かみたま降臨 -神様の卵が降臨、生後30分で侯爵家を追放で生命の危機とか、酷いじゃないですか?-

牛一/冬星明

文字の大きさ
10 / 34

9.金髪の少年とファーストコンタクト。

しおりを挟む
私はクゥちゃんのマップで西に進んだ。
索敵を広げると山が近い。
大河に戻るのを中止して、山沿いに歩く事に変更した。
そう言っても、森を抜ける感じだ。
翼竜の山が見えたからだ。
40kmも先が見えるとも思えないが、俺から見えているという事は向こうも、俺を見つける可能性は捨てきれない。
目立つ尾根を歩くような真似はしない。

「クゥちゃん。逃げているのじゃないよ。見逃してやっているのよ」
「くぅ」
「そうよ。翼竜が数年生きるのを許してあげているの」
「くぅ」

クゥちゃんに変な見栄を張るなと言われた。
見栄じゃない。
事実だもん。
私は森の中を歩きながら薬草を採取している。
もう森に入って4日目になる。
予定では、そろそろ火事があった所に到着するハズだ。
森が切れて、パッと視界が広がった。

見事に森の一部が焼かれていた。
索敵魔法で探ると丘の向こうに人らしい姿を感じた。
父の領地が北の最果てではなかったらしい。
魔物が徘徊する森と翼竜が群れて飛ぶ山があったので、北の海岸には誰も住んでいなかったのだろう。
すでに太陽が山に近づいていた。

「クーちゃん、どうしようか?」

くぅ~~、このまま進むのはお勧めではないらしい。
もうすぐ睡魔が襲ってくる時間だ。
その前に目の前に広がっている堆肥を回収しよう。
魔の森は魔素の宝庫だ。
燃えた木々にも魔素が含まれている。
私は魔力の膜を限界まで伸ばして分解ディスアセンブルの魔法を掛けた。
細胞や分子の結合をチョキンと切る魔法だ。
金属を変形させる準備段階の魔法であり、組み立てアセンブルほどの魔力を必要としない。
物質が砂のように崩れていった。
それを影に収納して終わりだ。
魔力回復ポーションを飲んで魔力の回復を待ちながら作業を何度か繰り返して大量の堆肥を手に入れた。
いつの間にか、月が上がっていた。

 ◇◇◇

私は少し戻って森の端で野営を決めた。
適当に枝を切ると、ドライの魔法で乾燥させて火を付ける。
鍋に水を入れてお湯を作り、固形スープの元にお湯を注ぐと完成だ。
お椀一杯のスープを楽しむ。
中々に成長しないのが、今の悩みだ。
葛湯を楽しむと就寝した。

『◎$♪×△!¥●&#$?』

私は寝起きが良い方ではない。
日が沈む前に寝て、日が高くなってから起きる。
誰かが呼ぶ声が聞こえる。
寝ぼけ眼でうっすらと目を見開くとキラキラと光るモノが見えた。
金髪だ?
金髪の子供が籠を背負って、こちらを見ながら声を掛けていた。

『◎$♪×△!¥●&#$?』

何を言っているのは判らなかった。
土汚れた金髪で、ぱっちりと開けた薄緑色の目が興味深い。
迷彩服に身を纏い、三角の迷彩帽子を被っていた。
少し意外だ。
気配も消していたので見つかるとは思わなかった。
クゥちゃんも暢気に寝ていた。
おい、仕事しろ。
子供らに脅威は感じない。
クゥちゃんの結界もあるので心配もないが、問題はそこではない。
後ろの銀色に近い金髪の女の子がこっちを見ていた。
藍色の目に光が宿っていた。
あれか、少女の目から漏れる光は真実を見抜く魔眼だった。

見えないモノも見る事が出来る。
木の根元に持たれていた私は周りの景色と同化している。
気が付かずに森の中に入って行くのが普通だ。
彼女の魔眼は私の魔力を見たのだろう。
寝ながら魔力の放出をカットするのは出来なくはない。
訓練すれば、ヤレるハズだ。
恐らく。

『◎$♪×△!¥●&#$?』

汚れた金髪の少年が繰り返し、同じ言葉で声を掛けている。
う~ん、言葉が判らない。
半分しかない。
生まれて30分で捨てられた私は人と会った事がない。
初めてあった人族だ。
これが私のファーストコンタクトだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

処理中です...