僕の兄は◯◯です。

一章

⑤

　目を醒ましたら、至近距離に人の顔ってビビりますよね。


しかもその面が、昨日のストーカーなら尚更。


「ぬぐぉ!?」


「うぉっ!?」


驚き過ぎて我ながら間抜けな悲鳴を上げ、慌てて身体を起こす。


弾みで顔が近かった奴も、声を上げて後ずさった。


「なっ、ななななっ…な！」


「……大丈夫か、オメェ」


　指を指して「な」しか言わない明らかに動揺しまくりの僕をストーカーもとい金髪ヤンキーは、不機嫌丸出しで眉間に皺を寄せた。


いや、いやいやいや、何故あなた様が此処に……確か僕はベッド下で埃まみれになりながら、安らか睡眠をとっていたはず……ハッ!?


「いやらしい！私の貞操はあの人のものよ！」


「キメェ」


自身の身体を抱き締めて叫んだら、真顔で一刀両断された。あうち。


何故だろう、安心したのに何となく解せぬ。


まぁ…なんだ、狙ってないならいいや。


っかこの人、あの集団の一味だし、わざわざこんなフツメン(と信じている)な野郎に発情するわけないか。


勝手な推測で警戒を解いた(地味に警戒するの疲れた)僕はベッドから降り、制服に付いた埃を払った。


ちっ、地味に取れないなハウスダストめ…！


それよりも、さっきから僕をガン見し続ける金髪ヤンキーの視線が妙に突き刺さりまする。いやん。


「あのー……なんっすか？」


「……オメェ、名前は」


「え？」


ちょっ、名前も知らない奴を昨日あんだけストーカーしてたんっすか、この残念ヤンキー。あふぉーでは……ごほんっ、失礼。


いやはや、頭大丈夫だろうか。