21 / 34
20.年齢詐称していますが、魔女じゃないです。
しおりを挟む
カランカラン、道具屋の扉を開けると鳴子が音を上げて来客を知らせる。
中は少し薄暗く、台に商品が並んでいた。
奥の机に私を呼び出した道具屋の爺さんが腰掛けており、爺さんが眼鏡をかけ直すとこちらを向いた。
「来たわよ」
「おぉ、こっちに来て、そこに腰掛けてくれ」
爺さんがニヤリと笑ってこっちに来いと手招きする。
私は進められる儘に椅子に腰掛けた。
やかんを取って急須にじょろじょろとお湯を注ぐと、少し回してから茶碗にお茶を入れて出してくれた。
飲めという事だろう。
私は小鳥のようにちびちびと飲んだ。
爺さんは自分の茶碗にも注いでずずずという音を立てて飲む。
「年が行くとこれだけが楽しみになる」
「はぁ、そうですか?」
「来て貰って済まんな」
「仕事なら受けさせて貰います」
「その仕事だ。だが、その前にこれを返しておく」
下の戸棚から袋を取り出して、ガチャンと音を立てて小袋を台の上に置いた。
金貨10枚が入った小袋だった。
「儂はポーションに詳しくはない。中級ポーションとして買わせて貰った。悪く思わないでくれ」
「別に不満はありません」
「そう言って貰えると助かる。持って行かせたらハイポーションとして買って貰えた。これは差額だ」
「あれはハイポーションじゃないわよ」
赤子の小さな胃に併せて改良版だ。
ポーション一杯でお腹が膨れて動けないという事態になった。
それを改善する為にぎりぎりまで水分を飛ばした。
極上のポーションでしかない。
その後、激マズなポーションに嫌気が差した私が水飴ドリンクを混ぜたグレードアップ版だ。
品質は落ちて上級ポーションになった。
飲みやすさと速攻性が売りだ。
ハイポーション特有の欠損部が完治し、状態が正常値に戻るという効用はない。
「どうでもいい。買い手がハイポーションと言うならハイポーションだ」
「私もくれると言うなら貰っておくわ。でも、後で返してなんて言わないでよ」
「言わないさ。だが、あとどれくらいの在庫がある?」
「手持ちはあと10本ね」
「そうか」
そう言って爺さんが肩を落とした。
薬草を採取しながらこの町に向かって来たので薬草の在庫は大量にあった。
容器の材料となる砂浜に混じっていた石英の粒も大量の影収納している。
魔力を節約する為に造った薬草作り用の大釜も持って来ている。
「必要なら作りましょうか?」
「作れるのか?」
「当然です」
「お主。魔女だったのか?」
「魔女って何ですか?」
「100歳は超える優秀な魔法使いだった者が、姿を偽って暮らしておる者の事だ」
「100歳!?」
「驚く事はない。魔法使いなら100歳までは赤子の内と言われておる」
貴族、つまり、魔法使いは200年くらいを生きるのは当たり前であり、優秀な魔法使いは1000年も生きる。
貴族が長寿なのだ。
エルフのようにいつまでも若々しい姿いる魔法使いを魔導師と呼び、女性の場合は魔女とも呼ばれる。
私はブンブンブンと首を横に振った。
「見た目以上に若いです。5歳にもなっていません」
「そうか。女は見た目以上に若くしたがる。500歳を越えた婆さんが少女のような姿をしておった」
「嘘じゃありません」
「儂もまだ若かった。その婆さんに告白して失恋し、その町を捨てて、この町の移り住んだのさ」
私にはどうでもいい話だった。
私は魔女ではなく、生後3ヶ月と少し赤ん坊だ。
町でも苦労話が終わったらしい。
ずずずという音を立てて爺さんがお茶を飲んだ。
「ポーションはどれくらい作れる?」
「50本くらいは作れます。それ以上でしたら、森に薬草を採りに行けば問題ありません」
「急ぎで50本を頼む。その後も作った分だけ買い取ってくれる」
「そんな派手な買い取りをして大丈夫ですか」
「くくく。冒険ギルドや商業ギルドを通さない裏取引だが、相手は領軍の偉い様だ。半値以下に買い叩かれたがハイポーションとして買ってくれるなら大儲けじゃ」
回復ポーション(極上)は小銀貨8~15枚。(引き取り値は銀貨5~10枚)
ハイポーションはその10倍で取引されているらしい。
その偉い様は裏取引所に現れて、ハイポーションを求めた。
偶然に納品された私のポーションを鑑定した結果がハイポーションと認定された。
その鑑定士は目が悪いのか?
裏取引所の頭領はハイポーションを最低価格小金貨5枚の半額で納品を命じられた。
本物のハイポーションなら小金貨2枚と銀貨5枚なら材料費でほとんど消えてしまいそうだ。
頭領は断れない。
断れば、逮捕の上でお取り潰しだ。
証拠品として、ハイポーションも没収される。
頭領は承知した。
領軍に偉い様がニヤついた。
だがしかし、落ち込んだ頭領はすぐに浮上する。
使いの者が提示した額を聞いて驚愕した。
その値段で取引できるという事は、かなり安い値段でポーションが作れると睨んだ。
頭領は爺さんの所に来て頭を下げた。
「爺さん。頼む。ハイポーションをもっと分けてくれ」
「今はないが、聞いてみる」
「頼む。継続的に納品すれば、領軍からお墨付きが貰える。大手を張って取引ができる。千載一遇のチャンスなんだ。巧くすれば、この辺りの裏取引所をすべて傘下に収める事ができる」
「とにかく、聞いておく」
「宜しく、頼む」
こんな感じのやり取りがあったらしい。
黙って金貨10枚を懐にしまう事もできた。
だが、差額を返してくれた。
一度の取引では得られないうま味があると感じたからだ。
その頭領はかなり凄腕の商人だ。
ずずずという音を立てて爺さんがお茶を飲みながら話を続ける。
「お嬢ちゃんにも悪い話ではない。軍に恩が売れる上に、正式な依頼書を発行できるようになれば、この町は出入り自由になる」
依頼書はクエストを同義だ。
ポーション納品の依頼書はそのまま私の身分証明になるらしい。
流れ者から業者に格上げだ。
問題があると被害届けも出せる。
バックが領軍なので役所の取り扱いも良くなる。
「いずれにしろ、頭領が正式にお墨付きを貰った後の事になるがな」
「ハイポーションの納品はできません。あくまでポーションの納品です」
「判った。極上のポーションとして納品してくれるか」
「その依頼、お受けします」
商談成立だ。
問題はポーションを何処で作るかが問題だった。
あの激マズな味が臭うのだ。
「どこか酷い悪臭が出ても怒られない所はありますか。無ければ、門の外で制作するしかありませんね」
「道具はあるのか?」
「問題ありません」
「なら、工房を紹介するのは不味いな」
「どこでも構いませんが、本当に酷い臭いですよ」
青空でも良いと言うと、爺さんが紹介したのは教会の裏手だった。
広い荒れ地になっており、仮に臭っても貧困区なので誰も文句を言って来ないそうだ。
教会と言っても十字架はない。
教会の特徴は丸いガラス窓だ。
東西南北と天窓がある。
貧困区でガラス窓のある建物は珍しい。
すぐに見つかった。
「すみません。お祈りをさせて下さい」
爺さんの言われた通りに教会の奥に建てられた七柱に向かってお祈りをする。
大きな教会になると七柱ではなく、七体の彫像に変わる。
この世界を作った七神だ。
この世界の神は1,000神を越えるので、すべての神の名を知る者は少ないらしい。
私も興味がない。
「これは寄付です」
「ありがとうございます」
「少し相談があるのですが、牧師様はいらっしゃいますか?」
「少々、お待ち下さい」
寄付を渡してからお願い事をする。
これは教会のルールだ。
相場は銅貨10枚から始まり、上限はない。
今回は継続的なお願いなので銀貨5枚と奮発した。
商取引は小銀貨2~3枚が相場らしい。
シスターは金額に満足したのか、あるいは驚いたのか、急ぎ足で出て行った。
私は帽子を両手に抱えてしばらく待った。
牧師は満遍の笑みで、荒れ地を使う事を了承してくれた。
◇◇◇
荒れ地というか?
石がゴロゴロと転がっている荒野だ。
ペンペン草が所々にある。
土が乾いている所為が雑草も余り生えていない。
土の魔法で整地する。
料理台を出し、流し場の桶を置き、大窯を設置した。
台の上に薬草を出すと、薬草をみじん切りにする所を魔力切断で細胞膜を分離する。
見た目は変わっていないが、砂細工のように脆くなる。
分離が終わった薬草から桶に入れ、桶が一杯になった所で収納すると、大窯の上の大鍋を出して、収納した薬草を入れる。
水を少々加えると、薪を焚いて火を付けた。
火の精霊に命令して火加減を任せ、水の精霊にかき回させる。
ただ、グツグツと煮る。
暇な私は自作の銀の聖剣作りの作業でもして時間を潰す。
本当に作りたいのは魔力バッテリーだ。
平時に魔力を貯めて、有事に取り出す。
だが、魔力バッテリーを作るにも大量の魔石が必要になる。
在庫の魔石は1つしかない。
代替品として聖剣を作る。
こちらもオリハルコンやミスリルを使った聖剣でないと魔力を大量に保存できない。
銀貨を溶かして作った聖剣は粗悪品だ。
だが、ないよりマシだ。
薬草も煮詰まってくると細胞核が飛び出してくる。
ここで薬草の残骸を排除してから、再び煮込む。
核が潰れて魔素水を取り出す。
何度も濾しながら液体のみになればポーションの完成だ。
えっ、私の作り方が可怪しい?
本来ならば、魔素水を分離する為に様々な秘薬を遣って取り出し、取り出してから抽出に手間が掛かる。
私は魔力を通して分子改造を行なう。
魔素水以外の分子構造を組み替えれば、重くなって層が別れる。
そこで濾過膜など使わず、分離した層を影収納でスパンと取り除く。
手間要らずの除去方法だ。
さらに、水と魔素水の混合液を分離するのも簡単だ。
理科の実験だ。
水も電気を通して酸素と水素に分離すれば、あっという間に水分も排除できる。
分離した酸素と水素は影収納に回収しておく。
残るのは魔素水のみだ。
これが初期ポーションの正体だ。
ポーションは薬草によって効能が違う。
このポーションを混ぜ合わせ、魔石を溶かしたモノと配合する。
より効果を高めたのがハイポーションとなる。
混ぜる過程が面倒な上に、特殊な魔石が必要になる。
材料がないので今は作れない。
ポーションとハイポーションは別モノだ。
ポーションをハイポーションと言った鑑定士は目が可怪しい。
私のポーションは神の残り香が混じって、ちょっとだけ効用が高いくらいだ。
ハイポーションにはならない。
ポーションが完成する前に容器を作ろう。
石英を炉窯で熱して溶けた所で“モデリング”だ。
冷ますだけで完成だ。
材料に熱をいれるだけで少ない魔力で容器が作れる。
これにポーションを注げば完成だ。
50本を半日で作る私の才能が怖い。
ぱちぱちぱち、教会に併設された孤児院の子供達が拍手を送ってくれた。
中は少し薄暗く、台に商品が並んでいた。
奥の机に私を呼び出した道具屋の爺さんが腰掛けており、爺さんが眼鏡をかけ直すとこちらを向いた。
「来たわよ」
「おぉ、こっちに来て、そこに腰掛けてくれ」
爺さんがニヤリと笑ってこっちに来いと手招きする。
私は進められる儘に椅子に腰掛けた。
やかんを取って急須にじょろじょろとお湯を注ぐと、少し回してから茶碗にお茶を入れて出してくれた。
飲めという事だろう。
私は小鳥のようにちびちびと飲んだ。
爺さんは自分の茶碗にも注いでずずずという音を立てて飲む。
「年が行くとこれだけが楽しみになる」
「はぁ、そうですか?」
「来て貰って済まんな」
「仕事なら受けさせて貰います」
「その仕事だ。だが、その前にこれを返しておく」
下の戸棚から袋を取り出して、ガチャンと音を立てて小袋を台の上に置いた。
金貨10枚が入った小袋だった。
「儂はポーションに詳しくはない。中級ポーションとして買わせて貰った。悪く思わないでくれ」
「別に不満はありません」
「そう言って貰えると助かる。持って行かせたらハイポーションとして買って貰えた。これは差額だ」
「あれはハイポーションじゃないわよ」
赤子の小さな胃に併せて改良版だ。
ポーション一杯でお腹が膨れて動けないという事態になった。
それを改善する為にぎりぎりまで水分を飛ばした。
極上のポーションでしかない。
その後、激マズなポーションに嫌気が差した私が水飴ドリンクを混ぜたグレードアップ版だ。
品質は落ちて上級ポーションになった。
飲みやすさと速攻性が売りだ。
ハイポーション特有の欠損部が完治し、状態が正常値に戻るという効用はない。
「どうでもいい。買い手がハイポーションと言うならハイポーションだ」
「私もくれると言うなら貰っておくわ。でも、後で返してなんて言わないでよ」
「言わないさ。だが、あとどれくらいの在庫がある?」
「手持ちはあと10本ね」
「そうか」
そう言って爺さんが肩を落とした。
薬草を採取しながらこの町に向かって来たので薬草の在庫は大量にあった。
容器の材料となる砂浜に混じっていた石英の粒も大量の影収納している。
魔力を節約する為に造った薬草作り用の大釜も持って来ている。
「必要なら作りましょうか?」
「作れるのか?」
「当然です」
「お主。魔女だったのか?」
「魔女って何ですか?」
「100歳は超える優秀な魔法使いだった者が、姿を偽って暮らしておる者の事だ」
「100歳!?」
「驚く事はない。魔法使いなら100歳までは赤子の内と言われておる」
貴族、つまり、魔法使いは200年くらいを生きるのは当たり前であり、優秀な魔法使いは1000年も生きる。
貴族が長寿なのだ。
エルフのようにいつまでも若々しい姿いる魔法使いを魔導師と呼び、女性の場合は魔女とも呼ばれる。
私はブンブンブンと首を横に振った。
「見た目以上に若いです。5歳にもなっていません」
「そうか。女は見た目以上に若くしたがる。500歳を越えた婆さんが少女のような姿をしておった」
「嘘じゃありません」
「儂もまだ若かった。その婆さんに告白して失恋し、その町を捨てて、この町の移り住んだのさ」
私にはどうでもいい話だった。
私は魔女ではなく、生後3ヶ月と少し赤ん坊だ。
町でも苦労話が終わったらしい。
ずずずという音を立てて爺さんがお茶を飲んだ。
「ポーションはどれくらい作れる?」
「50本くらいは作れます。それ以上でしたら、森に薬草を採りに行けば問題ありません」
「急ぎで50本を頼む。その後も作った分だけ買い取ってくれる」
「そんな派手な買い取りをして大丈夫ですか」
「くくく。冒険ギルドや商業ギルドを通さない裏取引だが、相手は領軍の偉い様だ。半値以下に買い叩かれたがハイポーションとして買ってくれるなら大儲けじゃ」
回復ポーション(極上)は小銀貨8~15枚。(引き取り値は銀貨5~10枚)
ハイポーションはその10倍で取引されているらしい。
その偉い様は裏取引所に現れて、ハイポーションを求めた。
偶然に納品された私のポーションを鑑定した結果がハイポーションと認定された。
その鑑定士は目が悪いのか?
裏取引所の頭領はハイポーションを最低価格小金貨5枚の半額で納品を命じられた。
本物のハイポーションなら小金貨2枚と銀貨5枚なら材料費でほとんど消えてしまいそうだ。
頭領は断れない。
断れば、逮捕の上でお取り潰しだ。
証拠品として、ハイポーションも没収される。
頭領は承知した。
領軍に偉い様がニヤついた。
だがしかし、落ち込んだ頭領はすぐに浮上する。
使いの者が提示した額を聞いて驚愕した。
その値段で取引できるという事は、かなり安い値段でポーションが作れると睨んだ。
頭領は爺さんの所に来て頭を下げた。
「爺さん。頼む。ハイポーションをもっと分けてくれ」
「今はないが、聞いてみる」
「頼む。継続的に納品すれば、領軍からお墨付きが貰える。大手を張って取引ができる。千載一遇のチャンスなんだ。巧くすれば、この辺りの裏取引所をすべて傘下に収める事ができる」
「とにかく、聞いておく」
「宜しく、頼む」
こんな感じのやり取りがあったらしい。
黙って金貨10枚を懐にしまう事もできた。
だが、差額を返してくれた。
一度の取引では得られないうま味があると感じたからだ。
その頭領はかなり凄腕の商人だ。
ずずずという音を立てて爺さんがお茶を飲みながら話を続ける。
「お嬢ちゃんにも悪い話ではない。軍に恩が売れる上に、正式な依頼書を発行できるようになれば、この町は出入り自由になる」
依頼書はクエストを同義だ。
ポーション納品の依頼書はそのまま私の身分証明になるらしい。
流れ者から業者に格上げだ。
問題があると被害届けも出せる。
バックが領軍なので役所の取り扱いも良くなる。
「いずれにしろ、頭領が正式にお墨付きを貰った後の事になるがな」
「ハイポーションの納品はできません。あくまでポーションの納品です」
「判った。極上のポーションとして納品してくれるか」
「その依頼、お受けします」
商談成立だ。
問題はポーションを何処で作るかが問題だった。
あの激マズな味が臭うのだ。
「どこか酷い悪臭が出ても怒られない所はありますか。無ければ、門の外で制作するしかありませんね」
「道具はあるのか?」
「問題ありません」
「なら、工房を紹介するのは不味いな」
「どこでも構いませんが、本当に酷い臭いですよ」
青空でも良いと言うと、爺さんが紹介したのは教会の裏手だった。
広い荒れ地になっており、仮に臭っても貧困区なので誰も文句を言って来ないそうだ。
教会と言っても十字架はない。
教会の特徴は丸いガラス窓だ。
東西南北と天窓がある。
貧困区でガラス窓のある建物は珍しい。
すぐに見つかった。
「すみません。お祈りをさせて下さい」
爺さんの言われた通りに教会の奥に建てられた七柱に向かってお祈りをする。
大きな教会になると七柱ではなく、七体の彫像に変わる。
この世界を作った七神だ。
この世界の神は1,000神を越えるので、すべての神の名を知る者は少ないらしい。
私も興味がない。
「これは寄付です」
「ありがとうございます」
「少し相談があるのですが、牧師様はいらっしゃいますか?」
「少々、お待ち下さい」
寄付を渡してからお願い事をする。
これは教会のルールだ。
相場は銅貨10枚から始まり、上限はない。
今回は継続的なお願いなので銀貨5枚と奮発した。
商取引は小銀貨2~3枚が相場らしい。
シスターは金額に満足したのか、あるいは驚いたのか、急ぎ足で出て行った。
私は帽子を両手に抱えてしばらく待った。
牧師は満遍の笑みで、荒れ地を使う事を了承してくれた。
◇◇◇
荒れ地というか?
石がゴロゴロと転がっている荒野だ。
ペンペン草が所々にある。
土が乾いている所為が雑草も余り生えていない。
土の魔法で整地する。
料理台を出し、流し場の桶を置き、大窯を設置した。
台の上に薬草を出すと、薬草をみじん切りにする所を魔力切断で細胞膜を分離する。
見た目は変わっていないが、砂細工のように脆くなる。
分離が終わった薬草から桶に入れ、桶が一杯になった所で収納すると、大窯の上の大鍋を出して、収納した薬草を入れる。
水を少々加えると、薪を焚いて火を付けた。
火の精霊に命令して火加減を任せ、水の精霊にかき回させる。
ただ、グツグツと煮る。
暇な私は自作の銀の聖剣作りの作業でもして時間を潰す。
本当に作りたいのは魔力バッテリーだ。
平時に魔力を貯めて、有事に取り出す。
だが、魔力バッテリーを作るにも大量の魔石が必要になる。
在庫の魔石は1つしかない。
代替品として聖剣を作る。
こちらもオリハルコンやミスリルを使った聖剣でないと魔力を大量に保存できない。
銀貨を溶かして作った聖剣は粗悪品だ。
だが、ないよりマシだ。
薬草も煮詰まってくると細胞核が飛び出してくる。
ここで薬草の残骸を排除してから、再び煮込む。
核が潰れて魔素水を取り出す。
何度も濾しながら液体のみになればポーションの完成だ。
えっ、私の作り方が可怪しい?
本来ならば、魔素水を分離する為に様々な秘薬を遣って取り出し、取り出してから抽出に手間が掛かる。
私は魔力を通して分子改造を行なう。
魔素水以外の分子構造を組み替えれば、重くなって層が別れる。
そこで濾過膜など使わず、分離した層を影収納でスパンと取り除く。
手間要らずの除去方法だ。
さらに、水と魔素水の混合液を分離するのも簡単だ。
理科の実験だ。
水も電気を通して酸素と水素に分離すれば、あっという間に水分も排除できる。
分離した酸素と水素は影収納に回収しておく。
残るのは魔素水のみだ。
これが初期ポーションの正体だ。
ポーションは薬草によって効能が違う。
このポーションを混ぜ合わせ、魔石を溶かしたモノと配合する。
より効果を高めたのがハイポーションとなる。
混ぜる過程が面倒な上に、特殊な魔石が必要になる。
材料がないので今は作れない。
ポーションとハイポーションは別モノだ。
ポーションをハイポーションと言った鑑定士は目が可怪しい。
私のポーションは神の残り香が混じって、ちょっとだけ効用が高いくらいだ。
ハイポーションにはならない。
ポーションが完成する前に容器を作ろう。
石英を炉窯で熱して溶けた所で“モデリング”だ。
冷ますだけで完成だ。
材料に熱をいれるだけで少ない魔力で容器が作れる。
これにポーションを注げば完成だ。
50本を半日で作る私の才能が怖い。
ぱちぱちぱち、教会に併設された孤児院の子供達が拍手を送ってくれた。
10
あなたにおすすめの小説
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる