黒い箱と白い箱

キユサピ

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第5章:きもちのこうかん会

第17話:いろんな「くろいはこ」

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森のひらけた空き地に、小さなテーブルとイスがいくつも並びました。
丸太をくりぬいたイスや、木の葉で飾ったテーブル。
みんなの「すき」が、少しずつ形になって、あたたかい空間をつくっていました。

キツネのソラとクマのモコが声をかけて、
森のどうぶつたちが、ぽつりぽつりと集まってきます。

これは、「きもちのこうかん会」――
しろいはこも、くろいはこも、だれかに見せるためじゃなく、
「ちょっとだけ、となりに置いてみる」ための集まりです。



いちばん最初に話しはじめたのは、ハリネズミのチクチクでした。
背中のとげが、ちょっとだけふるえていました。

「ぼく、こわがりで……森の奥にはひとりで行けなくて、
それがずっと“くろいはこ”にあったんだ。
でも、この前、モコが“いいよ、ぼくもこわいよ”って言ってくれて……」

言葉が途中でつまって、
けれど、そのあと、やさしく笑って――

「そのとき、“あ、出していいんだ”って思えたんだ」



つぎに話し出したのは、シカのミオ。

「わたし、背が高いのがいやだった。
小さいころから、“目立つね”って言われて、ちょっとだけ、さみしかった」

まわりの誰もが黙って聞いていた。

「でも、ある日ソラが“空の色が見えるの、ミオだけだね”って言ってくれて……
なんだか、そのとき、“くろいはこ”が、すこしだけ軽くなった気がしたの」



そして、それを聞いていたみんなが、ぽつぽつと話しはじめました。

「大事なぬいぐるみをなくしたこと」
「ひとことが言えなくて、ずっとくよくよしてたこと」
「さみしくて泣いた夜があったこと」

だれの声も、大きくなかったけれど、
森の風は、そのすべてをやさしく運んでいきました。



ソラとモコは、言葉にしなかったけど、
しっかりと、みんなの気持ちを受けとめていました。

「ルルにも、届いてるかな……」
モコが小さくつぶやくと、
ソラはうなずきました。

「届いてる。きっと。
だって、“くろいはこ”を持ってるの、ルルだけじゃないって、
この森が、ちゃんと知ってるから」



そして、遠くの草むらのかげで、
ルルは、そっとその声を聞いていました。

まだ、顔は出さないけれど、
その目には、わずかな光が映っていました。
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