詐欺るシリーズ「身体を許さない女」

黒崎伸一郎

文字の大きさ
18 / 24

しおりを挟む
その日の夜、パープルに窪田はいた。
志保に今日の報告をする為だ。
「あら、どうだった?
お気に召したかしら?」
窪田が席に着いて何分もしないうちに志保は席に付いてくれた。
パープルはいつも通り満席である。
それなのに他の客より自分を取ってくれた気がして窪田の機嫌は悪いはずはなかった。
明日会議を開いて何も問題がないようだったら、夕方に宮本の携帯に連絡を入れる事を志保に話した。
「そう、よかったじゃない!
その場所にマンション建てるんでしょ?
立地もいいし、分譲だったらすぐに埋まるわね。
なんならルイ13世出そうか?」
「いや、それは商談が決まってからだな。
今それを入れたら今日の支払いが百万円では足りないからな…」
ルイ13世を銀座のクラブで頼めば百万円は下らないと言われている。
志保がパープルを始めてからでも何本も出ているものではなかった。
「ルイ13世くらい何十本でも入れられるわよね。
クーさんがこの商談、まとめれば…。
冗談、冗談よ。
クーさんにそんなにお金使ってもらおうなんて思ってないから…」
あながち冗談とも言えない志保の発言に、商談が成立した日にはそれ以上のお礼はするつもりの窪田だった。

次の日、会議でゴーサインが出た。
後は売買契約を締結して決済を迎える日を待つだけであった。
窪田は会議の後、すぐに宮本の携帯に連絡を入れた。
「もしもし、宮本さん?
窪田不動産の窪田です。
昨日の話、会議でオッケーが出ましたのでよろしくお願いします。
つきましては斎藤さんとの本人確認と売買契約の書類等のことがありますので、お日にち、いつがよろしいか連絡いただけますか?」
と、宮本に聞くと
「こちらは三日あれば書類を揃えることができますので、そうですね…金曜日はいかがですか?」
窪田は宮本の言う三日あればこちらもいろんな段取りはできる。
「ではその時に、登記申請書類など全ての書類を用意していただけるということでよろしいですね」
「はい、もちろん全ての書類を持って参ります」
「契約する場所はこの前のホテルプリンスの会議室を借りますので、午前一時でいかがでしょうか?」
「それで結構です。
ではその時までに必要書類を用意しておきます」
宮本は窪田の話に全て合意して金曜日の一時に決済を行う事を了承した。
窪田はその事を志保に伝えて、決済が終了したら店に顔を出して、パァーっと祝杯をあげる約束をした。
それが甘い罠だとも知らずに窪田は浮かれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...