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好きか?

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あれからジンクがおかしい。

ずっとキメラを抱っこしているのは変わらないが…。


「あっ!ちょちょ!」

指を指して蝶々を見るキメラ。


「蝶々が好きか?」

「ちゅきー。」


すると、パッと素早く蝶々を捕まえるジンク。


「ほら、好きな蝶々だ。」

「あじゃまーす!」

優しく蝶々を掌に包むキメラ。


「俺は好きか?」

「う?」

「お前の好きなモノを捕まえてやったぞ?俺は好きか?」


「んー…ちゅきー。」

少し考えてから、ニコッと笑うキメラにジンクはグリグリとキメラの頭に頬ずりをする。


こんな感じがずっと続いている。



「ジンクがおかしい…」


そう思うのは俺だけじゃなかった様だ。

ヴィートが気持ち悪いものを見るような目でジンクを見る。

あの朗らかなヨシュアでさえ、眉を寄せていた。




「蝶々より、俺のが好きか?」

「んー…」

ジンクのくだらない質問に必死に悩むキメラ。


すると、スンッと、ジンクの顔がいつもより真顔になり、暗さを含む瞳を蝶々に向けた。


「…そいつが死ねば、俺が好きか?」


「う?」

キョトンとするキメラを他所に、ジンクの手がキメラの掌の中の蝶々に向かう。


「わーー!!ジンク!止めろ!それやったら、嫌われるぞ!!」


ライラックの言葉にピタリとジンクの手が止まる。


「そうです!目の前で好きなものを壊されたら嫌われますよ?」


ヨシュアも焦りジンクを宥める。


「嫌われる?」


ぽつりと呟くジンクに頷くライラックとヨシュア。


「俺より、蝶々が大切ってことか?」

ズンッと周りの重力が変わったように重くなる。


「違う!そうじゃない!!」

「あー…ジンクには理解が難しそうですね…」


「キメラ、ジンクは好きって言われるのが大好きなんだ。ジンクの事大好きだよな?」


ヴィートはコソッとキメラに囁く。

キョトンとつぶらな瞳をパチパチさせた後、キメラは蝶々を解放して、ジンクの服をくいくいと引っ張る。


「じんきゅしゅきー、だいしゅきー。」

ニパッと笑うキメラに、周りの重力も戻り、耳を赤くしたジンクはキメラの頭にグリグリと頬ずりをする。


えらい!空気の読める子!キメラ!


「蝶々より、好きか?」

「しゅきー!」


「空より好きか?」

「しゅきー!」

「魚より好きか?」

「しゅきー!」

「花より好きか?」

「しゅきー!」

「木々より好きか?」

「しゅきー!」

「村長より好きか?」

「しゅきー!」

「ライラックより好きか?」

「りゃいりゃっきゅ、しゅきー!」


ピシッと固まる音が響く。


あっ、俺死んだかも……


ライラックの顔が白く変色したのは言うまでも無い。
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