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第8話 そして俺は今日も体を痛める

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今日も俺は俺に全く関係のない……いや、いる意味がない部活動に向かい、そして時間つぶしにいそしんでいた。

「あ~、帰りて~」

俺以外誰もいない部屋の中でそうつぶやいた。部屋の中では悲しくも俺の言葉は静かにこだますることなく落ちていく。そうこれがいわゆる独り言である。

俺の一人の時間が過ぎていく。俺は思う一人の時間はいいものだと。何つぶやいても誰にも文句は言われない。もし学人が来る前の部室でそんなことを言えば、紅羽ちゃんにキレられるに違いない。だから一人でいる今だからこそ言えるのだ。

「めんどくせぇ……帰りてぇ」

一人だからな。もう一度独り言を呟いた。
今学校で唯一自分と言うものを素直にさらけ出すことが出来る瞬間。ここに他人がいればこんな自分をさらけ出すことすらできないだろう。裸になっても誰にも文句言われない。まぁ、裸になったりはしないけどな。
それに誰だって他人には良く見られるように着飾るものだ。俺だってなるべく自分を出さないように人との接し方に気をつけている。
そんな俺がもし自分をさらけ出しているところを他人にでも見られでもしたら……いや、考えるのはやめておこう。
まぁ、まだ誰も部室には来てないから来たらやめればいいしな。

「……何やってるの?」
「うぇ?」

気が付くと目の前に紅羽ちゃんの姿があった。

「うわぁぁぁ」

俺は目の前に突然現れた紅羽ちゃんに驚気の声を上げてしまう。
パイプ椅子を倒しながら、俺は驚きのあまり後ろに倒れた。

「痛ッ!」

その倒れた際俺の伸びた足が紅羽ちゃんの足に当たってしまった。当たってしまったと言うことは……

「あんたよくも蹴ってくれたわね……」

「ひぃ……」

不可抗力とはいえ当たってしまったのは事実。
俺は抵抗せずに覚悟を決めた。
それにしてもいつもだったらもっと声が出るはずなんだけどな……
もしかして慣れてきてないるのか! 俺の体がこうなるとわかってしまってるから声が出なかったのか!
信じたくない……さっき叫んだから多分そのせいで出なかったんだと思う。そうだ、そうに違いない!

「覚悟はできてるんでしょうね」

「はい……」

そうだ今はそれどころではなかった。
それにいつもと違って今回は俺は攻撃してしまっている。そのせいか紅羽ちゃんの怒りがいつもよりも強い気がしてならない。

できるなら優しくしてくれ……

俺は拝むように手と手を合わせ床に寝転がる。
そして目を閉じ眠るように今までの短い人生を思い返すのだった……


ガラガラ

それは突然だった。部室のドアが開いたのだ。
俺は戸惑った。
当然紅羽ちゃんに殴られ蹴られーーとなると思っていたのに、その前だったからだ。

た、助かった……のか?

今までこんな状況で人が現れたことが無かった。いつもなら俺がボコられてから来るからな。
当然紅羽ちゃんも戸惑いを隠せない様子だ。
俺を粛清しようとしていた所だった拳が空中で迷っていた。どうしたものかと言ったところだろう。

だが……甘かった。
来たのが田中先生だったのだ。
学人ならどんだけ良かったことか!

「よぉ、お前らだけか? ……それでお前らは何やってんだ」

当然の反応だ。
部室で俺は床で手を合わせて横になり、紅羽ちゃんは今にも誰かを殴りそうな拳を構えていたのだから、その反応は正しい。

「……」

紅羽ちゃんは何も言わずに固まっていた。

「まぁ、イチャつくのも程々にな」

「「イチャついてない!」」

しかし先生はそんな反論など気にしないように部屋の奥に向かって歩き始めた。

「邪魔だな」

そう言うと寝転がる俺を邪魔物扱いしてきた。
寝転がってるの俺が悪いから仕方ないか。
そう思ったのも束の間、寝転がる俺を跨いで行くのかと思いきや、そのまま踏んで行きやがった。

「あ、悪い。見えなかった」

「いや、さっきあんた邪魔っつてただろ? 聞こえてるからな」

「そうか聞こえてたか」

それだけ言うとそのまま部室の奥にへと姿を消して行った。
俺はその後ろ姿を睨んでいたが、田中先生は全く振り向く素振りすらなかった。

「はぁ」

俺はため息を吐きながら、田中先生に踏まれたお腹を摩っていた。こういう日に限って田中先生はヒール付きの靴だったため、腹に刺さって痛かった。俺がドの付くMだったならご褒美だろうが、残念ながら俺はノーマルだ……嬉しくない。

さて、そろそろ起きるか。

俺は上体を起こして立ち上がり倒れた椅子も立て直し、座った。
やれやれ、疲れる部活動だぜ。
体が持たねぇよ。
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