こんなはずじゃなかった

B介

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眠れる獅子ども11

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さて、実はもう帰宅のバスの中。

皆ルールを守り、安全な夜を過ごして遊び切りました。


睡蓮はもう圭介の事も気にせず、バスの中で爆睡。

そんな睡蓮の寝顔をパシャパシャとるメンバー達。


そして、一度味しめてから欲望の消えない2匹の野獣は貧乏ゆすりをしながら必死に耐え忍ぶ。


長く、色々あった約1週間は、新しく友人となった林、安田や生徒会と風紀の関係性も深くなったであろう。


寮に着く頃には皆爆睡。

運転手に起こされ、皆眠い目を擦りつつ、寮へと帰る。


久しぶりの自分の部屋に荷物を投げ捨て、ベッドにダイブ!


ハァァ…気持ちいい…


…………スー…スー…


疲れていたせいか、睡蓮はそのまま深い眠りについた。



******



ピチャ…ピチャ…


んっ!ンン!?


耳から首筋に濡れた何かが這い回る。


くすぐったさと、生暖かさに、身体を動かすが、何か重たいモノがのしかかり、動けない。


深い眠りから少しずつ覚醒する睡蓮は、ピチャピチャと響く水音にゾクゾクと身悶える。

ンッ!ハァァッ!!


これ…また、奴らか?ンッ!

鍵閉め忘れたかも…


まだ眠さが抜けず、瞼が重い。


多分、耳から鎖骨迄を奴らのどちらかに舐められている事を理解した。


「アッ!やめ…ろ!兵藤…?西園寺?」

必死にぼやける意識の中、声を発すると、ピタリと行為が治った。

だが、次の瞬間、ガリッ!!と肩に噛みつかれた。


「ああああ!!イタッ!!」


痛みで一気に目が覚め、のしかかる男を睨みつけて…驚愕する。


男は睡蓮にのしかかり、睡蓮の腕を抑え込み、獲物を前にした猛獣の様に顔を歪めていた。その視線は、眼だけで狩れる程の威力ある眼差し。


その男を見た瞬間、睡蓮の顔に血の気が失せる。

声は震えてしまったかもしれないが、必死に絞り出した。


「圭介…。」


俺が名前を呼ぶと、獰猛に歪んだ顔はスーと消え、冷気を発するかの様に無表情となる。

だが、瞳だけは鋭く、息さえ止めてしまう程の眼差しだった。

俺は微かに震える身体を、必死に奮い立たせ、この肌で感じるヤバイ雰囲気をなんとかしようと、笑みを作る。


「おい!またふ、ふざけてんのかょ?俺鍵開けっ放しだった?」

バグバグと恐怖で弾けそうな心臓を落ち着かせようと大きく息をしながら、いつもの軽口で話すが、身体を起こそうにも、びくともしない。


そして圭介は無言で俺を射抜く。


ヒィィ!!これ、ヤバイ!ヤバすぎる!


すると、いつものなら考えつかない程の冷たく低い声で圭介は声を発した。


「…なんで兵藤と西園寺がでてくるの?」


ギクリッと身体を強張らせると、瞳を細くしながら俺を見下ろす。


「…旅行中…なんかおかしい…って思ってた。…睡蓮からいつもと違う匂いがするし…それが奴のだと気付いた時…まさかとは思ったが……ベランダから睡蓮の部屋に入る奴を見て、腑が煮えくりかえりそうだったよ。まぁ、暫く見てたら、すぐ出てきたから…そん時は何もなかっただろうが……」

ギラッと瞳の奥が光った気がして、俺は唾を飲み込む。



「…睡蓮、お前、身体許しただろ?」

その一言に身体が反射的にビクッと動いてしまった。


「……何故だ?奴らが好きなのか?」


冷気を発していた無表情から、また獰猛に顔が歪む。


もう、心臓を口から飛び出してしまいそうな程激しく脈を打つ。


「おい!何とか言えよ!…俺がどんなに我慢して、お前と一緒にいるか!!」

地の底から絞り出す様な低い声に怒気が混ざる。


「圭介…」

俺が名前を呼ぶと、苦しそうに切なそうに眉を寄せる。


「……本気で…本気で好きで、好きでたまらないけど、嫌われたく無いから…1番隣に居たいから…我慢してたのに!!…何で、、しかも西園寺とも!!」

グッと野獣の目に力が入ると、じわりと涙が溢れてきていた。


「俺じゃ…ダメなのか?俺は嫌いか?兵藤達が…好きなのか?」


ポタポタと溢れ出る涙が圭介の頬を伝い、俺の頬や首に降る。


「圭介……。」

俺の声に、ギュッと目を瞑り、唇を噛み締める。


「す、好きなんだ。本当に…好きなんだよ。」

震える声で消えそうに呟く圭介に、俺はズキンと何かに刺された。

「圭介…腕を離してくれ。」

いつもは駄々を捏ねる圭介だが、ゆっくりと手から力が抜ける。


俺にのしかかったまま、俯く圭介を、俺は首に手を回し抱きしめた。


抱きしめた瞬間、ビクッと圭介が震えたのがわかる。


「ごめんな!ごめん!圭介!…お前が俺を想ってくれてるの知ってて、待たせて…確かに酷いな。…言い難いが、ちょっとした揉め事で、あんな感じになってしまったんだ…。俺はまだ、誰か好きとか、分からない。ましては男同士…友情なのか、恋愛なのかも分からない。だからまだ、俺は中途半端な最低野郎なんだ。」

俺は圭介の明るさと居心地のよさ、友達という枠で軽視していたのかも、意識するといいながら、気まずさを感じながら、怒る、怖い圭介を知りながらも、傷つきはしないと…。


こんなにも傷つけてしまった。

怒られようが、何だろうが傷つけるより100倍増しだった。

本当にごめん…。


「俺は、お前が大事だから、甘えていたのかも。お前が待ってくれている間は側に居てくれるから。まだ好きか嫌いかわからないから…辛くても待ってくれているお前に甘えてた。…こんな俺、最低だな。…お前と居たいから答えず、待たせて…こんな俺はやめた方が良い。お前と一緒に入れないのは辛いけど、傷つけたく無い。」

グスッと俺も涙が込み上げてきた。

失いたくないから、好き好き言いながら一緒にいて、明るく変わらず居てくれる圭介に俺は…


「…睡蓮、まだ、誰も好きじゃないの?」

鼻声の圭介の声に、首に抱きつきながら、コクリと頷いた。


「……まだ、誰のモノでもないのか…。」

圭介は首に回された睡蓮の手をほどき、視線を合わせた。

圭介は、先程の冷たい表情でも、獰猛な表情でもなく、幼く見える微笑みのまま、ハラハラと涙を溢していた。


「まだ、諦めなくてよくて…よかった。まだ、誰のモノじゃなくて…よかった。俺…俺…好き過ぎて、本当は辛いし、嫉妬深くて嫌われるんじゃ無いかって不安だ。…だけど、隣にいるだけで、幸せなんだ。辛いし苦しいのに幸せなんだ…。睡蓮にはまだわからないかもしれないけど。」


いや…わかるかもしれない。

なんだかんだ、お前とバカやるのが好きで、一緒にいると楽しい…ただ、俺の感情一つでお前を傷つけ、隣からいなくなるかもしれない。それが辛い。


まだ、中途半端過ぎて言えないが、俺も同じだ。


「だから、俺は諦めないよ。…絶対好きになってもらうんだ。…睡蓮がたった1人を選ぶまでは…好きだ。好きだ。睡蓮。」


ギュッと力強く抱きしめられた。その体温の暑さに、俺は涙をより流す。

込み上げてくる感情、熱さが涙の様に溢れてくる。


そして、圭介の男らしい顔が迫り、俺の唇に重なった。

激しい圭介の、優しい触れるキスに、戸惑いながらも受け入れてしまった。

確かめる様に何度も何度も触れるだけのキス。


そして、徐々に互いに啄みながら、深いキスへと変化していく。

角度を変えて何度も…。


「睡蓮…ごめん…俺にも…許してくれ。」

圭介はキスの間に囁く様に漏らし、舌を差し込んできた。


分厚い舌に翻弄されながら、俺の答えを聞かない圭介。


ったく…しょうがねえな…


俺は心の中で許した。





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