黒い箱と白い箱

キユサピ

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第7章「ルルが笑った日」

第28話「ありがとうの涙」

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森に、やわらかな日ざしがもどってきたころ。
ルルは、ちいさな“ありがとう”を、心の中で何度もくり返していました。

(……ありがとう。モコ。ソラ。チクチク。みんな……)

ことばにできない気持ちが、
胸の奥のあたたかいところで、ぽつ、ぽつと音をたてるようにふくらんでいきます。

その日、ルルはまた、みんなのもとへ歩いていきました。
まえより、ほんのすこしだけ、しっぽをふわりとゆらしながら。

「ルル、おはようー!」
モコが手をふって走ってきました。
「今日もいっしょに、木の実さがそうよ!」
チクチクも元気な声で続けます。

ソラは、ふとルルの目を見て、すこしだけ笑いました。
「……目が、ちょっとだけ、あったかい」

ルルはうなずきます。
その瞬間、胸のなかの“くろいはこ”が、そっと震えたような気がしました。

「ねえ、これ……」
ルルは、そっと手のひらを差し出しました。

そこには、小さな白いおはじきがひとつ。
こすれた跡のあるそのおはじきは、
ルルが、だいじにしまっていたものでした。

「これね……わたしの“しろいはこ”の、いちばん奥にあったの。
まだ、だいじょうぶじゃないけど……でも、“ありがとう”の気持ちがこぼれたの」

モコとソラとチクチクは、何も言わずにその手を見つめていました。
そして、ルルの目のふちから、ぽろりと、透明な雫が落ちたのです。

「……ありがとうって、こんなにあたたかいんだね」
ルルの声は、まるで春のひかりみたいに、やさしく森にひろがっていきました。

その涙は、さみしさやこわさがほどけたあとに、
やっと出てきた、ほんとうの「うれしい」でした。

そしてその涙は、森の風といっしょに、
みんなの“しろいはこ”にも、そっとあたたかさを届けていったのでした。

──ルルの“くろいはこ”の中に、
ひとしずくの、あたらしい光が差しこみました。
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