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番外編 アルバンの兄、王太子アルフォン視点
しおりを挟むもう泣きそう。
弟の婚約者であるティオリが、私のことを鬼か悪魔だと思っていたことが分かった。
今まで虐めたことなんて無いのに。なんなら可愛がっていたのに。
本人は何の気なしなのだろうが、ポロリと口にした。
『アルフォン様が俺とアルバンを無理やり婚約させたんですよね』と。
無理やりってなんだ?
詳しく聞いてみると、私が裏から手を回し、アルバンとティオリを婚約させたのだと思い込んでいた。
なぜだ。なぜそうなる。
いくら歳が離れているとはいっても、アルバンが婚約した当時、私は14歳でしかなかった。
まだまだ子どもだったし、当時は王太子ですらなかった。そんな私が、どうやったら弟の婚約に口出しできるというのか。
そもそも考えてみれば分かることだ。
ティオリは次男とはいえ、貴族院の筆頭コーリラル公爵家の息子だ。アルバンがティオリと婚約すれば、強力な後ろ盾ができることになる。
それに対して私の婚約者は、政治的に中立だからと迎え入れた伯爵家の令嬢ソフィア。古い歴史のある清廉潔白な家だから権力など持っていない。
もし私が嫌がらせで婚約を結ばせたというのなら、私は自分で自分の首を絞めたことになるではないか。
そもそも二人が最初に出会ったのは、婚約のための顔合わせなんかじゃなかった。
ティオリの兄であるエミリオを、アルバンの側近にどうかと、アルバンとエミリオの顔合わせだったのだ。ティオリは王宮を見てみたいと付いて来ていた、ただのオマケだった。
それなのに、ティオリを一目見て惚れ込んでしまったアルバが、自分の婚約者にしたいと駄々をこねた。
それこそ寝転がって地団駄を踏んで、周りの皆をドン引きさせたのだ。
それまでのアルバンは、人生何周目だ? という程に達観した、可愛げのな……ゴホンゴホン。聡明な子どもだったから、同席していた王妃の目玉が落ちそうになっていた。
まあアルバンが一目惚れするのも分かる。
ティオリは、そりぁもう可愛かった。零れそうな大きな瞳に抜けるような白い肌。クリクリの金の巻き毛に桃色の頬。プックリとした赤い唇。宗教画から出てきた天使みたいな愛らしさだった。
ただ私にすれば、どんなに可愛くても、ただの幼児だったけど。
それからのアルバンの行動は早かった。
自らコーリラル公爵家に婚約を申し入れに行った。
コーリラル公爵にすれば、いくら王子とはいえ7歳の子どもの話を鵜呑みにもできない。
だが抜かりの無いアルバンは、国王陛下の親書を握りしめていた。その上、首を縦に振らない公爵に土下座までしたらしい。あのプライドの高いアルバンが。
渋々だがコーリラル公爵は婚約を認めざるを得なかった。
それからのアルバンは変わった。見るに堪えな……オッホン。微笑ましい様子になったのだ。
毎日、それこそ舐めるように(本当に舐めている)ティオリを可愛がっている。
ティオリは嫌がる素振りをしているが、ただのツンデレさんにしか見えない。
二人が婚約してから、もう十年になる。
王位継承権第2位であるアルバンが、男の婚約者を持つことに反対する者は多い……。いや、多かった。
いつの間にか、反対していた者達を王宮で見かけることが無くなった。
国王に聞いてみたが、何もしていないとのことだった。
何かしたのかアルバン? 我が弟ながら怖い奴だな。
今の二人は見事なバカッ……ゲホゲホ。仲睦まじい婚約者同士だ。
見ていて砂どころか砂糖を吐きそうになるが、二人が幸せそうだから、まあいいか。
そう思うのだった。
――― ――― ―――
※ 明日も番外編を投稿します。
よろしくお願いします。
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