詐欺るシリーズ「冤罪！幾重にも塗り替えられた真実」

犯人捕まる

純真の葬儀が終わった。
本来なら多くの親戚や警察関係者らが来賓する筈だが、殺人という特殊な死に方だった為、ごく近い親戚と身内の警察関係者でしめやかに行われた。
その最中犯人と思われる人物が捕まった。
思われると断定しないのは、その人物が犯行を否定していたからである。
逮捕したのは林という四十過ぎの警備員の独身者だった。
林は窃盗の前科があり、犯行当日のアリバイもなかった。
何よりも決め手になったのは指紋だった。
犯行の後、トイレに用を足しに入ったみたいでその時、手を洗ったのか、トイレの洗面所に僅かに林の指紋があった。
その日林は非番で競馬場にいたとの供述をしていたが目撃者もなく、重要参考人として連行されていた新宿警察署内で逮捕された。
逮捕後は当然起訴をされたが、取調べの段階から一貫して犯行を否認していた。
起訴された後も否認は続いたが、なにぶんアリバイもなく、指紋が検出されたことから林の犯行であることは確実視された。
裁判官の判決は懲役十二年の刑となった。
判決によると被告は犯行を全面否定していたが、犯行現場の家のトイレに被告の指紋があったことが被告が加害者の家に訪れた事の何よりの証拠となると裁判官は判断した。
その判断によって懲役十二年という判決に至ったのだ。
父親の純真を失った事で小比類巻家の人生は大きく変わることとなった。
確かに純真は保険には入っていた。
結婚した時に一社、妻樹里が死んだ時に娘たちの為に一社、計二つの保険に入っていた。
死亡保険額の合計は八千万円にもなる。
保険会社は自社の保険調査員を使い、不審な点はなかったかを調べ上げた。
保険金の金欲しさに肉親を殺す例は度々ある。
だが何度調査を繰り返しても身内の犯行の可能性はゼロという調査結果が出た。
当たり前といえば当たり前のことなのだが、保険会社というものは必ず疑いから入るので保険会社側からしてみれば常識であった。
保険金が入ったからといって、娘二人は当然悲しみのどん底にいた。
金などいらない！父親を返してくれ…！
当然のようにそんな考えの二人だったが、現実に父は亡くなったのだ。
別に普通に生きていくのならば困らない額の金は二人にはあった。
保険金の他に純真には貯蓄もあった。
そして家もある。
このままの暮らしをして、学校を卒業して就職して結婚するのが当たり前だと思っていた綾香であったが、このまま大学で大学生活を送るよりもやることがあると大学を辞めることにした。
それは考えに考えて出した結論だった。