【完結】欲張りSubは欠陥Domに跪く

秋良

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43. 夜を越えていく *

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 ワイドシングルのベッドに、大人の男が二人、シルエットを重ねる。
 比較的細身の綾春だけならまだしも、そこに背が高くて程よく鍛えられた体の蓮哉が覆い被さると、ベッドがぎしりと音を立てた。

「っ、ぅ……ン、ッ…………ふぅ……っ」

 すべての衣服を脱がされて、一糸纏わぬ姿になった綾春の性器はいまだ触れられていない。くちゅくちゅと音を立てているのは、緩く勃ち上がった性器ではなく、コマンドによって晒された後孔だ。そこを蓮哉の長い指が出入りしている。
 どこからか出てきた個包装されたローションのパッケージを切って、とろりと垂らされた潤滑剤は体の熱と溶け合っていた。

「もう二本入った。そんなに欲しかった?」

 入り口を引っ掛けるように弄ばれて、奥をとんとんと突かれて。
 いつもはないのに、蓮哉とのプレイの日には後ろの準備もしてはいた。軽いプレイが二人のルールだったから、本当にそういうつもりはなかったのだけれど……。それが本当に使うことになるなんてと、まだ飛ばし切れていない理性が嗤う。

 欲しかったという問いに、なんて答えたらいいかわからない。
 首を縦に振っているのか、横に振っているのかわからないまま、はぁはぁと悶えながらも蓮哉を見つめれば、綾春の開いた両脚の間に体を割り込ませていた男は愉快そうに笑った。

「ああ、ごめん。もう声出していいよ。でも、ここでイくのはStayまだだ。さっき嘘をついたお仕置きだ」
「あ、んんッ!」

 ここと指し示された性器は、てらりと濡れている。ローションではなく、すでに堪えきれていない欲望が漏れた証だ。もう爆発しそうなそれを容赦なくコマンドで縛りつけた蓮哉を見れば、悪い笑みを浮かべている。
 さっきの嘘とは、おそらくプレイバーでの一件だ。勃ち上がった性器を蓮哉の口で責め立てられて、気持ちよさのあまりに「だめ」と口走った。嘘はつくなと言ったのに『いい』とは反対のことを言ったから、蓮哉は綾春に仕置きをする。

 そんな……と思っているうちに、捏ねくり回されて、指をばらばらに動かされて、二本の指で奥も手前も押し潰された。もう自分の足を抱えるのも忘れて、蓮哉にされるがままに後孔を指で犯されていく。もとより溶かされることを期待していた後孔は、蓮哉の指とローションによって解れていく。

「わかる? 綾春のナカ、びくびくしてる」
「わか、な……あ、ァッ……」

 達してはダメだと言われた性器に触りたい。でも言われたことは守りたくて、それを持するために伸ばしかけた手でシーツをきつく握った。

「ぅ、あ……も……蓮哉さ、お願、ぁ……ッ」

 いつまでも指だけで虐めないでほしい。
 そう潤んだ瞳で訴えれば、「ほんと、おねだりが上手だなぁ」なんて嬉しそうな声色で言われる。

「まあ……そうだね。イかずに我慢できているから、ご褒美をあげないとな」

 ちゅっ、と額に唇を落とされた。
 そのまま肌を啄むように目尻や頬にも唇を寄せられていくうちに、綾春の中を弄んでいた指が抜かれる。失った圧迫感にひくひくと後孔が蠢くのを感じている間、耳にはカチャカチャとベルトを外し、ボトムスを下ろす音がする。それからパッケージを切る音……コンドームを包装から取り出したのだろう。

 すると、少しもしないうちに、物欲しそうにしていた後孔に熱い昂ぶりが押し当てられた。

「気持ちいいときは、ちゃんと言えよ?」

 耳元に口を寄せられて、色気を含んだ声で命じられた。途端、腰を掴まれると同時に猛った雄の先端が綾春の中へと侵入してきた。

「あ、あっ! はいって、くる……ッ」

 ローションで溶かされた後孔は口いっぱいに蓮哉の性器を頬張り始める。いつの間にこんなになっていたのか、硬く成長した男の性器は息が止まりそうなほど大きい。
 その質量のある熱がじゅぷっと音を立てながら、隘路を分け入ってきた。

「っ、綾春……力、抜いて……」
「ん……ふ、ぅ……」

 なるべく力を抜いて体を蓮哉に委ねると、それに合わせながら熱が奥へ、奥へと入ってくる。

「奥、全部挿れるのはキツそうだから、ここまでな」
「ぁ、ふ……ん、んは、ぁ」

 挿入に合わせて息をそっと詰めた。
 呼吸を整えながら、はぁはぁと息を整えていると、蓮哉は自分の形を馴染ませるように、ゆっくりと動き始めてしまう。ずるりと内襞が動く衝撃に全身に甘い痺れが走る。

「は、ぁ……ん、あ、あっ。あぁっ」

 焦ることのないストローク。蓮哉にまだ余裕があることを感じながら、綾春は自身の内側を蹂躙する猛った欲望を必死で受け止めた。
 グレアを浴びながらのセックスは、頭が飛びそうになるほど気持ちがいい。

 恋人もプレイパートナーもいない間、綾春は多少の性的接触はあれど挿入までの行為には手を出してこなかった。だからからか、久方ぶりに内部を暴かれた体のあちこちが、待ち望んだ快楽を敏感に受け止めていく。
 そこに、蓮哉が放つ重いグレアが混ざるのだから、頭がぐちゃぐちゃになるのにそう時間はかからない。れられて、少し揺さぶられているだけなのに、脳が溶けてしまいそうだ。

「んぁ。あ、ぁ、気持ちい……もっと、ほし……」
「もっと? グレアも?」
「う、ん……どっち、も……っ。まだ、いけるっ。あ、あっ」

 その問いに頷くと、腰の速さが上げられて、グレアも強くなった。
 体の奥まで届かせるみたいなグレアに甘い声が漏れる。
 ゆるゆると腰を動かされて、弱くて甘い快感がずっと波のように続いている。

 だらしなく口を開けていると、蓮哉が唇を重ねてきた。
 唇を重ねるだけではなく、唾液を交換するような深いキス。舌を指で嬲られたときよりも心地の良い感覚に、夢中になって舌を追う。絡めて、吸われて、食べ尽くされそうな口づけに内襞がきゅうきゅう蠢くのが自分でもわかった。

「……ん、はっ。あ……あっ」
「気持ちいいな、綾春。ほら、次はどう動いてほしい? Say言って

 離れる唇の惜しさに、綾春ははくはくと口を開閉させた。
 その姿を堪能しながら蓮哉は腰の動きは止めずに、コマンドで訊ねた。するとSubの本能は悦び、後孔がぎゅうっと締まる。

「一気に、抉って。ぐちゃぐちゃに、突いてほし……う、ああぁッ!」

Goodよく言えました〉の言葉と同時に、蓮哉は一気に腰を突き動かした。
 ばちゅばちゅと、汗に濡れた肌がぶつかる音に混じって、綾春の官能に溺れた嬌声が上がる。

「こう、ッ? 綾春っ、気持ちいいっ?」
「きもち……、きも……ひ、ぃぃ……」

 後孔だけでなく、思考もぐずぐずと溶けていく。
 与えられ続けるグレアと快感に、コマンドまで混じって、綾春の頭はぐちゃぐちゃになった。

 ただただ、気持ちいい感覚だけが体を巡っている。このままずっと蓮哉のグレアに溺れて、息がつく暇もないほど嬲られて、溶かし尽くされたい。

「なんだ、ふふ……。綾春、サブスペース入っちゃってるか」
「ぁ……ぇ、ぁ……」
「ちゃんと捕まえていてあげるから。安心して、たくさん満たされな」

 体の中で熱が暴れているのを感じながら、綾春は気持ちいいと声を上げ続けた。とろんと溶けた視界で見る景色はふわふわと現実感がなく、夢を揺蕩っているかのよう。
 そのうちにも、ずっと与えられている快楽に、性器は絶頂を極めつつある。

「イ、きた……ぃ、んぅ。あ……はぁ……イかせ、て……ぇ」

 お仕置きはまだ続いているんだっけ……?
 溶けた頭では、もう何もわからない。

 ただ、蓮哉に言われていることを守りたい本能が射精しないようにと耐え続けている。でももうイきたい。許してほしい。
 涙と涎で顔を汚しながら、綾春は蕩けた顔で思ったことを思ったままに口にしていた。

「っ、よく頑張ったな。可愛いよ、綾春。ご褒美だ……Cumイって!」
「ぃ、ああっ! 前、いっしょ、ッ……奥、熱……あ、あアッ!」

 コマンドとともに性器を扱かれ、中を激しく突き上げられて、綾春は感じるがままに高みに昇り、達した。乳白色の蜜がぱたぱたと腹に広がる。

「……くっ」

 やや遅れて、蓮哉も綾春の中で精を放つ。

「は、ふ……ぁ……ぁ、は……」

 サブスペースに入りきった綾春は、蓮哉の熱を感じながらうっとりと瞳を蕩けさせていた。緩みきった綾春の唇を吸いながら、蓮哉はぽつりと呟く。

「ほんとに可愛い……。綾春、このままもっと、俺に溺れて」

 チカチカとスパークする視界の端に、レースカーテン越しの夜景が光る。
 蓮哉の言葉は、綾春の脳にじわりと溶けていった。



 ◇◇◇
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