詐欺るシリーズ「冤罪!幾重にも塗り替えられた真実」

黒崎伸一郎

文字の大きさ
42 / 64

日記の意味②

しおりを挟む
そこはホテルの通常のドアではなく一般のお客は通れないようになっていた。
そのドアにはカーテンがかかっていてドアとはわからない裏口的なドアになっていて、何時もはほとんど開け閉めをしないドアだったのだ。
そのドアの存在を知っていたのは従業員でも上層部だけで、後は警察の一部の幹部がホテル側から聞いて把握していたくらいであった。
内海は鈴木らに指示を出しジェーン斎藤らを捕まえようとしたのだが、何故かそのドアを使って強引に逃走されたのだ。
そのドアの近くにいたのが鈴木であった。
すぐそばにいながらジェーン斎藤を取り逃した事に小比類巻純真は疑問を抱いていたのだ。
その事が日記帳に記された最後だった。
それから先は犯人もしくはそれに関連する人物が持ち去っているので書かれた事を想像するしか手はない。
ただ、鈴木警部補が怪しいのは確かである。
坂本と大地はホテルの会議室に持ち入れた日記帳をあらかた読んだ後、必要と思われるページをコピーしてダンボールに戻した。
「僕はこれから小比類巻さんの家にダンボールを返しに行ってきますね」
大地が少し嬉しそうな顔をしたのを坂本は見逃さなかった。
「そんなに綾香さんに会うのが嬉しいのか…?」
坂本はあまりに嬉しそうな大地を少し茶化した。
「そんなに顔に出ていますか…?」
茶化されても否定する事なく話した事に少し戸惑った坂本だったが、
「いいよ!じゃあ、一人で荷物を持って行ってきなよ。二人きりの方が話もしやすいだろうからな…!」
少し気を聞かせるつもりで坂本が大地に言うと、「やった!一人で行っていいんですか?」
嬉しそうに話す大地を見て、「荷物を持っていくだけだぞ!あんまり長居をしてはダメだからな…!」
「わかってますよ。綾香さんの顔見たらすぐにおいとましますから…」
そう言うと大地は借りていた会議室からダンボール二つを台車に積んで、スキップを踏みながら出て行った。
「おい、まだ話が終わっていないぞ…」
坂本がまだ話をしようとしているにもかかわらず出て行った大地を「大事な役目を警視総監から任されたというのに何を浮かれているんだ!」
少し浮かれすぎている大地を見て、坂本はしっかりとした警護をやりながら捜査を進めていかなくてはいけない事を肝に命じていたのだ。
大地は警視総監木村泰治の息子である。だが警察内においてはその事は全く関係がない。
それは木村泰治は勿論、坂本もわかっていた。
というよりは、木村泰治の方から捜査の前に坂本に伝えていたのだ。
「君のことだから私の息子という認識を持って捜査に入る事など1%の確率もないとは思うが、今回は内部の誰にも知られるわけにはいかない捜査故、君と木村大地を選んだのだ。
君のことだから遠慮などしないとは思うが、くれぐれも遠慮などしないで木村大地警部補をこき使ってくれ!」
捜査に臨む前に木村警視総監から言われた言葉だった。
警視総監から言われるまでもなく、遠慮などしないつもりでいた坂本だったが、シャイで真面目な大地の性格はよくわかっているつもりだった。
大地がダンボールを返しにいく姿を見ながら、何とかこの事件を早めに解決できるように一層気を引き締めたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

その人事には理由がある

凪子
ミステリー
門倉(かどくら)千春(ちはる)は、この春大学を卒業したばかりの社会人一年生。新卒で入社した会社はインテリアを専門に扱う商社で、研修を終えて配属されたのは人事課だった。 そこには社長の私生児、日野(ひの)多々良(たたら)が所属していた。 社長の息子という気楽な立場のせいか、仕事をさぼりがちな多々良のお守りにうんざりする千春。 そんなある日、人事課長の朝木静から特命が与えられる。 その任務とは、『先輩女性社員にセクハラを受けたという男性社員に関する事実調査』で……!? しっかり女子×お気楽男子の織りなす、人事系ミステリー!

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...