僕の兄は◯◯です。

一章

適者生存

　つくづく思う、僕は何かにとりつかれているのではないかと。


そう、例えばいま現在の昼食時間。立ち入り禁止であるはずの屋上に、顔だけ(以下略)集団の赤髪が何故か、僕らの前にいた。


「アンタが弟君いじめの後輩くんかー」


「……。」


持参お握りをムシャムシャと食べる僕の前で屈み、顎をわざとらしく摩りながらフムフムとガン見する赤髪。うっとうしいです。


っかなに、その第一声いま流行ってんの？


広太は我関せずで顔を背け、焼きそばパン食べてるし。助けろ薬指。


……とりあえず無視だ無視。無視していれば何事もうまくいくと某少年マンガで聞いたことが出来。


「あ、お握り美味しそうやな。頂き」


「……。」


ひょいと拾い上げられたラストお握りが、赤髪の口へと消えていく……ぅおにぎりィイィィア!!


「……最後にとっ…取っておいたぁ…マイ塩おにぎりが…ｯ！」


「お前のおにぎり全部いつも塩じゃん」


「おだまり薬指」


空気の読めない薬指を無視して、目の前の憎き爆発しろ赤髪イケメンを睨み付ける。


存在を認識するつもりはまるでなかったが、これはいけない。万死に値する！


「テンメェ……よくも俺様の塩お握りを…！」


「ほな、くれたお礼に梅お握りをプレゼント」


「貴方はもしやメシア…っ!!!」


「(アホだこいつ)」


　目の前に差し出された梅お握りを、両手で崇拝ポーズさながらに受けとる。薬指の視線が若干痛いが無視だ。気にしたら心が死ぬ。


女神から頂いた梅お握りをそっとブレザーの左ポッケにしまい、僕は何事もなかったように片付けを始めた。


……おい、薬指いい加減にしろ。こっちをみるなもぐぞ。