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第60話 宮廷アルカディア陥落

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 アザトースのあの力は何だったんだ。
 俺たちはいつの間にか『光の天国ベネディ』へ転送されていた。

「ユメ……。あのヒト……人間を超えている」
「まあ、アザトースのことは考えたらキリがない。それよりフォース、肩車してやる」
「うん」

 フォースを肩車すると、ネーブルが騒いだ。

「ちょ、ちょっと……、ユメ。さっきの闇は何だったの」
「アザトースの仕業だ」
「アザトース……」
「そう、覇王・ナイアルラトホテプの親みたいなものだ。俺もよく分からんよ」
「うーん……。考えないようにした方が良さそうね」
「頼む……って、ゼファ」

 何が何やらと完全にポカンとしていた。

「大丈夫か?」
「す、すみません。あまりのことに驚いていました」
「すまん。さあ、行こう」

 ――と、少し歩いたところで、

「おいおい、探したぞ、ユメ!!」
「よう、シリウス」

「ようじゃねーって。いきなり居なくなるしよォ! なあ、ベテル」
「急にユメさんたちが闇にとらわれてしまいました……不覚でした。申し訳ありません」

 頭を深く下げるベテルギウスだったが、彼女が悪いわけでは無い。

「気にするな」
「ユメっち~!」
「おわっ……」

 背後からプロキオンが突っ込んできた。フォースを肩車しているので、危ないつーの。けどま、これでみんな集合か。

「それじゃ、ユメ。俺たちが護衛するからよ。今度はどっか行くんじゃねーぞ」
「頼む、シリウス」


 夢幻騎士に連れられ、やっと城へ向かった。


 ◆


 【 宮廷・アルカディア 】


 アルカディアの前に到着すると、異変に気付いた。
 それどころか、宮廷がいきなり崩壊し、粉々に吹っ飛んだ。

「…………な!! フィ!!」

「女王様!」「フィラデルフィア様!!」「うそ……」

 夢幻騎士たちも驚いていた。

 そんな中、フォースは冷静にスキル『スペシャルガード』を付与しまくっていた。これで、物理・魔法ダメージ半減。……ってか、そんな急ぐってことは、ヤベェてことだ。

「ゼファ、フル支援を! ネーブルはフォースを守ってやって欲しい」

「了解しました」「了解よ」

 グロリアス系のスキルが全て掛かった。

 ――それから、瓦礫がれきが吹っ飛び、中からフィラデルフィアが姿を現した。どうやら、無事のようだ。


「……やれやれ。余を直接叩きに来るとはな。しかし、幸運よ。夢幻騎士に、ユメたちも来たか。こんな再会ですまぬが、あの敵を何とかせねばならぬ」


 ギッと砂埃すなぼこりの向こうをにらむフィラデルフィアは、おっかなかった。……ありゃ、すげぇ怒ってるなぁ。

 そんな中から、異常な気配が現れた。


『…………』


 ……なんだ、コイツ。
 いや、この気配――魔神か!!!

「おいおい……今までの魔神と大違いの『業気』だぞ!! この前のディオネの比じゃねぇ!! みんな、気をつけろ……!」

 俺は正直、ビビった。
 あんな禍々しいヤツは初めてだったからだ。

「お前は何者だ……!」


『…………私は【Einsアインス】の地位を拝領したミマスだ』


 くっ……。
 コイツ、声を直接脳内に。テレパシーの一種か!

 というか、ヤツはつまり、魔神の一番目ってことか。
 そんなヤツが、『光の天国ベネディ』を襲ってきた……。ああ、くそ、いよいよ徹底破壊ってことか。

「どうする……フィ」
「我がアルカディアを破壊したヤツに代償を払わせねばならぬ。……だが、このまま感情に身を任せて戦えば、国は滅びよう。であれば……」

 フィラデルフィアは、『闇』を展開した。
 純粋な闇が広がり、枝分かれしていく。それらは次第に外界と分離、隔離され、別次元へと移り変わった。要は結界みたいなものだ。

「これで存分に戦えよう――我が子ら、夢幻騎士」

「了解しました、女王様」「ご期待に応えましょう」「行くしかないよねえ~」

 シリウス、ベテルギウス、プロキオンが動き始めた。
 まさか、あのミマスを倒すってーのか、無茶だ!

「まて、フィ。魔神あれは明らかに今までとは違うぞ!」
「しかし、倒せねばどのみち我らは終わりだ」
「そりゃそうだけどさ……! く……」

 すでにシリウスは、ミマスの前に立ち、剣を振るっていた。
 剣と――刀らしき不気味な武器とぶつかり合い、鈍い音が響いていた。……敵も武器を持っている。なんだあれは、刃の形状がスパイラルだ。螺旋状にエネルギーが取り巻いていた。


『――――――神槍・グングニル!!!!!!!』


 あれは、プロキオンの神器。
 それが投げられていた。


 しかも、


『――――――ベテルギウス!!!!!!!!』


 自身の名のスキルを放つベテルギウス。


 夢幻騎士の力が押していく。
 これは……いけるか!?


『……ほう、この国にこれほどの騎士たちがいようとはな。このような魔神の姿でなければ、正々堂々戦えただろうに、残念でならない……』


 無感情のままミマスは刀らしき武器、あの螺旋らせんを高速回転させ――夢幻騎士たちを簡単に振り払ってしまった。

 なんて力だ……!

 空間の壁……と、言っても距離的にはかなりあるんだが、そこにシリウス、ベテルギウス、プロキオン全員が激突し、倒れた。

「…………シリウス!! ベテルギウス!! プロキオン!!」

 ウソだろ……。
 距離も遠いうえに、瓦礫がれきに埋もれてしまって生死は分からない。
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