詐欺るシリーズ「冤罪！幾重にも塗り替えられた真実」

冤罪

捕まえた吉沢の供述で、新谷学の遺体は殺した後に埋められた山中から発見された。
埋められてから約三年経っていた為、一部が白骨化していた。
その遺体は元広早苗に渡り、娘の幸子と共に丁重に火葬した。
もちろん、その場には綾香や杏里、そして大地や坂本もいた事は言うまでもなかった。
そして内部漏洩の犯人ではないかと疑っていた鈴木警部補だが、よくよく調べた結果、事件とは全く関係はなくただ仕事をよくサボってギャンブルに目がないだけのダメオヤジだったのだ。
内海の下で命令通りに動いていたので上手く操られていただけであった。
そして冤罪で刑務所暮らしを強いられていた林だったが、新しい事実、つまりビデオが出てきた事によってすぐに再審が行われて無罪の判決が出たのだった。
判決が出た時はもちろんテレビとかのマスコミの反響は凄まじかった。
冤罪、しかも警察内部に協力者がいたという前代未聞の事件ゆえ世論は騒ぎ立てたのである。
特にテレビでは特番を組んで実況するテレビ局が多発して、どのチャンネルを捻ってもこの問題を取り上げていたのである。
判決後の林はテレビの取材の際に人目も憚ることなく綾香の元に近づき、深々と頭を何度も下げていたのだった。
綾香にしても何の罪もない人間が、一人の怪物に冤罪というとんでもない罪を着せられて、三年もの間辛く悲しい人生を送らなければならなかった林に「辛かったですね…！でも無実が証明されて本当に良かったですね！」
と目に涙を浮かべながら微笑んだ。
その笑みは誰の目にも微笑ましく見えた。
特に近くにいた大地にはその光景が天使の微笑みに見えたのだ。
それ以来、以前よりも数段に増して綾香との距離を縮めて行ったのだ。
ルポライターを目指していた綾香は、この件をキッカケに一躍時の人となり仕事の依頼も来るようになった。
小比類巻家にもようやく笑顔が見えるようになったのである。
実は大地は半年前に警部補から警部に昇進していたのだが、今回の活躍を評価して警視への内定が決まったのだ。
この内定をすぐに綾香に伝えたかったが、綾香の母樹里の十三回忌が明日に迫っていた。
それが終わってからその報告をするつもりでいたのだが、大地にはそれ以外にもっと大切なことを話すつもりでいたのだ。