからは鳥や動物たちの声しか聞こえません。マジマンジさまとわたくし、マジマンジさまの侍従たち、わたくしの護衛の名目のドロボーニャさまで、本日の自然公園は貸し切りでございます。
 
 時おり、ミナミキツネの親子がわたくしたちの横を走り去ります。向こうには、古代生物シマウマを祖先にもつミズタマウマが低木のまわりに群れております。基本的には人間に害がないとされる動物たちが、この自然公園には生息しておりますのよ。
 
 最後にこちらに来たのはもう六年は前になりますかしら。帝王教育のカリキュラムが激化する直前でございました。
 こうして動物たちを眺めていますと、とても癒されますわね。教育は大方終わって、講義の嵐ならやっと落ち着いてきましたこの頃でございます。もう少しこれからは頻繁に来ましょうかしら。
 
 しかしですわ、もしこのまま王妃になってしまったら、今度は公務ばかりでまた来られなくなってしまいます。なんとしてでも本日こそ計画を成功させなくてはなりませんわ。
 
 
 「マジマンジさま、そろそろ散歩も飽きてまいりませんこと?ボートへ向かいましょう」
 
 さあ、本日のメインイベントの開始でございますわよ。
 
 
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