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第30話 経験値乱造
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自室に戻れば、ルシアが着替え中だった。
「――!?」
直ぐに扉を閉めた。
……前にもこんな事があったような。うん、あったね。ちゃんとノックをしないとダメだなぁ、俺。
少し待つと扉が開く。
隙間からルシアがこちらを凝視していた。涙目で頬は真っ赤。そう瞳で抗議されると俺は秒殺で謝罪するしかなかった。
「ごめん、わざとじゃないんだよ」
「……もう、次はちゃんとノックして下さいね。お願いしますよ」
「うん、分かった。そ、それよりさ……また廃棄場へ行かないか。どんどんクリスタルを製造して稼ぐんだ。もちろん、レベルアップもする」
誘ってみると、ルシアは頭を下げた。
「ごめんなさい、レイジさん。今日はわたし、枢機卿としてのお仕事があるのです。これでも聖女ですから……その、たまに教会に顔を出さないと怒られちゃうんです」
「そっかあ、残念だな」
帝国アイギスの教会といえば『ハドロン教会』だろう。覚えやすい名前なので印象深く、なんとなく覚えてしまっていた。
「ご一緒できなくて、わたしも悲しいです……淋しいです。この埋め合わせは必ずしますから……」
ショボンと肩を落とす。そんな風に思ってくれるだけ嬉しい。だから、せめてもの餞別として俺はルシアの手を握った。
「息災でありますように」
「ありがとう、レイジさん。とっても嬉しいです!」
元気が出たのか笑顔になるルシアは、テンションを上げていた。良かった、落ち込まれるよりは断然良い。
「俺は製造に行ってくる」
「分かりました。無茶だけはいけませんよ」
「ああ」
「本当に本当にですよ」
「うん」
いつまで経ってもルシアは手を離そうとしなかった。あ、これ……離れたくないヤツだ。目もずっと合わせて来ているし、心の底から淋しいんだ。
「ルシア」
「レイジさん……その、せめて玄関まで」
「分かったよ」
ライトニング家の玄関まで付き添った。ようやくルシアは手を離して、終始こちらを気にしながら教会へ出掛けた。本当に寂しがり屋さんだなぁ。そこがいいんだけど。
◆
ケラウノス騎士団の廃棄場へ向かい、クリスタル製造に没頭した。時々マーカスさんが様子を見に来て、経験値製造の詳細とか過程を説明した。
「――ほう、これが経験値クリスタル。使用するだけで経験値が入るっと。なるほどなあ、楽々レベルアップ出来るスキルってワケだ。こりゃあいい、レベリングが面倒なオレとかには最適だね。レイジ、オレの分も頼むわ」
「いいですよ。マーカスさんにはいつもお世話になっていますし、なによりラティにはお世話になりっぱなしです。その礼がしたいと思っていました」
「んや、金はきちんと払う。それが騎士の礼儀ってモンだ。それに、オレとしてもレイジには活躍して貰いたいんだ、応援しているよ」
肩に手を置かれ、優しい眼差しを向けられた。俺はちょっとジワッと来て、マーカスさんの人の良さに感激した。
「嬉しいです。本当に」
「良いって事さ。お前さんは、いずれ三大騎士の仲間入りをする男と見ている。既に雑兵は脱していると見ているぞ。いいか、レイジ、この国には敵が多すぎる……よ~く見極めるんだ。誰が味方で、誰が敵なのかを」
「助言ありがとうございます。マーカスさんのアドバイスは為になりますよ」
いやいやと照れ笑いするマーカスさんは、背を向けて「じゃ、オレは戻る」と言って廃棄場を去った。毎度ながら親しみ易いなあ。
袋一杯に経験値クリスタルを製造した俺は、ブレアの露店を目指す。
時は既に夕刻。
早くしないと日が沈むのだが――。
「ん、あれは……」
「――!?」
直ぐに扉を閉めた。
……前にもこんな事があったような。うん、あったね。ちゃんとノックをしないとダメだなぁ、俺。
少し待つと扉が開く。
隙間からルシアがこちらを凝視していた。涙目で頬は真っ赤。そう瞳で抗議されると俺は秒殺で謝罪するしかなかった。
「ごめん、わざとじゃないんだよ」
「……もう、次はちゃんとノックして下さいね。お願いしますよ」
「うん、分かった。そ、それよりさ……また廃棄場へ行かないか。どんどんクリスタルを製造して稼ぐんだ。もちろん、レベルアップもする」
誘ってみると、ルシアは頭を下げた。
「ごめんなさい、レイジさん。今日はわたし、枢機卿としてのお仕事があるのです。これでも聖女ですから……その、たまに教会に顔を出さないと怒られちゃうんです」
「そっかあ、残念だな」
帝国アイギスの教会といえば『ハドロン教会』だろう。覚えやすい名前なので印象深く、なんとなく覚えてしまっていた。
「ご一緒できなくて、わたしも悲しいです……淋しいです。この埋め合わせは必ずしますから……」
ショボンと肩を落とす。そんな風に思ってくれるだけ嬉しい。だから、せめてもの餞別として俺はルシアの手を握った。
「息災でありますように」
「ありがとう、レイジさん。とっても嬉しいです!」
元気が出たのか笑顔になるルシアは、テンションを上げていた。良かった、落ち込まれるよりは断然良い。
「俺は製造に行ってくる」
「分かりました。無茶だけはいけませんよ」
「ああ」
「本当に本当にですよ」
「うん」
いつまで経ってもルシアは手を離そうとしなかった。あ、これ……離れたくないヤツだ。目もずっと合わせて来ているし、心の底から淋しいんだ。
「ルシア」
「レイジさん……その、せめて玄関まで」
「分かったよ」
ライトニング家の玄関まで付き添った。ようやくルシアは手を離して、終始こちらを気にしながら教会へ出掛けた。本当に寂しがり屋さんだなぁ。そこがいいんだけど。
◆
ケラウノス騎士団の廃棄場へ向かい、クリスタル製造に没頭した。時々マーカスさんが様子を見に来て、経験値製造の詳細とか過程を説明した。
「――ほう、これが経験値クリスタル。使用するだけで経験値が入るっと。なるほどなあ、楽々レベルアップ出来るスキルってワケだ。こりゃあいい、レベリングが面倒なオレとかには最適だね。レイジ、オレの分も頼むわ」
「いいですよ。マーカスさんにはいつもお世話になっていますし、なによりラティにはお世話になりっぱなしです。その礼がしたいと思っていました」
「んや、金はきちんと払う。それが騎士の礼儀ってモンだ。それに、オレとしてもレイジには活躍して貰いたいんだ、応援しているよ」
肩に手を置かれ、優しい眼差しを向けられた。俺はちょっとジワッと来て、マーカスさんの人の良さに感激した。
「嬉しいです。本当に」
「良いって事さ。お前さんは、いずれ三大騎士の仲間入りをする男と見ている。既に雑兵は脱していると見ているぞ。いいか、レイジ、この国には敵が多すぎる……よ~く見極めるんだ。誰が味方で、誰が敵なのかを」
「助言ありがとうございます。マーカスさんのアドバイスは為になりますよ」
いやいやと照れ笑いするマーカスさんは、背を向けて「じゃ、オレは戻る」と言って廃棄場を去った。毎度ながら親しみ易いなあ。
袋一杯に経験値クリスタルを製造した俺は、ブレアの露店を目指す。
時は既に夕刻。
早くしないと日が沈むのだが――。
「ん、あれは……」
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